七話「魔犬たちの山」.3
相対する敵を倒したルガリは、次の行動を思案する。
「増援が来る前に、解放できるか?」
周囲を光学センサー、熱紋センサーでスキャンする。人体の温度ならば、少なからず感知できる。特に原住民の体温は人間より高い。小さな家屋の中にいくつかの影、さらに坑道内部にも複数の生命体がいる。
「坑道の中にも複数人……体温から考えて、大半は普通の人間だ」
犯罪者や下層階級の人間を、この坑道に送って原住民と一緒に働かせているのだろうか。判別はできないが、少なくともすぐに敵対するわけではないだろう。
「少しだけ待っていてくれ。すぐに終わらせてくる」
聞く者のいない言葉を告げてから、『グラディウス』の顔を集落の前門へと向けた。
そちらから近づく機影が三。一機は門の側に残してきたか。
『おい、何があった。何で倒れて……』
『前方警戒! 構え――』
ルガリの判断は早い。敵が交戦に入るより先に近づき、斬り付ける。敵を引きずり倒し、その体を盾にし、投げつけて動きを封じる。誉れある戦いなど学んだ覚えはない。
もとより彼は、使い捨て兵士なのだから。
『こいつ、速いぞ!』
「そちらが遅いだけだろう」
ルガリからしてみればその通りだ。
彼の乗っているは、第六世代型アルマートゥス『グラディウス』。彼が身を置いていた戦場で、各国や企業が使っていたのは第七世代機『プギオ』や、第八世代機『マッレウス』だ。
そして、世界にたった十二機だけ存在した第九世代機『アルマストラ』がある。
『この速度、発掘兵器か!?』
『なんで、そんなものが……』
現行機『ブレット』が、第七世代機の五十パーセント程度の性能が限界ならば、第六世代にさえも追いつくことはない。
まして、第八世代より上の機体となれば、天と地ほどの差があるだろう。
その戦場に慣れたルガリにしてみれば、彼らが遅すぎた。
「これで、こちらは最後!」
三機を倒し、駆け付けてきた四機目も破壊した。各個撃破に成功したルガリにダメージはない。残るは後門の四機だ。
その後門のほうから、爆発音が聞こえた。
「アンブロス・ジェネレーターの誘爆現象? 誰が……?」
まさかフェイジアではあるまい。そう思った時、尾根から飛んできた彼女の姿が目に入る。
「ルガリ様! 大変です」
「どうしたんだ。フェイジア」
「それが、後門側に犬の民の姿が!」
表情が動かないので、驚きを顔で表すことはできない。代わりのように、その黄色の双眸が少しだけ縦に伸びる。
思った以上に、頼もしい味方ができるかもしれない。
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