十四話「報復と反逆と」.1
鳥の民の制圧を任されたルーサーは焦っていた。
彼は長年の実績と人格から、上司のエドガー・フランクリン総督の信頼を勝ち得、十数年に渡る忠誠を示してきた。
「ええい! 誰も情報を持って帰ってきてないのはどういうことだ! それどころか、帰ってきてすらいないんだぞ」
「それが、彼らが派遣されて数日は定時連絡が行われているのですが、確認に行った伝令兵が、忽然と姿を消したと話しておりまして……」
「見つかって始末されたとでもいうのか!? 閣下の精鋭部隊だぞ!」
募る焦りから、普段出さないような態度を出してしまう。部下には公平で誠実、上司には忠義に厚い男であるルーサーがここまで取り乱している。部下たちは彼の焦る姿に苦笑いすら浮かべられない。
これまでの土着民の制圧、打倒にかかる時間など、ほんの数時間もあれば事足りた。そもそも、どの種族もアルマートゥスの威容におののき、戦うことすらなく逃げ出していた。
それが、どうだろうか。
「敵方のアルマートゥスが、やはり特殊なのでしょうか。聞くところによれば、集落で発見された発掘兵器だとか」
「古代兵器だろうがそれだけで戦えるのなら軍隊などいらんのだ! 敵が強すぎたなどと言い訳にならんことを考える前に、この情報が何一つない状況を案じろ!」
「お言葉ですが閣下。前回は確かに三機のアルマートゥスが瞬時に制圧されたことは大きな懸念材料です。ですが、援軍の戦力はその四倍。何を恐れ、手をこまねく必要がここに来てありましょうか」
「お前は、あいつを見ていないからそう言えるのだ……」
怒りに拳を握りしめるルーサーの下に、伝令兵が勢いよく飛び込んでくる。
「司令官に伝令! ダニエル閣下が到着されました!」
「来られたのか! ああ、よかった、ようやくか」
エドガーから贈られてきた増援が到着したことに、ルーサーは安堵の笑みを浮かべる。
彼らの駐屯地へ歩いてくるその機体は、装飾に包まれた機体だ。フランクリン総督の息子であると誇示するような家紋を胸部に、両肩、両膝、袖、裾に、金細工の装飾がある。
むろん、それは単なる飾りにしか過ぎないが、機体は最新鋭の『ブレット:第四次生産機』だ。日々発展を遂げるアルマートゥス技術の、最高峰の機体がここにある。
「ダニエルさえ来れば、問題はない。総督閣下のお手を煩わせたことは変わりないが、これで埋め合わせできる」
ダニエルの派遣を、最初は渋っていた男の発言とは思えない。だが、それだけ彼は焦っていた。偵察部隊は悉くが狩り取られ、自分もまたそうなるかもしれない。
その恐怖がようやく取り払われる。
専用アルマートゥスから降りてきたのは、エドガーによく似た青年だ。恰幅もよく、筋肉の鎧に固められた体は少しコクピット内では手狭そうだ。
かぶっていた軍帽をとれば。金の髪が風に揺れている。
「最前線から呼び戻されたと思ったら、お前の尻拭いかよ、ルーサー」
「だ、ダニエル様のお手を煩わせたこと、大変恐縮でございます。ですが――」
パンッ! と、手ひどく頬を打つ音が鳴った。ダニエルの持った帽子が、ルーサーを叩いたのだ。突然のことに驚く部下たちに対し、ルーサーは何も言わない。
「話が長い。誰をやればいい?」
凶悪な笑みを浮かべて、彼は問いかけた。
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