二話「鳥に導かれて」.1
再起動した第六世代型アルマートゥス『グラディウス』に乗る――というより搭載されている戦闘生態端末『P45-エルガリオン』は、自らの機体に膝を付かせる。
その先には茫然とした鳥人たちが立ち並んでおり、自らの体や腕を縛り上げる縄をほどくことも忘れて、こちらを見上げている。
「君たち、縄をほどかなくて大丈夫かい?」
言語は伝わっている。見ず知らずの種族のはずだが、言語に支障がない。不思議に思いつつも、コミュニケーションが取れるのなら気にしない。
P45の言葉で気づいたのか、慌ててお互いの縄を解き始める。
同時に騒動を聞きつけたのか、武器になりそうなものを掴んだ原住民たちが、長の周りに集まっていた。
「長、これは一体どうしたのですか。なぜ、見守り様が……」
「わ、わからぬ。ただ、わしらは無事だ」
婦人はいなくなり、護衛のアルマートゥスたちは機能を停止して転がっている。
驚異的な戦闘力を持つ存在に、誰もがしり込みしている。
その中で、一人の少女が前に進み出る。初めて起動した時、視線を交わし、願いを口にし、叶えた相手だ。
「君が願った。これで、助けられたか?」
「私が……あっ! 聞き届けて、くださったのですか?」
少女も、まさか自分の言葉が『見守り様』を動かしたとは思っていなかった。何と答えればいいかわからなかったようだが、勢いよく頷くことで、肯定を示す。
「も、もちろんです! あの無法者たちを撃退してくださり、ありがとうございます! その、なにもお礼はできませんけれど……ありがとうございました!」
『見守り様』――それがこの鳥人たちの、自分への呼び方なのだろう。なぜそう呼ばれているのかはP45にはわからないが。
それよりも、聞くべきことは多い。
「あれはなんだ? アルマートゥスを使う、侵略者なのか?」
「侵略者……えっと、長」
「そうですな、侵略というには、もう長い月日が過ぎております。我ら原住民の平均寿命は四十年。しかし、『来訪者』たちは、七十年を生き、すでに彼奴らの支配は五十年になります。私以外のほとんど全員が、すでに支配された土地で生まれ育ってきたのです。ならば彼奴らは、侵略者ではなく支配者でしょう」
ヒトは、理不尽や支配にさえも、いつか慣れてしまう。最初からそうであったと、生まれた時から納得してしまい、抵抗が無意味だと思い、抗うことをやめてしまう。
たまたままだ若い者たちの中に反抗の意志があったが、アルマートゥスの投入でそれも砕かれた。もしも見守り様が――P45が起動せずにいたら。また半世紀、今日の敗北を誰からも教わることのない世代が生まれるまで、反逆の狼煙が上がることはない。
「しかし、見守り様のおかげで犠牲者もなく、奴隷にされることもありませんでした」
「心より、感謝を申し上げます」
長と村娘の言葉に、全員が同じく膝を付き、目元を隠すようなしぐさをした。
戦場における奴隷であった、かつて人間だった魂は、とある集落の救世主になったのだった。
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