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確信犯  作者: 杉恵 幾
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第九章


 「竹川さん、あれを」


 彼女は路上に停められた軽トラックを指さしていた。





 ここは先程少女に教えてもらった公園の脇。根本は大胆にも指さした軽トラックの後ろに車を停めた。


「おいおい、真後ろに停めんなよ」


「運転席には誰もいませんでした」


 確かにそうだがせめて一度横を通り過ぎてからにして欲しかった。

 車から降りた根本はまたもや大胆にも運転席側の窓に回り込んだ。


「おい根本!お前いい加減にしろよ!」


 流石に竹川が怒鳴るが根本は我が道を進む。


「大丈夫です」


「なんでそんな自信あるんだよ」


「刑事の感です」


 根本の答えを聞いた竹川は思わず天を仰いだ。妙な所が似てしまった。


「竹川さん」


 足を止め嘆いていると根本から声がかかる。彼女は車内を覗き込んでいた。


「あれ、作業着でしょうか」


 彼女が指さす方を見る。助手席の紙袋からベージュ系の布が見える。僅かに赤いシミも。


 ガチャリと音がする。根本がドアを開けた音だった。


「鍵かかってねぇのか!?」


「どうやらその様ですね」


 ドアを開けた根本がすぐに動きを止める。車内に充満する鉄の匂いのせいだ。


「待て根本。松田と田中に電話しろ。中はいじらない方がいいだろう」


 そう言われた根本は大人しくドアを閉め、車から少し離れて携帯を手にした。


 その間に竹川は考える。


(鍵をかける余裕がなかったのか?そこまで焦って逃げるならばこんな近場ではなくもっと遠くへ行くはずだ。何を焦っていた?)


 電話を終えた根本が竹川の側に来る。


「捜査員を連れてこちらへ向かうそうです」


「わかった。凶器は車内にあったか?」


 問われた根本は眉間にシワを寄せながら答える。


「シートの足元に変形したスコップが」


「じゃあ奴は丸腰か」


「他の凶器を持っていなければ、ですが」


 竹川は小さく深呼吸をし公園を睨む。


「とりあえず探すか。恐らく星野はこの中だ」












 かなり広い公園だった。遊具のようなものは置いておらず、東側に小さな池があり西側には大きな芝生広場が、そして中央にはこの公園の象徴である噴水が設置されている。




 星野がいたのはその噴水の前だった。




 砂地になったそこは噴水を中心に少し開けていて、周りで遊ぶ親子連れの姿もいくつか見受けられた。

 噴水を囲うように配置されたベンチの一つに星野は座っていた。噴水を見つめながら静かに座っていたのだ。





 根本と竹川は目で合図をし後ろからそれぞれ左右に分かれ星野の横へ回り込む。


「星野」


 星野の右脇から竹川が静かに語りかけた。

 星野は特に驚きもせず首を動かし竹川を見上げる。


「刑事さん」


 覇気のない声だった。まるで全て出し切ったような、何かをやり遂げたような声。根本は思わず拳を握りしめた。


 竹川は続ける。


「随分探したぞ」


 そう言うと彼は星野の右隣に座った。


「何故もっと遠くへ逃げなかった?」


 根本は彼等の後ろに回り、携帯で松田に連絡をとった。連絡と言っても松田へと繋がるボタンを押しただけで携帯を耳に当てることはなかったし、彼等から目を離す事もなかった。松田なら応答のない電話口からする噴水の水音や子供の遊ぶ声でこの場所を割り出してくれるだろう。後のことは松田に任せ、自分はこの場に集中することにした。


