十話「山の奥へ」.2
ルガリの眼前に、敵の刃が迫りくる。
彼の黄色の双眸に映る稼働限界時間が急激に減少していく。左肩から力が抜け、わずかに押し返される。
『この偵察任務が終われば、ようやく本隊に配属されるんだ! 給料だって上がる。やっと、やっと親父にだって、認めてもらえて……』
「それは、仕事を間違えたな」
情けは持たない。持つことはできない。
ルガリは『グラディウス』の足に流していたエネルギーをカットする。同時に各部スラスターの内、肩にある小型スラスターだけを噴かす。すると、スライディングした時のように体が仰向けに倒れていく。
ただし、今回は同時に、トマホークを押し込んでいた『ブレット』の体も、前のめりに倒れていく。
『何!?』
「こんな仕事、選ぶものじゃないよ」
支配者となり、武器を持って抑圧することを選んだ時に、このパイロットの運命は決まったのだろう。蹴り飛ばされ、上下逆転しながら飛んでいくという、運命が。
「背部スラスター、点火!」
腹の上の敵機が消えたことで、『グラディウス』は背部スラスターを全開にして飛び上がる。空中でひねりを加え、頭上に差し掛かったところで今度は落下方向へ加速。下に向けた剣を両手で抑え、まっすぐに降りていく。
とどめの一撃。
逃れようのない死の贈り物を届けた。貫かれた首からわずかに漏れる赤い液体。突き刺した衝撃で折れた剣を放り捨てたルガリは、それを一瞥もしない。
振り向いた彼の肩に、少女が二人舞い降りる。
「フェイジア……」
「ルガリ様、左肩が!」
彼女はいつも降り立つ左肩ではなく、右肩に来た。傍から見ていてもわかるくらいに、左腕は悲鳴を上げた状態になっていた。火花が散り、力なく垂れ下がった状態は、ヒトで言えば折れた上に血を流しているようなもの。
「ああ。騙し騙しできたから、限界かもしれない」
「ちょっと、そんなんで戦えんのかい? なんか、声も弱々しいし」
途中、落ちている盾とトマホークを拾い上げながら、ルガリは集落へ向けて歩く。
確かに、このままではナナワの言う通り、戦えなくなるまでさほど時間はかからない。
「ナナワ、集落に戻ったら、お山に入らせてもらっていいか」
「え? あそこは、人間どもが掘り起こして、いろいろごちゃごちゃしてるよ?」
「いいんだ。確かにここは原石の発掘場所として重要かもしれない。だからと言って、報復部隊が来るには大げさすぎる」
「……なんか、バカにされてる? アタシらの故郷」
「逆だ。妙に、人間たちが固執していることが気になるんだ」
その言葉に、フェイジアとナナワは揃って眉をひそめた。人間が、自分たちの土地に原石やら食料生産以外に、何の価値を見出しているというのか。
ナナワにはピンとこなかったが、フェイジアはハッとする。
「もしかして、ここにルガリ様みたいな、発掘兵器が!?」
「可能性はある。それの状態が良ければ、俺の機体を修復できるかもしれない」
アンブロス・ジェネレーター原料の採掘場。そこに護衛のアルマートゥスがいるのはおかしくない。何より、それ以上のものがあるかもしれないと期待があった。
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