十二話「結束の力」.1
整備基地の入り口を開けて出てきたとき、そこには驚愕で口を開けたナナワがいた。
「あ、あんたら、お山の中から出てきたのかい?」
「ナナワさん、勝手に入ってごめんなさい。でも、時間がなかったもので」
「そもそも、どうしてお山の中に入れてんだよ!? そこは、選ばれし者が通る扉って、先祖代々から伝えられていて……」
困惑するナナワは、きれいな装甲に包まれたルガリに気づく。
「まさか、そいつが選ばれし者だってことかい? お山の中で、何があった?」
「簡単に言えば、この山は、ずっと昔の人間が作った工場だったんだ。そして俺は、それを利用させてもらった」
「……ルガリ。あんた、アルマートゥスに乗っている人間たちとは、違うんだよね?」
「ああ。俺は、今からずっと昔に、アルマートゥスに植え付けられた、奴隷の魂だ」
首を傾げるナナワに、わかりやすいようにと彼は自らの胸部を開く。
そこにあるのは、P型電子化兵の魂魄ユニット。人間の姿がなく、奴隷の魂という単語に、ナナワも大枠を理解する。技術的な話ではない。
目の前にある機械から漂う気配に、獣の感性が反応したのだ。
「あんたは、人間と戦うために、古代からやってきたのかい」
「違う。俺はフェイジアたち――鳥の民を。いや、もっと多くの原住民たちを助けるために、目を覚ましたんだ」
助けてほしい――その願いを聞き届けた時、彼は目覚めた。
「それが本当に理由なのか、俺もわからない。けれど、俺は君たちと同じように人間に支配されていた。肉体を奪われ、魂だけになっても、戦うことを強要されてきた」
「アタシらは、そんなあんたに戦うことを強要するんだよ?」
「いいや。俺が戦いたいと思っているんだ。俺自身の想いで」
ルガリはナナワの言葉を否定した。誰かの命令でしか戦えなかった彼は、自分の意志で戦うことができる。
「ナナワ、鳥の民の集落にフランクリン総督の、来訪者の軍隊が迫っている。君の力を貸してほしい」
原住民たちの団結のため、迫りくる敵に勝つためには、彼女らとの同盟は欠かせない。
自らの胸を(物理的に)開いて話すルガリに、ナナワは腕を組み目を閉じる。
彼女が即断即決できないのにも理由がある。犬の民は確かにこの戦いに勝ち、その実力はアルマートゥスへの対抗手段になりえる。だからと言って、そう何度も何度も戦い続け、消耗し続けることに耐えられるわけではない。
「わかった。ここの制圧と防衛は後回しにしてやる。あんたが勝手にしたとは言え、助けられたのは事実。その恩義を忘れたら、偉大なる先祖たちに怒られちまう」
閉じていた目を開いたナナワは、ルガリを見上げながら手を伸ばす。
「アタシらにできるのは、ただ奴らに嫌がらせし続けるだけ。それでもいいなら、手を貸させてもらうよ」
「味方は一人でも多いほうがいい。ありがとう、ナナワ」
ルガリの伸ばした巨大な指を、ナナワの小さな手がしっかり掴んだ。
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