↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
22/72

八話「逆賊の足並み」.1


 山岳部に住むという犬の民(ショロトリス)の集落は、つい先ほどまで人間たち――大陸の向こうから来た来訪者(キヴェルニアン)によって支配されていた。

 だが、一機のアルマートゥスと、同時期に襲撃してきた原住民(プリミティ)たちによって、それは解放された。


「どうして犬の民(ショロトリス)がここに? 彼らはバラバラだったのでは?」

「早めに山を登ってきた甲斐があったな。こちらの姿を見て、勢いづいてくれたらしい」

「ルガリ様を利用して、ここを奪還しに来たと?」

「つまり、恩を売れたってことだ」


 アルマートゥスの足音は消えていない。爆発音も一つしかしなかった。

 まだ犬の民(ショロトリス)たちは闘っているのだろう。


「フェイジアは離れているんだ。上から全体を見て、何かあれば知らせてくれ」

「わかりました。犬の民(ショロトリス)は特に気性が荒いと聞きます。お気をつけて」


 飛び立ったフェイジアを見送ってから、ルガリは後門側へと走る。

 現行機型アルマートゥスは、その戦力差は人間と一対百。だが、原住民(プリミティ)たちの運動能力ならば、それを十分の一にまで縮めることができる。

 たとえ現行機と言え、血に飢えた獣たちを止めることはできない。


「すごいな。あれは」


 素直に、ルガリはそう感心した。

 巨大なアルマートゥス三機を、十数人の犬の民(ショロトリス)が囲み、攻撃を誘う者、それに合わせて逆側から反撃する者がいる。見事な連携で翻弄し、関節部に攻撃を加えていく。

 体勢が崩れたところで、装甲の隙間を狙い内部機構へ槍を突き刺した。木の持ち手、鋼の矛先――機械の塊という最先端兵器であるはずのアルマートゥスとは、対称的な原始的な武器が破壊する。


「民族性の違いか。鳥の民(ハルピウス)の皆じゃあできないことだな」


 むろん、鳥の民(ハルピウス)にも気性の荒い者や、力持ちの者もいるが、あそこまで積極的な攻勢に出られる者は早々いない。

 犬の民(ショロトリス)の姿もまた多様だ。頭部まで犬の形をしていたり、耳だけであったり、鳥の民(ハルピウス)と同じく個性がある。

 踵の位置が高く、獣そのものの足を持つ者も、人間と同じ踵の低い者も、どちらも人間をはるかに凌駕する速度を誇っていた。


「……手伝ったほうがいいな」


 ルガリは倒したアルマートゥスの足を両手でしっかり握る。その状態でアンブロス・ジェネレーターを活性化。残りの稼働時間を圧迫しながら出力を高めた。

 走り出し、敵のアルマートゥスで地面を削っていく。


『くそ、この土着ども、調子に乗って……』

『奴らの攻撃は装甲を貫けるわけじゃない! 落ちついて対処すれば、奴らの攻撃は効かん!』


 それが、原住民(プリミティ)たちにとって最も大きな問題だ。関節部、装甲の隙間、わずかな攻撃可能部分は、どうしても限られる。

 そこを攻め続けるのは、決して簡単なことではない。


『奴は放っておけ……倒された者を庇う余裕はない……』

『ちょこまかと、堂々と戦いやがれ!』

「けっ……そんなでけぇ巨人の乗ってるくせに、テメェらのほうが卑怯じゃねぇのかよ」

「言ってやんな。人間なんて、巨人に乗ってなきゃ首なんて簡単に噛み千切れちまうんだからよ。ハンデよハンデ」


 犬の民(ショロトリス)たちは三体から二体へと数を減らした敵に対し、包囲網を狭める。動けなくなったアルマートゥスには彼らも興味を失くし、残った動ける獲物に意識を注ぐ。


「一気に仕留めるぞ。囮役はヘマすんなよ!」


 同族を率いるのは、灰色の体毛をした女犬の民(ショロトリス)だ。背丈はさほど高くない。だが好戦的な笑みを浮かべ、周りの者たちを率いる姿は、狩りの群れを率いるリーダーにふさわしい。

 両手に持った斧を擦り合わせ、背中合わせに警戒するアルマートゥスを挑発していた。


「リーダーこそ、無茶すんなよ!」

「そうだ。まだ婿も孫いねぇんだ。ここで死んじまったら親不孝もんだぞ!」

「うっせぇな! こんな傷物欲しがる奴なんかいねぇだろうが。集中してろ!」


 リーダーと呼ばれた彼女の顔には、右目を覆うほどの火傷の跡がある。灰色の髪で半分ほど隠れているが、これまでの激闘を伺わせた。

 頭頂耳の片方には切り傷を持ち、むき出しの鍛えられた腹筋にも真一文字の傷がある。

 彼女自身、自らを囮にして攻撃を誘い、味方の動きを援護していた。


「よし、今だ! 決めろ!」

『させるか獣ども!』


 犬の民(ショロトリス)の快進撃を阻むように、人間もまた反撃する。




少しでも気に入っていただけたら幸いです。




評価、感想、ブックマーク、どんなものでも大歓迎ですので、お気軽にどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。