↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
25/72

九話「鳥犬の同盟」.1



 犬の民(ショロトリス)の山を支配しているのは、鳥の民(ハルピウス)の森を支配していたフランクリン夫妻とは別の貴族だ。

 同じ海の彼方からやってきた彼らだが、フランクリン夫妻とは所属する帝国は同じでも、家が違う。そのため、同じ目的・方法であっても、彼ら自身が対立している。

 植民地支配とは、総じて覇者の都合に振り回される。徴収された戦力は、時に同じ原住民(プリミティ)同士で争う道具にさえなった。


「報復部隊だと? なんでこんなに早く!」

「警戒していたのは君たちだけではなかったということだ。ゲリラ戦を繰り返せば、相手の即応力を高めることになるさ」

「くっ……宴は中止だ。すぐに迎え撃ってやる! もともとここはアタシらの祖先の土地なんだ。みすみすまた奪われてたまるかってんだ!」


 傍らの斧を手に取ったナナワは、すぐに屋根から飛び降りようとする。その前に、ルガリは手を差し出した。


「待ってくれ。君たちにとってここは故郷でも、君が訪れたのは初めてだろう」

「そ、それが何だってんだ! 故郷には代わりねぇ」

「初めて訪れた、ようやく奪還できた土地なんだろう。長い訓練と実戦を重ねて、俺が来たことで相手をできるギリギリの数のアルマートゥスしか残っていない状況だった。だから襲撃した。違うか?」


 ルガリは正確にナナワたちの戦力を分析していた。敵の攻撃は一撃必殺。対して彼女らはちまちまとしたかく乱と、弱点への攻撃しか意味をなさない状況だ。十数体ものアルマートゥスが駐在するこの集落に攻撃を仕掛けようなどと、よほどの愚か者でなければ行わない。

 そして、報復部隊の戦力は――。


「敵の数は少なくとも五機。後続の部隊もいる可能性が高い。君たちが束になってかかっても、同士討ちでもさせて数を半分にしない限り、勝ち目はない」

「そんな、こと……」


 ナナワの声が尻すぼみになる。彼女も自覚はあるのだろう。自分たちでは、この集落の確保は維持できない。


「突発的な勝利を手に入れて嬉しいのはわかる。なら、継続させるために力を貸す」

「ルガリ様……」

「鳥の民(ハルピウス)たちも同じなんだ。五十年ぶりに手に入れた平和を、自分たちの子や孫に継がせたいんだ」


 山と森の民。生まれた場所は違えども、望むべきものは同じ。


「一緒に戦おう。ナナワ」


 ナナワを抑えていた掌を上に向け、その足元に置く。

 乗れと示す手に、ナナワの視線が向く。

 信じるべきか、疑うべきか。目の前で膝を付く相手は敵か味方か。

 悩む彼女は、自らの右目を覆う火傷に、手を置いた。


「山の中に潜んでいたアタシの家族は、生きたまま焼かれた。生き残ったのはアタシと生まれたばかりの弟だけ。あの子は、母さんたちの顔も知らずに育ってきた……」


 ナナワの灰色の髪の中にある耳が、怒りに震える。彼女がいくつかはわからないが、背丈はフェイジアより低い。もしかしたら、彼女よりもさらに年下かもしれない。


「あの子に、故郷だけは、取り戻させてあげたいんだ……!」


 フェイジアたちは故郷を支配され、五十年間耐えてきた。

 ナナワたちは故郷を奪われ、取り戻す日を夢見てきた。


「なら、一緒に行こう」


 少女の願いに、巨人が手を差し出したのだった。


少しでも気に入っていただけたら幸いです。




評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。