二話「鳥に導かれて」.2
「見守り様、こちらです」
「わかった。それ」
P45は、最初に声をかけてきた腰翼の少女、フェイジアに促されて、瓦礫になった家屋を運ぶ。跪く民衆を前に、まずは村の立て直しが先だと提案したところ、彼らも素直に頷いた。
素朴で従順――支配者ならば、そんな感想を抱いたことだろう。
「君たちは、ヒトなんだよな」
肩に乗っているフェイジアのほうに単眼を向けると、彼女は人と話すように、『グラディウス』の頭部を見ながら答える。
「はい。私たちは、この土地で暮らしていた者たちです」
「原住民……翼があるのは、ずっと昔から?」
P45の質問に、フェイジアは小さく頷いた。村長が聞かせてくれる昔話では、集落の外には鳥以外の特徴を持つ原住民がいて、交流があったそうだ。
だが、支配者たちの圧政が強まるほど、他の原住民とは引き離された。
被支配者の団結は、どんな時代でも怖いものだ。
P45も、被支配層の兵士たちが各地で団結して反乱軍を形成された時、正規軍として戦ったことがある。
「たとえ装備が貧弱でも、団結は強い力になる。急いで話をしたほうがいい」
「他の原住民たちの土地も、私たちと同じように、抑圧されているんでしょうか」
フェイジアは、他にも様々なことをP45に教えてくれた。
アルマートゥスを持つ『人間』たち。彼らはもともと、この地にはいなかった。海を越えた水平線の向こうからやってきた。
クラトーリア連合帝国。複数の貴族が形成した連合国が、世界の覇権を握らんとして海を越えてきたのだ。
あの婦人も、その貴族連合の一員なのだ。だからアルマートゥスを所有できるし、支配者面して横柄なことができる。
「フェイジアは、いろいろ詳しいんだな」
「長の話をきちんと聞いていただけです。他の子たちは、話が長いってすぐにどこか遊びに行っちゃって」
苦笑する彼女に、仕方ないとP45は頷いて見せる。彼もまた、野山で生まれ育ち、動物たちを友として生きていた幼少期。圧倒的な力と軍事力が何もかもを踏み潰しながら支配された青年期。その二つを経験してきた。
力なき者だった自分は、名前も尊厳も奪われて、利用できるものは魂まで利用された。
「あれ、そういえばなんで埋まってたんだろう」
感情抑制機能が働いていないとはいえ、戦闘プロトコルに従うようには調整されている。
でなければ反乱軍にでも参加して、自分のご主人様の喉笛に噛みついたことだろう。
それが、どういうわけか山の中で埋もれていた。
「記憶領域にスリープ時のデータなし。最終起動確認時データでは、突撃作戦中。現状に至るまでの連続性に不明瞭部分がある」
作業しながら自分の記憶を探ってみる。だが、長い間のスリープモードが原因か、それとも何かしらの外的要因があったからスリープモードになっていたのか。
誰かの『道具』であるはずのP45-エルガリオンは、今、誰の道具でもなかった。
その事実が、何よりすがすがしく思えた。
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