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17 禍根

 視察団では、数人の男達がひそひそと話す声がしていた。殺戮の臭いの立ち込める中、どこか楽しんでいるような雰囲気だ。皆高級そうな服を着て、この場にはおよそ不似合な装飾品を着けていた。

「なんだ、意外とあっさり殺してしまったなあ」

「もうちょっと何か動くかと思ったんだが……」

「ああ、やはりそちらへ賭けておけばよかった。ローランド君も、好きな女を殺す時くらいは、取り乱すかと思ったのに」

「まさか間も開けずに発砲するとは……これはあなた方も予想外でしたろう」

「いや、まったくさ。私はこちらに賭けてはいたが、涙の一つくらいは見せるかと思ったよ。やはり可愛げのないやつだ」

「何にせよ、彼が王国に忠実な奴だと分かったじゃあないか」

「そんなこと、前から知ってたさ。しかし、マクナマラ君には感謝せんとな。今日のような楽しい賭けを主催してくれたのだから」

「ああ、そうだな。彼もよく情報を掴んだものだ。ローランド君ともあろう者が、海賊行為を行う娘に恋をしているなど……」

「彼は今時の若者にしては真面目だからなあ。今まで何度か恋の噂は聞いたことがあるが、仕事に熱心すぎて、女の方が愛想を尽かすくらいだというし。マクナマラ君から話を聞いて、私は正直びっくりしたよ」

「やはり、血なんじゃあないかね。だから私は言ってるんだ、彼は早いうちに始末するべきだと。平民と貴族では、持って生まれたプライドが違う。所詮彼は平民、いや平民以下なんだ」

「あんな有能な男を殺すのか、もったいない。彼は女王陛下のお気に入りでもあるしなあ」

「しかし、こんな賭けも面白いもんですなあ」


 空は雲一つなく晴れていた。突き抜けるような青さに、天頂を見上げると倒れてしまいそうだ。

 マクナマラ伯爵は空を見て、深呼吸した。海軍と違って、陸軍は赤い制服だ。陸軍で青い服を着ているのは、竜騎兵だけだ。空の色のせいで、その服の色を思い出した。

 海賊など、滅べばよい。マクナマラ伯爵は目を細めた。竜騎兵に勤めていた弟を思い出したのだ。二度とあの声は聞こえない。肖像画に向かって話しかけても、返ってくるのは空しい静寂だけだ。

 ローランド卿は、まだ平然として囚人を見ている。吹き上げる潮風に、異国風の黒髪がなびく。彼の目は黒い。一体今、どんな世界が見えているのだろう。伯爵は急に彼に対して、殺意とも憎悪ともとれない嫌な感情を抱いた。あの平然としている素振りが憎たらしい。本当は発狂してしまいそうなのを殺しているローランド卿が嫌いだ。守るべきものも守れず、流れに身を任せて生きていることを屈辱とも悔しいとも思っていないのだろう。そんないい加減にしか見えないローランド卿が大嫌いだ。

 東の海賊王が健在だった頃、海賊王はある時ヨーロッパにいたことがある。なぜいたのかまでは知らない。その時、伯爵の弟がいた竜騎兵の一団が襲われた。亡骸さえ誰一人帰ってこなかった。同じ頃、イギリスの貴族の邸宅も海賊王の船団に襲われた。エドモンド・ローランド卿の邸宅も被害に遭ったという。彼は妻を亡くしたそうだ。それなのに彼は海賊王を捕えた時、その息子を養子にした。頭がおかしいとしか言いようがない。上官だったエドモンド・ローランド卿を憎み、恨んだ。

 今もウィリアム・ローランド卿を恨めしく思う。彼自身に非があるわけではないが、それでも誰かを恨まずにはいられない。エドモンド・ローランド卿に養子として引き取られなければ、いや、東の海賊王がイギリス海軍に敗れさえしなければ。ウィリアムは今頃、東の大海賊だ。マクナマラ伯爵は彼を殺すことに生涯をかけただろう。その方がましだった。彼は視察団の方を見て、若干の嫌悪感を覚えた。胸のうちにうずまくこの汚い泥水のようなものを、今すぐぶちまけてしまいたかった。

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