八話「逆賊の足並み」.2
女犬の民を囮にした作戦。もうすぐで敵を打倒できると言うときだ。
「よし、今だ! 決めろ!」
『させるか獣ども!』
「――ガッ!?」
ドシュンッ! と空気を切り裂く鉄矢の音が響く。前後の門にはそれぞれ四機のアルマートゥスがいた。彼女らが相手にしていたのは三機。残る一機はどこかにいたのか、遅れて駆け付けたのだ。
同時に撃ち放ったクロスボウが、犬の民の足元に着弾した。地面のはじけた衝撃と、飛び散る砂礫が、彼女らを吹き飛ばす。
体を丸めて着地するリーダーだが、その動きは止まってしまう。
「くそ、まだいたのかよ」
「リーダー、逃げろ! 後ろだ!」
「あ、しま――」
援軍に気を取られた。残っていた敵の振り上げた刃が、彼女に迫る。
逃げられない――強靭な犬の民の脚力でも回避不能の距離。迫りくる死の運命に彼女は飲まれようとした。
「伏せろ!」
その運命を、古代からの来訪者が打ち砕く。
振りぬかれた『ブレット』の巨体。激突によって機体はバラバラに吹き飛ぶが、犬の民のリーダーは危機を脱する。
彼女を助けた巨体――ルガリの『グラディウス』によって。
「こいつは、反逆者のアルマートゥス? 前門に向かったはずだろう……?」
「もうあの四体を倒したっていうのか?」
「リーダー、無事っすか!?」
ルガリの登場に困惑する犬の民たちだが、戦うべき敵は見誤らない。
彼らを守るように腕を広げ、剣を敵へと向けたアルマートゥスに、彼らも攻撃することはない。汗をかくことなどない鋼の巨人から、本来なら匂いなど感じることはない。
だが確かに彼らは今、自分たちの味方が放つ土と森の香りを、ルガリから感じ取っていた。
「あのアルマートゥスは俺に任せろ。フェイジア、来てくれるか」
「わかりました。ルガリ様!」
「その子たちを頼む。挨拶は、こいつらを倒してからだ」
左腕の格闘用装甲帯を展開、右手の剣とともに構えた。
新たな脅威の出現に、来訪者たちのアルマートゥスは後退の動きを見せた。
***
その後、ルガリによって撃退されたアルマートゥスの残骸が、集落の中央に積まれていた。それまで反抗的なものを閉じ込めておくためだった檻にはアルマートゥスのパイロットや現場監督たちが閉じ込められ、解放された住人たちは歓喜に沸いていた。
宴を催す者たちから離れた建物の屋根の上に、フェイジアとリーダーの少女がいた。視線を合わせるように、ルガリは『グラディウス』に膝を付かせていた。
「世話になっちまったね。その姿、鳥の民だね」
「はい。ここから南の、鳥の民の集落から来ました、フェイジアと申します」
「アタシはナナワ。見ての通り、犬の民の抵抗部隊を率いるリーダーさ」
「ルガリ、原住民を守るために戦っている」
彼女ら犬の民もまた、原住民の一種だ。その平均寿命は短い。鳥の民の長と交流があったというヒトも、おそらくはなくなっているだろう。
「珍しいね。あんたらは森の民だろ。どうしてこんな山奥まで?」
「ナナワさんが抵抗部隊を率いておられるのなら、話は簡単です。一緒に戦いましょう」
「一緒に?」
ある意味当然の反応を、ナナワはとる。
突然の共闘の提案に、彼女は何と答えるのか。
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