十四話「報復と反逆と」.2
「話が長い。誰をやればいい?」
ダニエルからの問いに、ルーサーは間髪入れずに答えた。
「は、はい。現在原住民の集落の一つで発掘されたアルマートゥスが反抗。すでに旧式含めて、我が方の兵力が五機以上破壊されています。偵察部隊からの応答もなく、現状戦力が不明。ダニエル様の到着を待っていた次第であります」
「なら、力で押し潰す。相手が発掘兵器だと聞いていたが、数がいないのならさほど脅威ではない。集落を守ろうとしていたのなら、そちらを同時攻撃して注意を逸らす。どれだけ面白い相手か、試してみようじゃないか」
ダニエルは優秀な兵士だ。自分の戦力を正確に把握し、何が一番効率的かを瞬時に判断できる。その結論の大半が物量であると言うのは父譲りの思考なのかもしれないが、実際に原住民相手であれば事足りる。
たとえ同じ支配者側が相手であっても、その辣腕に変わりはない。
対アルマートゥス戦において、この親子ほど強い者を、ルーサーは知らない。
ほんの、数日前までは。
「直ちに出発する。戦力の温存など考えるな。全機等間隔に隊列を造り、敵集落に包囲網を狭めていく。歩兵は街道沿いに進み、俺とルーサー、貴様は正面だ。鳥頭共は確か夜目が効きづらいだったか? 明日、日の出前に仕掛けるぞ」
そう言ったダニエルは、軽く手を叩く。すると、彼のアルマートゥスの近くに控えていた者たちがやってきて、手早く天幕を立て始める。
そこにいたのは、鳥の民はいないが、猫の民や馬の民、牛の民ら原住民たちだ。
「ダニエル様、彼らは?」
「俺の使用人どもだ。かつては名のある戦士だったらしいがな、今では人間よりもよく働き、従順な、勤勉な奴らだ。アンブロス・ジェネレーターを活性化させることはできないが、逆にアルマートゥスの整備はしやすい」
「ぷ、蛮族どもにアルマートゥスの整備を? それは……」
「犬だって芸を教えれば従う。鳥も言葉を教えれば喋る。奴らにだってその程度の知能はある。要は使い方だ。そろそろ鳥の民も一匹くらい欲しかったんだ。飛べない奴が多いらしいから、飛べる奴がいいな」
彼の使用人と呼ばれた原住民たちは、まともな服を着ている。作業用に誂えたのか、道具を入れるポーチが付き、決してよごれまみれというわけではない。
だがそれゆえに、首輪が異常なものとして映る。
「食料と物資が親父から渡されている。お前たちで自由に使え」
大きくあくびをしたダニエルは天幕の内に消える。他の貴族との対立の最前線に立ち続けた男にとって、この場所はずいぶんと穏やかに思えているだろう。
だが、彼はその変化がわかっていないのだと、ルーサーには思えてならない。
天幕の前に佇む原住民たちの目に浮かんでいるのは、忠誠心や恐怖ではない。煮えたぎり、鍋から噴きこぼれかけたお湯のごとき、押さえつけられた怒りだ。
それを、つい最近ルーサーは、婦人に向けられているのを見ている。
「無事終わればいいが……」
ルーサーは、もうこれ以上頭悩ませたくなかった。
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