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18 虚偽

 処刑場の一角で視察団が賭けや噂話で盛り上がっている間にも、ローランド卿は頭の熱くなってくるのと、胸をえぐり取ってしまいたいほどの痛みに耐えていた。狂ってしまいそうだ、いや、いっそのこと狂ってしまいたい。そう願った。

 なぜ彼女が。そればかり考えていた。

 ローランド卿にはすぐ分かった。視察団の雰囲気と、わざわざ指名したマクナマラ伯爵を見れば分かった。最初から仕組まれた最悪の見世物だった。あの酒場に行っていたと、どこでどう知られたのかは分からない。だがそんな情報は金さえあれば知れることだ。気付けなかった自分自身に腹が立つ。

 海軍の将校が海賊行為をする娘と通じていたなどという噂は立たないだろう。面子の方が彼らにとっては大切だからだ。だが、そんなことはもうどうでもよかった。悲しい。今はそれしか感じない。世界が色を失ってしまったようだ。ほんの少しの楽しい時間もこれで終わりだ。もうあの笑顔を見ることも、声を聞くことも叶わない。

 地位や身分がいったい何だというのだ。大切だと思った者はやはり守れない。昔から何も変わっていない。義父を失った時も、部下が海賊になった時もそうだ。もはや、生きている意味を感じない。


「閣下、大丈夫ですか?顔色が良くないですよ。ご気分が優れませんか」

 部下の一人が心配そうにしている。すでに兵の何人かはこの悪臭に耐えられず、休んでいるという。心配してくれる部下もまた、青い顔をしていた。

 ローランド卿は初めて自分が震えているのに気付いた。それでもなお、自分がひたすら死刑執行を見守っていることにも初めて気付いた。何も考えたくない。部下が心配している。その部下をも残虐に引き裂いてしまいたい衝動に駆られる。

 海から風が吹いた。潮の香りに、胸にしがみついていた吐き気がどこかへ行った。風の冷たさのおかげで、少し落ち着いた。震えがおさまった。強い憎しみも激しい衝動も、徐々に薄れていった。

「閣下?」

 部下が何も言わない上官を心配している。

「いや、大丈夫だ。心配かけてすまない。ちょっと疲れているだけだろう」

 部下に笑いかけると、そうですかと言って彼は持ち場に戻った。あまり信用していない顔だった。だが本当に、もう誰かを引き裂いてしまいたいとは思わない。一瞬の気の迷いだ。知らない奴を殺すより、少しでも知っている者を手にかける方が誰だって気が引けるに違いない。

 ふと、メアリーの髪を撫でた時の感覚が鮮明に手に蘇った。だが、風はそれすら奪い去った。もう何も残っていない。

 刑場を見れば、死刑囚が絞首台に立つのを嫌がって刑が中断されていた。早くしろと残酷な言葉を口にする。兵が嫌がる死刑囚を無理やり立たせた。刑が続行される。視察団の視線がこちらに集まっているのが分かる。ある者は憐れみを込めて、またある者は嘲りや職務を全うしようとだけする彼に対する恐れを込めて見つめている。ローランド卿は全てを気にしないようにした。

 もう一度メアリーの姿が蘇った。声が出そうになった。涙は出ない。これで確信した。あんな女を愛してなどいない。所詮他人だ。他の娘達と同じだ。本当に悲しんで悼んでいるのなら涙の一粒くらいこぼれてもいい。

 なのに、どうしてあの瞳が忘れられないのだろう。

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