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東西故郷物語 ~Memories of Hometown  作者: ミサゴ
第2章 東を背にして
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第016話 - 温もり

○登場人物○


◆出雲サヤ(仮)♀ - 主人公。東側から闇バスで不法入国した高校生。京都で事故に巻き込まれ、玲子達に救出される。

◇出雲玲子♀ - 帰道際、事故に巻き込まれたサヤを救出した。偶然にもサヤと同い年。

◇出雲陽三♂ - 同上。小学生らしくやんちゃで活発的。

◇出雲勲♂ - おじさん。玲子と陽三の父。妻の死後、2人の子供のために姫路で働いている。



―山陽本線、242M列車。


大きく揺れる列車のボックス席に身を委ねる。

手持ちのスマートフォンが、自己の顔と真っ青な空を映し出す。

岡山で新幹線から急行電車に乗り換えた。

姫路までは1時間半の旅だ。

出雲のおじさんに何を話そうか、お土産は買わなくて良かったのだろうかと考えているうちに、瞼が重くなってくる。





ふと、瞼の裏から目を覚ますと列車はまた市街地を走る。

寝るまでガランとしていた車内も、いつの間にか立ち客が出始めるほど混雑している。

天高く昇り詰めていた丸い太陽も、西へと日の沈みに走る。


「―まもなく、終点姫路です。山陽電鉄は乗り換え…」


粗雑な車内アナウンスが乗客たちへの降車準備を促す。

精神的にも疲れていたのだろうか、最初から最後までを寝通したようだ。

通路には降りる人々が列を作っていた。

まだ意識に若干入れない所もあったのか、全員が下りるまではずっと自分の席に居た。




 「よぉ、あんたがサヤさんか。」

おじさんの家は、立派な姫路城を望む駅前大通りのある交差点を曲がった直ぐ一角にある。

京都の玲子さんたちの家に比べると、いわゆる「社宅」と呼ばれるここの方が新しく思えた。

 「はい…」

 「まぁまぁ、そんな固くならんでええよ。入って入って。」

大きな身体と低いトーンの声とは裏腹に、新しい家族の私の事を歓迎してくれた。


 「…しかしまぁ、災難だったな。長旅ご苦労さん。」

お茶を差し置き、彼は私の事を労ってくれた。

そして、改めて自分の口からここに来たまでの経緯を全て説明する。

ずっと笑顔で迎えてくれた彼の顔も強張る。



 「―で、国民票は貰えたんか。」

手持ちのバックの背面のファスナーを開け、クリアファイルから大事にしまっていた書類と国民票全てをテーブルの上に広げる。

おじさんは、一枚一枚それに目を通してゆく。

紙をめくる音が、広い部屋の隅々まで届いて反響する。


 「こりゃあそうそう悩んだろう?」

 「―故郷を捨てるんじゃあなぁ…」


私はうんともすんとも言えなかった。



 「―よし。サヤさん、あんたも今日から出雲家の一員や。」

 「は、はい。ご迷惑おかけしますが…」


宜しくお願いします、そう言おうとした時。


 「ええんや、迷惑かけたって…それであってこそ家族やろ。」

 「―東西別れても、日本人はみんな家族や。宜しくな」





―太陽もすっかり大地の水平線へと吸い込まれ、窓外にはライトアップされている姫路城が映る。

夜も進んできたので、今日はここで寝泊まりさせてくれた。

おじさんも私の事を察し、気を遣って駅まで出向いて弁当を買っていてくれた。



少し早いが、夕食を済ませ、布団を出して眠りにつく。

 「おやすみなさい。」

襖を開け、仕事でノートパソコンを操るおじさんにそう言うと

 「おう、狭いかもだけどゆっくり寝てな。」

とだけ私に告げた。




ささっと布団に入る。

大き目な窓の外には、もう見慣れてしまった姫路城が煌々と佇む。

布団だけでない、温もりを感じた。






体が布団に溶けてゆく、布団が姫路の町へと溶けてゆく…

完全に寝付くまで、耳にはパソコンのキーボードを叩く音が響いていた。





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