十一話「不安を断ち切る刃」.1
ルガリとフェイジアが踏み込んだのは、この地に存在した整備基地の一つだ。
内部にある発電施設によって完全自立稼働したこの基地は、当時の機能をそのままに残している。
「内部機能は把握できた。俺の『グラディウス』を整備することには、問題ないだろう」
「ルガリ様の体は、もう限界近いように見えます。まずはご自身の回復に努めてください。何もできないかもしれませんが、私が見守っておりますので」
「ああ。全機能をここでなら取り戻せると思う」
基地の廊下は無人だが明かりがつき、自動の整備機能が働いている。一体何千年、この基地は誰も使う者もいないなかで待ち続けてきたのか。
扉を開けると、そこには複数のハンガーや、整備アームが並んだ部屋があった。
「ここが整備場だ。フェイジア、そこの机の前に立ってくれるか」
ルガリが示したのは制御端末だ。システムにアクセスしたことで、ある程度は遠隔操作が可能とは言え、細かい作業は有人作業だ。
机の上にあった端末に指を近づけると、接触回線でアクセスする。
「この板から俺が指示を出すから、その通りに動かせるか?」
「へ? ど、どういうことでしょうか? あ、これですか?」
「とりあえず、俺の体を直すための操作をフェイジアにやってもらいたいんだ。君しか頼めるヒトはいないから」
現状ルガリが頼れるヒトはフェイジアしかいない。彼の言葉に迷わず従えるのも、彼女だけだ。板――液晶タブレットから指示を出すと言われて疑問に思いながらも従えるのは、彼女がルガリを信頼しているゆえだ。
そのことに何を思ったのか、フェイジアは液晶タブレットを抱え込み、握り拳を作って見せる。
「わ、わかりました! このフェイジア、ルガリ様のお付として、全力で務めさせていただきます!」
「そこまで力まなくていいんだよ?」
目をキラキラさせているフェイジアに、ルガリは傾かない首を傾ける。
頑張り屋な性格なのはわかるが、無理をしてほしくはない。
「難しいことは俺もできないから、可能な部分は自動機能に任せよう」
ハンガーに機体を預けると、フェイジアの持つ端末側に意識を移す。自分の体を外側から眺める――幽体離脱に似たような気分になる。
魂だけの存在なのだから、そのようなことも可能なのだろう。フェイジアの持つタブレットで情報を引き出したルガリは、自分の機体状況に、唸り声を上げる。
むろん、苦々し思いを押し込めたような声で。
「これが有人機だったら、殺人ほう助を疑われてもしょうがないレベルだな」
「さつ……?」
「つまり、わざと操縦者を殺そうとしたんじゃないかと思われるくらい、ひどい機体状況ってことだよ。機能自体はしていても、それは表面的な話でしかなかったってことさ」
まだ人間の肉体であったら、きっと肩をすくめていたことだろう。
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