 問われた星野は自分の足元を見つめながら静かに答えた。


「必要がないからです」


 その意味はよく分からなかったが竹川はそのまま話を続けた。


「もうすぐ応援の奴らがここに来る。それまで少し話さないか?」


 星野は小さく頷いて星野の顔を見る。


「聞きたいことがあるんですよね?」


 それを聞いた竹川は小さく微笑んだ。


「お前の方こそ、何か言いたいことはねぇのか?」


 そう言われた星野は少しだけ眉を顰めたが、それでもしっかりと竹川を見つめて話し出した。


「僕がこんな事をした意味は、世の中の人にちゃんと伝わるでしょうか」


 竹川は後ろに立つ根本が強ばるのがわかった。彼女の苛立ちが手に取るようにわかる。


「俺達は何となくわかったが世間はどうだろうな。事件の詳細はメディアには伝わっていないし、今後も公表されることは無いはずだ」


 それを聞いた星野が小さく笑う。


「良かった。実は、ここに来る前にいくつかの新聞社とテレビ局に今回の事件のあらましと数枚の写真を送っておいたんです。もちろん僕の犯行動機も」


 ベンチの後ろで根本が大きな舌打ちをした。


「すみません、仕事が増えてしまいましたね」


 星野が根本に向かいにっこりと微笑んだ。


「実際にメディア対応するのは広報の者達なので直接我々の仕事が増える訳ではありません」


 根本が苦し紛れに言い返した。意味の無い反論だ。


「まぁ、お前は黙ってろ」


 竹川がなだめ、そしてまた星野に問いかけた。


「犯行理由。俺が言うか?それとも自分で話すか?」


 星野はすっかりリラックスした様子だった。口元には微笑みを残したまま手のひらを上に向けて竹川に差し出し、話を促《うなが》した。

 竹川は息を深く吐き出し、頭を掻きながら話し出す。


「最初は訳が分からなかった。壁に書かれた絵と遺体から切り取られた中指。貴重品は取られていないから強盗目的ではないのはわかったが、逆に言うとそれ以外は全く分からない謎ばかりの現場だった」


 竹川は懐から棒付きキャンディを取り出すと一つを星野に差し出した。彼は受けっとただけですぐに食べる様子はなかった。竹川も手に持ったキャンディを食べる気配はない。


「そうこうしているうちに三件目の事件が起きた。そこでやっと被害者の共通点を確信した。一人暮らしの老人、これだけだがな。後は目撃者だ。これが大きな進展だった」


「僕にとっては大きな誤算でした」


 星野は棒付きキャンディの外装をいじりながら答えた。


「怪我をしたのも誤算だろう」


「もう少し慎重に、ゆっくり階段を下りればよかったんですけどね。流石に人を一人殺していたので興奮してしまいました。足を踏み外したらもうそのままゴロゴロと。痛かったけど流血せずに済んでよかった。・・・いや、良くはないですね。こうして見つかってしまっているんですから」


 悲しそうに微笑む星野。


「もし、まだ見つかっていなかったら続けていたか?」


 星野が大きく頷いた。


「もちろんです。やれる所までやるつもりでしたから」


 迷いがない答えだった。


「それで、どうして僕だと?」


 問われた竹川は飴の外装を剥がしながら答える。


「ほとんど感だった。被疑者のうち老人と接点がありそうだったのはお前ともう一人。もう一人の男は弁護士だったがしっかりしたアリバイがあってな。消去法でお前の方を調べた」


「そこで僕と彼等の接点に気づいたんですね」


「あぁ。ただ、調べ終わった時にはもうお前は姿をくらましちまってたからあまり意味はなかったよ」


 そう言うと竹川は大きな溜息を吐いて袋から出した飴を咥えた。


「壁の絵と中指の意味は分かりましたか?」


 竹川が分かっているという事を分かっていながら星野は聞いている。彼の口から聞きたいのだろう。自分のした行為の意味を他人の口から聞くことで達成感でも得たいのか。根本はまた舌打ちをした。


