十六話「獣の可能性」.3
「ぐぅぅぅ、わかってる! 使い物にならねぇな!」
怒りに任せてコンソールを殴りつけたナナワは、何が起きたのかわからなかった。
突然倒れたかと思えば、今度は起き上がってハッチを閉じた。
まるで、殴りつけた勢いで動いたかのようだ。
「リーダー!?」
「な、なんだってんだ……あれ? 動いて、る?」
困惑しながらも操縦桿を握ってみると、確かにアルマートゥスは立っていた。ゆっくりではあるが、操縦桿の動きに従って移動する。
「なんで? アルマートゥスは、人間じゃないと動かせないって」
「いやリーダーが乗ったんでしょう?」
装甲越しに聞こえる声に、ナナワは曖昧に頷く。動くと思っていなかった。ただほんの一縷の望みがあればと思って座っただけだ。さほど期待していなかったのも事実。
「助けられるのか? アタシら、あいつらを……仲間を!」
「う、動かせるんですか、リーダー!?」
「多分! 離れてろ!」
リーダーの言葉に従い離れていく犬の民たち。ナナワは何をすればいいのかとにかくわからないが、突っ込ませることだけはとりあえずできそうだった。
ならば、それで十分。質量弾だって、立派な武器だ。
「待ってろよ、ルガリ!」
走らせたアルマートゥスが、友人のもとへ向けて突き進む。
***
何合に及ぶ刃のぶつかり合い。ルガリとダニエルの剣戟は、周りのアルマートゥスが介入する隙はなかった。むしろここで横槍を入れようものなら、ダニエルの怒りはどれほどのものになるか。
気迫だけでアルマートゥスが圧壊するような錯覚を覚える兵士たちに、手出しする余裕はない。
『親父は五十年! この地を支配してきた! この先の五十年は、俺の時代だ! どれくらい強くなったらいいと思う? お前を瞬殺するできるくらいか? 教えてくれよ、獣人たちの牧羊犬!』
「今度は、何の意味だ!」
振り下ろされたる剣を左の斧が弾き、右拳がダニエル機にめり込む。
『いい渾名だろう!』
「みんながくれた、ルガリという名前だけで十分だ」
振り上げられた『ブレット』の右膝が、受け止めた『グラディウス・リペア』の左腕を折り曲げる。斧を取り落とし、新調した左腕が火花を散らす。
ダニエルの闘志は、一発殴られた程度では折れはしない。
「まだ、続くか」
『やろうぜ。何時間だって――!?』
その昂ぶりを遮るように、足音が近づいてくる。
部下のものであるはずのアルマートゥス。それが歪な動きながら大地を蹴って、自分に向けて突っ込んでくる姿が見えた。
「『え?』」
何が起きたのか、ルガリもダニエルもわからなかった。
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