第008話 - 同郷の民への、決意。
○登場人物○
◆出雲サヤ(仮)♀ - 主人公。東側から闇バスで不法入国した高校生。京都で事故に巻き込まれ、玲子達に救出される。
◇浦沢 ♂ - 国民センター 国民管理課7番の担当。実は彼も…
―「これであなたは東側に戻れなくなります。大丈夫ですか?」
―最後の問い。私は直ぐに「はい」なんて言えなかった。
母なる土地と、かけがえのない家族を捨てることになる。
記憶にはないかもしれない、でも、家族は私を産み、育て、見守ってくれていたかもしれない。
―沈黙の後、彼は私にこう告げた。
「貴女が思い悩む気持ちも良く分かる。望む時間まで何時間・何日でも待ち…」
でも、もう覚悟は決まった。
「いえ、大丈夫です。そのまま提出します。」
この時この瞬間。私は西側の人間となった。それは同時に、東の土地を捨て、家族を捨てることにもなる。
しかし、ここまで来て捕まるわけにもいかなかった。
私は嘘をついてでも…壁の向こうの記憶を取り戻し、家族と再会したかった。
「そんな壁、いつか崩れる。」あのオジサンの言葉は鮮明に覚えている。
「…そうですか…よく、頑張りましたね。」
「…えっ?」
どうやら京都を発つ前夜、おじさんが電話していた「博多の知人」とは、浦沢さんの事だった。
オジサンは前夜、私の事を話してくれていた。
「ここ、実は東の民の国民票発行所なんです。…」
「東の民の国民票発行所」…ここのフロアのセンターは西日本で唯一、東側からやってきた亡命者・不法入国民が西側の国民票を申請・発行できる場所だった。
正規の発行ルートではない為、西警察や他の発行所に発見されれば職員・そして国民票を受け取った人々は拘束されてしまう。
しかし、博多国民センターは全国5か所のうち、もっともセキリュティーが甘く、実物の必要書類も簡単に手に入れることが出来た。
見た目もだってどう見ても西側の役所なのに、扉の向こうには旅立っていった東の民の想いが詰まっている。
そして、東側から逃亡してきた数千人もの移民がここで西側国民となった。
しかし、全面的に壁が完成すると、東側からの移民は一気に減少した。
ここ数年で、一度も国民票申請書を発行していなかったという。
「私もその移民の一人でして…首都圏大震災のどさくさに紛れて九州まで逃れたんです、」
「―東京に居た家族を見捨てて。」
浦沢さんも私と同じ東側の人間だった。
彼も、壁の向こうに家族を残したまま…。
彼はあの日まで、東京でタクシーの運転手をしていた。
―ここから先、次話からは、「未曽有の天災に見舞われた」東京の現状を…
「国家に見捨てられた首都」の現状を知る意思のある者しか…読んではならない。
お読みくださり、有難うございます。
Misagoです。
次話からは、【残酷なシーンと・地震災害の描写】が含まれます。
苦手な方・精神的にダメージを受ける方はお読みにならないことを強くお勧めします。
次話はお読みになられなくても、物語の内容は十分伝えられるように工夫いたしますので、これからもどうぞよろしくお願いします。
2018年9月27日 - Misago