「あぁ。絵と中指、そして高齢者を狙う訳がな」


 星野は静かに耳を傾けている。しかし口元は僅かに笑っていた。


「薄々気づいてはいたが、ミキちゃんのお陰でそれが確かなものになった」


 星野は少女の名前を聞いた瞬間少しだけ困惑したがすぐに何かに気づいたように「あぁ」と呟いた。


「彼女に教えたんだろ?」


 星野はまた小さく笑った。


「えぇ。まさかミキちゃんが最後のピースになるとは。そんなつもりは無かったんですけどね。本当に純粋に教えてあげただけなんです。なんの比喩もなくただそのままの意味で」


 竹川が真っ直ぐ星野の目を見つめた。



「お前は“間引き”をしたんだな?」



 星野は無邪気に破顔した。心の底からの笑みだった。

 彼はひとしきり笑った後、先程竹川から貰った飴を袋から取り出した。


「僕、小さい頃は画家になりたかったんです」


 唐突に話し始めた彼の話を二人は止めなかった。


「でも父に反対されて、普通の大学に進み普通の会社に就職し普通に働きました。そうしていると両親が事故で死にました。兄は家を持っていき、僕は土地を貰いました。それを機になんの思い入れもない会社を辞めてしまったんです。そこから夢だった画家を目指すという道もあったかもしれません。しかし画家になりたいという気持ちも、気力もほとんど消えてしまっていましたので、今更それに向かって走る訳にもいきませんでした。しょうがなくその土地で農業を始めましたが少しも面白くありませんでした。自分を偽って偽って、これが好きなんだと思い込むように作業を続けました。日々が億劫でした」


 淡々と、そして一気にまくし立てると彼は一息ついて飴を咥えた。


「こんなはずじゃなかった。僕の人生はどこでおかしくなってしまったんだと毎日毎日思いました。そしてふと気づいたんです。これはもしかしたら僕のせいではないのではないかと」


 感情のない声で話していた彼の声色が変わったのがわかった。


「野菜なんかは苗の段階で密着しすぎているものを間引くんです。その際、間引きの対象となるのは小さい苗や弱っている苗。それ等を間引くことにより、それ等が得るはずであった養分を残った苗が吸収し大きく成長していく。これは人間界でも同じことだと思ったんです」


 星野の目はキラキラと輝いていた。まるで自慢話をするかの様な口調だ。実際に彼はそう思っているのかもしれない。


「僕が間引い人達は弱っていたんです。ただ養分を吸いとるだけの無駄な存在。彼等はこれから何かを成し遂げるわけでもなく何かを生み出すわけでもない。実に無駄です。彼等のような人達がこの国には沢山います。もし仮に、彼等を一気に間引くことが出来れば、残った僕達は今よりももっと豊かに、力強く生きていける」


「しかしっ」


 後ろから根本が声をあげた。自分が思ったよりも大きな声が出てしまったのだろう。小さく咳払いをし、今度は先程よりも小さく硬い声で話し始めた。


「しかし、貴方一人で殺せる人数なんてたかが知れているでしょう。無駄な行為だと気づかなかったんですか?」


 問われた星野の表情は崩れなかった。微笑みを残したまま彼女の質問に答える。


「無駄な行為などではありません。僕の目標はなるべく多くの間引きをすることでしたが、目的は別にありました。貴方は気づいていますよね?」


 星野にそう言われた竹川は真っ直ぐ彼を見返した。


「お前の目的は犯行を行うことにあったんだな?」


 その答えに満足したのか星野は大きく頷いた。


「その通りです。僕が間引きをすることでそれに賛同する人が現れるはず。その為にメディアに詳細を送り付けたんです。僕一人では無理でも同じ考えを持った人たちの協力を仰げば不可能ではない。僕がたくさん間引けばメディアはきっと大きく取り上げる。だから僕は一人でも多く間引き、注目を集めたかったんです」


