八話「逆賊の足並み」.3
「一緒に?」
共闘を持ちかけられて、犬の民のナナワが返したのは、疑問符だった。
ナナワの反応に、ルガリが頷く。
「俺と鳥の民は、すでに来訪者たちと交戦している。明日にも奴らの報復部隊が集落に押しかけてくるかもしれない。だから、力を貸してほしい」
「……つまり、鳥の民と私たち犬の民が手を組むってこと? 森の民と山の民が?」
「そうだ。前例がないのはわかっている。けれど、力を結集しなくちゃ、人間には勝てない」
「その人間に作った巨人に言われてもねぇ」
小さく嘆息するナナワの言葉に、ルガリはすくめる肩があったらすくめていた。残念ながら『グラディウス』の肩関節機構にその機能はない。
しかし、ナナワが言っていることは正しい。『グラディウス』の形状は人間たちが使っている『ブレット』とも『アルコス』とも違う。だが、むしろ巨大な『グラディウス』は新型のアルマートゥスかと思わせていた。
「アタシらが事前にあんたらのことを知っていなかったらどうなってたと思う?」
「その通りだ。しかし、よく知っていたな、俺のことを」
「山を登っている見たことないアルマートゥスがいるって、見張りから報告があってね。急いで駆けつけて見たら鉱山を襲い始めた。だから懸けた。あんたは反逆者なんだって」
「分の悪い賭けだな」
「けど勝った。アタシは賭けに強いんだ」
不敵に笑うナナワに、フェイジアは苦笑いを浮かべた。
抵抗部隊のリーダーだというにしても、ずいぶんと思い切った決断だろう。
「もちろん、勘だけで決めたわけじゃないさ」
「他にも、理由があったんですね」
「ああ。まずは鳥の民を連れていた。奴隷ってわけじゃなさそうだったし、今こうして話していてもそれがわかる」
「その通りです! ルガリ様は私たちみんなを解放してくださったんです! まさしく森の守護神、解放者なんです!」
「お、おう……」
フェイジアの持つ声の圧力に、若干ナナワは気圧される。抵抗部隊のリーダーである彼女を怯ませる圧。フェイジアの乗り出した体を押し返したナナワは、改めてルガリを見上げた。
「確かにあんたは強いし、鳥の民たちから慕われているかもしれない。でもね、アタシらは祖父の代から抵抗し続けてきたんだ。民族解放のため、奪われた土地と、踏み潰された埃を取り戻すために」
「それは、私たちも同じで――」
「違うね。鳥の民はこの五十年、ずっと服従してきた。でもアタシらは違う。力なんかなくたって、自分たちで戦ってきた」
ナナワの言葉に、うっ、とフェイジアの言葉が詰まる。
むろん、民族性の違いというものはナナワだってわかっている。自分たちのような脚力が、彼女らにはない。だから武力蜂起が難しい。
まして彼女らの森を支配していたのは、来訪者の中でも指折りの戦力を保有するフランクリン夫婦だ。
「そっちのことだって理解している。理解しているけど……! 五十年前、あんたたちは、呼びかけに答えなかった。熊の民や、猫の民と同じように!」
敵対者に踏み込まれたとき、ともに立ち上がるものはいなかった。だからルガリたちの存在には気づいても、共闘しようと彼女らは試みなかった。
抵抗運動で最も恐ろしいのは敵ではない。戦わない味方の裏切りだ。
「信じられないのはわかる。だが、これ以上――」
ルガリがナナワに顔を近づけた時、そのセンサーに新たな反応を捉える。犬の民の耳鼻ですら捉えられない襲撃者の接近を、発掘兵器である彼だけは把握する。
「話はあとだ。報復部隊が来たぞ!」
ルガリの言葉に、犬の民の抵抗部隊はすぐさま行動を開始した。
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