九話「鳥犬の同盟」.3
「ルガリ様、どうかされました? 敵がこちらを見つけたようです」
ノイズに支配されかけた視界が、一瞬クリアになった。
フリーズしかけた思考が、フェイジアの声によって呼び戻される。彼女の方を見ると、心配そうな目と目が合う。
ルガリは、通常ひし形をしている双眸を弧に変えて、笑っているかのように見せた。
「……そうか。教えてくれてありがとう。先制攻撃を仕掛ける。フェイジア、ナナワを連れて離れていろ」
「な、なんだよ! ここまで来て置いてけぼりか!」
「違う。見ていてくれ。俺が、君たちと一緒に戦うのにふさわしい戦士かどうか」
ナナワがフェイジアに抱えられて飛んでいくのを見届けると、両腰に吊るした剣を抜いて飛び上がる。
高さは約三百メートル。脚部出力の向上と、背部スラスターの再起動が確認できたからこそ、この高さからでも迷わず落ちられる。
第八世代以降のショックアブソーバーなら、スラスターを吹かさなくても安全に着地ができるほどに高性能だ。だが、第六世代型『グラディウス』のものでは、せいぜい百メートルからの着地が限界だ。
「生身で考えたら、十メートルから飛び降りて問題ないってのも、それはそれで驚異的だけどな……ここでブースト!」
着地までのほんの十秒程度。ふいにアルマートゥスの性能の異常性を再認識しながら落下していく。その先に待つのは、瓦礫に潰されることのなかった『ブレット』が二機。背中合わせで身動きが取れなくなっているようだった。
『なんだ、影が――?』
ベギョンッ! と頭頂部から下半身向けて、同時に二機のアルマートゥスが内部の全てと一緒に潰れて壊れる。
上空百メートル前後でブレーキ代わりにブーストを一回噴かしたが、それでも百メートル上空から落ちてくるアルマートゥスは巨大な質量弾と変わりない。
瓦礫に押しつぶされた一機、踏み潰した二機、合計三機。
「先遣偵察機は、あと二機!」
『ど、どっから現れやがった!』
『どこの所属だ!?』
マントを羽織った『グラディウス』の所属は一見しただけでは判別できない。困惑させることこそが最大の目的。マントは十分役目を果たしていた。
同時に、その裏側に隠した武器を効率よく、敵の顔面へと突き立てられる。
『頭部が! 視界領域が乱れる!』
『下がれ、こいつ、速いぞ!』
不意打ちで一機の頭部を半分破壊した。視界が開けていなければ、戦闘力は格段に低下する。もう一機が盾を構えて防御に徹し、仲間を後退させる。
なるほどよく訓練されている。そのうえ仲間を失った直後での対応の早さ。舐めてかかっていい相手ではない。防御に徹すると言うのなら、容赦なく追撃を咥えればいい。
「スラスター解放、盾持ちから仕留める!」
ルガリは、機体の中でパチパチと弾ける音がするのがわかる。魂の限界が近いのかと勘違いしそうになるが、ただ機体が悲鳴を上げているのだ。
そもそも、発掘からオーバーホールもなしで使い潰してきた。せめて、この報復部隊を片づけるまで持ってくれればいい。
「持ってくれ……『グラディウス』」
全身から排熱を行いながら、ルガリは敵機へ向けて突撃する。
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