 その考えからすれば今回の犯行は成功と言えるだろう。しかし。


「お前に賛同する人間なんてそうはいない。仮にいたとしてもその内の何人がお前のような行動をするだろうな。星野、世の中お前の思うようにはいかねぇよ」


 星野は笑ったままだった。


「いいんですよ。一人でも僕と同じような事をしてくれる人が現れれば僕の計画は成功です。一人でいい。その一人が行動することできっとまた次に繋がっていくんです」


 彼は信じているんだ。自分が正しいということを。少しも疑っていない。まるで間違っているのは世の中なのだと、自分はそれを正している側なんだと。そう信じているんだろう。








 そこから少しの間誰も話さなかった。どれくらい時間がたったかはわからなかったが沈黙はさほど続かなかった。竹川が口を開いたからだ。


「星野、お前これからどうなるかわかるか?」


「どうでしょう。死刑になるんでしょうか?」


「そこはわからんが随分冷静だな」


「だって、僕はもう使命を果たしたんですから」


 竹川も根本も、何となくその事は察していた。星野の表情は何故か清々しく達成感に満ちていたからだ。なにも思い残すことは無いということだろう。


「それも覚悟の上だったのか?」


 星野は少し首を傾げた。


「うーん、覚悟と言えば覚悟なんですがちょっと違いますね。強いて言うならそうなるべきだから、でしょうか」


「そうなるべき?お前は自分が罪を償うべきだと思っているのか?」


 竹川が意外そうに星野にたずねた。しかしそれを聞いた星野の反応は竹川や根本が思っていたものとは違った。


「償う?まさか!僕は僕のした事が間違っているだなんて思っていませんよ。仮に過去に戻ったとしても僕は同じ事をします。絶対に。僕に償うべき罪は一つもありません」


「じゃあ何故そうなるべきだなんて言うんだ?」


 竹川の問いに星野は小さく笑った。笑ったまま答えた。


「“彼”がそう言ったんです」


 竹川が見た目をカッと見開いた。


「そうなるべきだと“彼”が言ったんですよ。僕も確かにそうだと思ったのでそこまでを計画に含みました」


 根本の生唾を飲み込む音が聞こえる。竹川は怒鳴りつけたい気持ちをどうにか抑え、静かに星野にたずねた。


「“彼”とは誰だ?」


 恐らくその“彼”が少女の言っていた得体の知れない天使様なのだろう。気持ちを抑えてたずねたはずだったが、わずかに腹の底から上がってくる濁った物が混ざってしまう。しかし、達成感に酔っている星野はその気配に気づかず答えた。


「ここで会ったんです。穏やかな春の日でした。彼の髪の毛が太陽に反射してキラキラと輝いていてとても綺麗でした」


 的を得ない返答だった。しかし構わず星野は続ける。


「僕が人間の間引きの可能性に気づいてすぐの事だったんです。突然気づいてしまった可能性に戸惑っていた時期でした。僕がここでこうしてぼーっとしていたら“彼”が声をかけてくれたんです」


 根本は気づかれないように所持していたボイスレコーダーのスイッチを入れた。先程までの事件の経緯は恐らくまた話すだろうが、この“彼”の話はまたするとは思えなかったからだ。


「綺麗な男の子でした。中性的な顔つきで女の子のように可愛らしい。真っ黒な瞳がとても印象的で。そんな彼に僕は相談したんです。はじめは彼にこの素晴らしい計画の可能性について教えてあげようと思って話し出したんですが、もしかしたら間違っているのかもしれないという気持ちも少しあったから話をしながら彼の意見を聞いてみたんです」


 竹川は知らずうちに拳を握りしめていた。その拳の中はじっとりと汗をかきはじめている。


「そいつはなんて言ったんだ?」


 恐る恐るたずねる。星野はずっと笑っていた。


「素晴らしいと言ってくれました。そして計画を一緒に立てて、二人で何時間ここにいた事か。そう、丁度このベンチですね。貴方が座っているところに彼が座っていて」


 根本がベンチの背を掴んだ。


「その“彼”は今どこにっ!?」


「残念ながら僕も彼と会ったのはそれきりで居場所は分からないんです。ここに来たらまた会えるかもしれないと思って来てみたんですが会えませんでしたし。会って褒めて欲しかったんですけどね。彼なら絶対に良くやったと言ってくれると思ったんですが残念です」


