十七話「凶兆の表明」.1
駆け込んでくるアルマートゥスの姿を、ルガリとダニエルは同時に捉えた。
まともな操縦技術がない者が動かすように、腕は動かず、上半身は直立不動。下半身だけ動くと言う歪な走りかただ。
『なんだこいつ、何をしてやが……!』
問答無用の突撃が、ダニエル機を弾き飛ばす。それに伴い、突っ込んできたアルマートゥスも倒れ、地面を数度跳ねてコクピットハッチが曲がって開く。
「ナナワ!?」
「ナナワさんが動かしていたんですか!?」
斧を投げ捨て、滑り込んだルガリは右手で空中のナナワを受け止める。瞬時に自身の胸部を開くと、そこにいるフェイジアに託す。
なぜ原住民である彼女がアルマートゥスを動かせたのか。疑問をひとまず置き去りにして、ルガリは傍らに落ちている剣を拾い上げる。
ダニエル機が取り落としたもので、今まで拾い使ってきたものより幅が広く、頑丈そうだ。
『くぅ……なんて最悪な結末だ……』
『だ、ダニエル様! 脱出を! その機体の脚部はすでに……』
当たり所が悪かったのか。ダニエル機の左足が火花を散らしている。これでは、走ることはおろか、歩くことさえままならない。
「わ、悪いな……ルガリ。決闘に水を差しちまったか?」
「気にする必要はない。そんな行儀のいい戦いじゃないんだ。ただ、ダニエルを仕留めるのはやっぱり難しそうだ」
残っていたアルマートゥスが、ダニエル機とルガリの間に割って入るように並ぶ。
そのうち一基は最新鋭機のコクピットハッチをこじ開けると、足元のおぼつかない主人を救い出す。そのまま戦場を離脱しようとするのを、残る機体が守る。
『よくもまぁ、やってくれたよ。おいそこのアルマートゥス! テメェなんて名だ!』
「……ルガリ、みんながそう名付けてくれた」
『ルガリねぇ。いい名前じゃねぇか。本気で殺す相手の名前は覚える性質だ。俺たち人間の凶兆を始末してこそ、親父を超えられるってもんよ』
「殺されてなんかやらない。お前たちを叩き出すと、みんなと約束したんだ」
『ヒーローごっこか、それとも本気か。次会ったら確実にぶちのめしてやるよ。引き揚げろ!』
額から流れる血を抑えながら、ダニエルは撤退の指示を出す。
殿に残るアルマートゥスたちは主のための盾となる。
最大の脅威が去っていく。その事実に、疲弊したルガリは膝を付いた。
「ルガリ様! 稼働限界が、もう!」
「ああ。だけど、この拠点を潰せば、ひとまず攻撃は沈静化するだろう。みんな、頼めるか?」
ダニエルという精神的支柱を失い、戦場の流れが傾いた。
原住民側も少なからぬ損害を出しているが、まだ戦える者たちはいる。
逃げ腰になったアルマートゥスたちでは戦場を長くは支えられない。
次第に追い詰められていく巨人たちは、玉砕覚悟の抵抗をするしかなかった。
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