十三話「反撃の時」.2
ルガリは自分用に作った高台の上に二種族を集めて視線を合わせる。さすがいつまでも屋根の上での会話では、座り心地も悪く、人数も限られてしまう。
柵作りと並行して作った高台には、両種族からそれぞれ十名ずつほどが集まった。
「まずは防衛柵の作成お疲れ様」
「とかいっても、一番重い大岩運んだのほぼあんた単独だったじゃないか」
「いや、そういうことしないとアルマートゥスの存在意義がないよ」
村の一口と周辺を囲むために、山から切り出した大岩を使っている。山を穢す行為に近しいが、これも村を守るため。なるべく採掘場付近から切り出すことで山への被害を抑えた。
それを並べ、壁としたのだ。
「だが、戦力がまだ足りない。いずれ犬の民の集落を完全に取り戻し、この地から来訪者を追い払うために、ここだけ安全じゃ意味がない」
「いいね! あいつらを追い出せるんなら、いくらでも戦ってやれるぜ!」
ナナワの同意に、犬の民が歓喜の声を上げる。戦士たちの尻尾を振るう姿に、ルガリは生前のペットを思い出し、すぐに思考を切り替える。
「そのために、より多くの協力が必要だ。ここから最も近い、協力が望める種族が一種いる。猫の民たちに、会いに行ってくる!」
「新たな種族へ交渉に向かうのなら、私もお供します!」
勢いよく立ち上がり、手を挙げたんはフェイジアだ。鳥の民の中に、反対の意志はない。
「なるほどね。それでアタシに防衛に加わるなって言ったわけだ」
「同時に、熊の民や他の種族に連絡をしてほしい。長」
「はっ、ここに!」
「あなたにその連絡を頼みたい。自分では動けないかもしれないが、君たち鳥の民には翼が、犬の民には足がある」
「お任せを。ルガリ様が戻られるまでに、話を進めておきましょう」
犬の民は早急な協力を必要としたからルガリが直接赴いた。そして気まぐれな種族であるという猫の民や北方故支配を受けていない熊の民の説得には力を示す必要がある。
だが後の種族はそれなりに話を聞く耳を持つはずだ。防衛能力を低下させないために一人も削れなかった今までと違い、現在はある程度余裕がある。
馬の民、牛の民、蛇の民、多くの民が来訪者の支配に畏れ、怒り、怯え、抗い、従っている。
その力を全て結集できれば、たとえ巨人の武器を持つ者たちにも拮抗できる。
「はぁ、こんな時に竜の民がいればな」
若者の一人が、そんな声を漏らす。周りはそれに呆れ顔であり、首を横に降ったり、バカ言ってんなと若者の頭を叩く。
「でもさ、竜の民のことはみんなだって知ってるだろ! あれがもし伝説んじゃなくて、ルガリさんみたいに実在していたら……」
「なんだ、その、ミーなんとかっていうのか」
唯一わからないのは、種族のことに疎いルガリだ。フェイジアに聞くと、彼女は嫌な顔をせず教えてくれる。
「竜の民ですよ、ルガリ様。この大陸の極東には深い穴があり、その奥底の先に住まうという種族です。翼を持ち、強靭な力と術を操ると言う。もっとも、誰もその大穴を見たものはいませんし、伝説みたいなものですよ」
それは少し残念だと、ルガリは頷きながら思う。どう考えても強力な種族だ。尤も、それが伝説的な存在だと言うのなら、探索するのはずっと後回しだろう。
今は、とにかく現実的に話を勧めなくてはいけない。
「一種族でも多くの協力が得られれば、戦況は有利になる。今来訪者に従順に従うしかない者たちも、勝利を重ねれば俺たちを信じてくれるはずだ」
「奴らに最初から尻尾を振り続けた奴なんて、無視していいじゃない?」
「いいや、この大陸から来訪者を放逐しようと思うなら、全種族の協力が必要だ」
ルガリには覚えがある。まだ首輪の付いた使い捨ての道具だったころ。
反乱を志す者たちの姿は、まるで絶え間なく燃える炎だった。いくら小さくてもいい、その炎を持つ者もこそ、仲間に引き入れるべきだ。
「弱くても抗おうとする――少数でもいい。消えない意志を持つ者たちを、一人でも」
それが、きっと自分を支配から脱却させ、眠りについているうちに、解放してくれた者たちだ。
そんな解放者の国もまた、数千年を経て滅亡していたのは、笑い話にもならないだろうが。
「あ、ふと思ったんだが、君たち鳥の民や犬の民は部族ごとに暮らしているだろう。他の部族は、共生している者たちはいないのか?」
ルガリの疑問に、両種族は顔を見合わせた。
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