 ベンチを掴む彼女の手に力が入りギギっと音を立てた。彼女は怒りをあらわにしたまま竹川を見る。彼女の目はどうするんだと言っていた。


「そいつの名前とかは知らねぇのか?」


「わかりません。名前を聞いたんですがまた今度と言われてしまいました」


「そいつはお前に人を殺せと言ったのか?」


「どうでしょう。僕の考えをどの様に世間に広めようかと二人で思案しているうちにいつの間にかそうなっていました。彼が提案してくれたのはメッセージの残し方やメディアの使い方、それから実行後の身の振り方なんかです」


 それが本当ならその“彼”というのは立派な犯罪者だ。


 そこまで話すと彼は「そう言えば」と思い出したように話し出した。


「そう言えば、壁に描いたあの絵。はじめは普通に二葉の芽を描こうと思っていたんです。でも彼がHOPE《ホープ》を吸っていたから四葉にしようかなって。後で調べたら希望という花言葉は四葉ではなく三葉で、四葉の花言葉は幸せなんだそうですけど。まぁ、どっちでもいいですよね。幸せも希望も似たようなものでしょう?」


 清々しくそう言った星野。しかし竹川も根本も、“彼”に対して幸せや希望なんて印象は抱かなかった。見たこともないその“彼”はただただ不気味だった。


「煙草を吸っていたのか?さっきのお前の話から俺は少年だと思ってたんだが」


 星野は両肩をクイッとあげて首を傾げた。


「彼の年齢は僕もわかりません。高校生だと思ったんですけど煙草を持っていたし、しっかりとした話し方だったので年齢をと聞いたんですけど名前と同じではぐらかされてしまいました」


「はぐらかされた?」


「えぇ、君よりは少し上だって。可笑しいですよね。僕今年で三十一ですよ?嘘をつくにしてももう少しましな嘘を付けばいいのに」


 得体の知れない気持ち悪さが背中から首筋にかけて走った。何故、星野が話す“彼”の話はこんなにも不気味な印象を受けるのだろうか。


 その時、ようやく遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。










 松田と田中が合流した。


「竹川さん、無事ですか?」


 松田が竹川に問いかける。


「ずっと聞いてたんだろ?なにもなかったよ」


 そう話している間に他の捜査員が星野を拘束する。


「田中、お前は星野の車の鑑識に立ち会って来い。松田、お前は星野について行け」


 指示された二人は返事をしそれぞれ動き出した。田中はそそくさと軽トラックのある方へと走っていった。

 松田はいまだにすぐ側にいる星野の元へ行こうとした。


「松田」


 しかし、すぐに竹川に呼び止められる。


「なんですか?」


「留置場の奴に伝えとけ。星野から目を離すなって」


 松田とその隣で話を聞いていた根本が怪訝そうな顔をした。


「何故ですか?」


「俺の感だが、恐らく奴は死ぬ気だ」


「なっ!?」


「星野の計画は奴が死ぬまでがプランに含まれていたはずだ。注意しておけ」


 竹川の言葉を聞いた二人は思わず星野を振り返る。捜査員に拘束され、歩き出そうとしていた星野は視線を感じたのかこちらを振り向いた。そしてこちらに向かって手を振った。その手にはしっかりと手錠がかけられており、彼が手を揺らす度ジャラジャラと音を立てていた。


 ポツリと頬に何かが当たった気がして根本は空を見上げる。


「⋯降ってきましたね」


 頭上には暗く重たい雲が広がっており、こうしている間にも降ってくる水滴の量が少しづつ増えていく。竹川は飴を咥えたまま根本と同じように空を見上げた。


「帰るか。だいぶ降りそうだ」











 次の日、星野は留置場内で死亡した。

次のエピローグで終了です。

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