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十七話「凶兆の表明」.2

 アルマートゥス部隊は、尽く破壊され、中には誘爆現象を引き起こして、バラバラになったものもいる。

 歩兵がほとんど参加していなかった今回の戦場では、兵士の捕虜はない。加えて敵将ダニエルの逃亡も許してしまった。


「負けてはいないが、勝ってもいない。というところかな」


 負傷者の並ぶ集落を見て、ルガリはそう呟いた。


「来訪者(キヴェルニアン)の抵抗が長かった分、被害も大きかったですね」

「さっさと諦めてくれたらよかったのに……」


 フェイジアに包帯を巻き直してもらっていたナナワは、傷ついた仲間たちを見てそう答えた。

 同じく左腕を損傷したルガリは、曲がった装甲を外し、代わりに鳥の民(ハルピウス)の用意してくれた布を巻きつけていた。


「左腕が壊れたから、もう一度直しに犬の民(ショロトリス)の里に向かわないとな」

「私たちのお山に、同じような施設が合ったらよかったんですが……」

「ねぇの? あそこからルガリは出てきたんだろ?」


 生物の負傷のように、『グラディウス・リペア』の損傷が治ればいいのだが、機械である以上そうはいかない。機械の損傷を直すには、十分な知識と技術、材料やパーツが必要だ。

 ここにも整備工場が合ったらよかったのだが、今のところ見つかっていない。


「我々に、手伝わせてくれますか?」


 問いかけたのは、集落に残っていた兵士ではない者の一人だ。アルマートゥスたちが撤退した時、残っていたのは非戦闘員ばかりだった。

 そのほとんどは、ダニエルに連れてこられた原住民(プリミティ)の一団だ。


「あの男は、少し特殊な趣味を持っていたようでして、あまり同族には興味がなかったようでした」

「だからと言って、好待遇だった、というわけじゃなさそうだね」


 ナナワは、自分の右目を抑えながら相手を見る。

 彼女の火傷と同じように、ダニエルの原住民(プリミティ)たちには鞭傷、火傷の跡がある。牛の民(トーラス)に至っては角を削られ、種族の誇りを穢されている。


「よいのですか? あなたたちはまだ、主の下に戻ることもできるんですよ?」

「ウチらは、置いてかれたんだよ。あいつにとっちゃ、替えの利く玩具さ」


 答えた猫の民(バスティアン)は、ぎゅっと自分の服を掴む。全く心を許していなかったと言うわけではないだろう。それでも、羊と牧草の間に愛は成立しない。


「我々には、奴に仕込まれた技術があります。どうか、その方の修理を、我々にさせてください」

「……ルガリ様、どうしましょう」


 これが、まったくの罠ではないと言う保証はない。彼らはまだダニエルに忠誠を誓い、ルガリが最も無防備なところに破壊工作を仕込んでくるかもしれない。

 今この場で、信用する理由などあろうはずもないが――。


「わかった。頼めるか」


 ルガリは、それを承諾する。

 確証も保証もない。ただ同じ原住民(プリミティ)であると言うこと以外に、信頼する点は存在しない。


「いいのかい、ルガリ」

「ああ。俺たちはこれから、全ての原住民(プリミティ)たちと協力して、この大地を守ろうとしているんだ。なら、最初に信じるべきは隣人だろう」


 たとえ機体を危険に晒したとしても、お互いの信頼を証明する。

 ルガリは『グラディウス・リペア』の左腕を、馬の民(ケイロンズ)の整備士へ向けて差し出した。


「頼めるか。君の名は……」

「ルクバ、馬の民(ケイロンズ)のルクバと申します」

「オラは牛の民(トーラス)のアマテルってんだ」

「猫の民(バスティアン)のミラクよ」

「頼むぞ、ルクバ、アマテル、ミラク」


 ルガリの言葉に頷いた三人は、さっそく持っている道具を取り出した。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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