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十二話「結束の力」.2

 その日の正午、集落の防衛を包囲帰した犬の民(ショロトリス)たちは、走り出したルガリに続いて、鳥の民(ハルピウス)の集落へ向けて進む。

 上空を飛ぶフェイジアは、山を駆け下りる猟犬たちの姿に、旋律に近いものを感じる。


「ところでさ、ルガリ。勝算はあんのかい? 鳥の民(ハルピウス)を支配するフランクリンと言えば、アタシらでも知っている歴戦の将。来訪者(キヴェルニアン)の屑どもの総大将だ。奴がまとめ上げた連合軍が、この土地の抵抗軍をことごとく打倒し、今の状況を作り上げた」

「君はエドガー・フランクリンという男を、正確に評価しているんだな」

「遠目にだけど見たことがある。ウチを支配していた馬鹿野郎どものところ挨拶に来ていた。どんな奴が来るのかとみていたアタシに、気づいてやがった」


 決して地位や部下の存在だけで、この地の支配者になったわけではない。

 フランクリン夫妻は確かな能力の保有者だ。婦人のほうも傲慢さと残虐さが目立つが、決して冷静さのかけた人物ではない。


「鳥の民(ハルピウス)のみんなには、防衛網を固めて、接近してくる偵察部隊に対して警戒するように伝えてある。初動偵察隊を潰しはしたが、それが牽制になっていればいい」


 何かあればすぐに伝えるようにと言ってはある。鳥の民(ハルピウス)の飛行能力持ちなら、多少の時間がかかったとしても飛んで知らせに来ることはできる。

 アルマートゥスのクロスボウといえども、飛んでいる彼らを撃ち落とせるほどの精密射撃ができるわけではない。


「奴らの報復部隊を退けた時、改めて各部族に呼びかける。抵抗軍(レジスタンス)を作り上げ、原住民(プリミティ)それぞれの故郷を取り戻す」


 その言葉に、走り続ける犬の民(ショロトリス)たちは言葉を失う。

 自分たちで精いっぱいの戦いを、他の部族を巻き込んで行うのだ。住む場所も育ち方も違う者たちを、一体どうやってまとめ上げるというのか。


「クラトーリア連合帝国は、確かに強大だ。けれど、この地を支配する貴族たち全員が同じ考えで支配しているわけじゃない」

「そこに付け入るスキがあるっていういのかい?」

「それぞれの利益がある以上、足並みをそろえるのは難しい。わざわざこちらが分断しなくても、勝手に争い合ってくれる」


 少々楽観的ではあるが、貴族同士の連携はしばらくないだろう。

 彼らのプライドと長い長い習慣は、簡単には崩れない。


「鳥の民(ハルピウス)のみんなは無事みたいだな」

「はい、集落のみんなに変わりはないようです。ただ、村の入り口にアルマートゥスの残骸が並んでいます」


 上空を飛びながら集落の様子を伝えてきたフェイジアの言葉に、ルガリは首を傾げる。集落から火の手は上がらず、森も穏やかだから無事だろうと思っていた。

 だが、村の入り口に並んだアルマートゥスとは。


「予想以上に、鳥の民(ハルピウス)たちは頑張っていたんだな」


 もともと鳥の民(ハルピウス)たちは狩猟採集生活で暮らしてきた。来訪者(キヴェルニアン)たちに支配されてからも、その生活習慣にさほど変わりはない。

 つまり、罠を使い獲物を捕らえることに関しては、素朴な民族性とは別に本能を保有していたのだ。

 その本能に従った鳥の民(ハルピウス)たちは、偵察に来たアルマートゥスたちを無力化して磔にすることができたのだ。


「長! みんな!」


 仲間の無事を祈るフェイジアの声が、集落へ響き渡った。



少しでも気に入っていただけたら幸いです。




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