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第8話 - 戦闘

「モンスターだ!!」

「助けてくれ!!」

「殺される!!」



人々の悲鳴がこだまする中、ラスター・ホークの一行はあっという間に酒場から飛び出した。クロウは状況が理解できずにぼーっと彼らを見送っていたが、酒場のマスターの「ボウズは隠れてろ!」という声で我を取り戻した。


しかしクロウはすぐに立ち上がった。


――僕だってレベルは低いけど勇者だ。彼らを援護せずして、なにが勇気ある者だと己を語れるだろうか。


そう思いクロウは制止する声を振り切って酒場のドアを開いた。


化学反応や物理現象を用いて戦う錬金術師は、自身の力で戦わない関係で多少のレベル差であれば覆すことのできる職業と言われている。事実としてLv.40相当のモンスターを見習いの錬金術師が一人で倒したという記録もある。クロウはその錬金術師と同じように、自分にも何かできることがあるはずだという腹積もりだった。


息を切らしながらクロウはラスター・ホーク一行を追う。オークやゴブリンの群れであれば、師匠謹製のテルミットグレネードで一掃できる。それに危なくなれば煙幕を強いて逃げればいい。大丈夫、僕だって勇者だ。


クロウはほどなくして戦場へたどり着いた。しかし待ちうけていた光景に、クロウは自分の打算がどれだけ稚拙で楽観的だったのかを思い知らされることになった。



「ロードワームが……何体居るんだ……?」



それはヤツメウナギのような口を持つワームだった。――が、問題はその身体の大きさである。牙一つのサイズがクロウとほぼ同じぐらいの大きさもあり、加えてそれがびっしりと口腔から覗かせている。体躯は周囲の建造物と同じぐらいの高さを持ち、それらが何重にもうねりを作りながら地平線全体を覆いつくしていた。


クロウが自身の間違いに気づくのも束の間、()()()()()を見つけたワームが一斉にクロウの方を向いた。こんなのフラスコサイズ薬品で同行できる相手じゃない。恐怖で足がすくむ。


同時にラスター・ホークの一行もクロウの存在に気づいた。



「クロウ!?どうしてここに!」


「マオ、彼に防御を!!」


「もうやっとる!」



赤鉄鉱ヘマタイトがクロウの目の前に赤い輝きを放つと、クロウの身の丈の倍はある巨大な岩壁が出現した。同時に突撃するロードワームのうち1体をツバキが正面から両断し、異音を発しながらワームは力尽きる。マオがトルマリンを砕き電撃を放つともう一体のワームも身体をけいれんさせ、マオの方を向く間もなく力尽きた。


しかし多勢に無勢だった。2体のワームが二人の間を抜け出して、赤鉄鉱ヘマタイトの岩壁へと突撃した。



「あ、あ、あっ……」



積み木を崩すかのように岩壁が砕け散る。クロウの頭の中は恐怖と後悔でいっぱいになり、腰に力が入らず地面にへたり込む。



「こなくそっ!」



ローが地面に埋めた樽式爆弾を破裂させると、振動でワームたちが一斉にひるんだ。ツバキがすかさずワームの頭に剣を突き立てる。しかしブレーキをかけても列車がすぐには止まれないように、一体のワームが勢いのままクロウへと覆い被さった。



「クロウ……っ!!」



ローが力無く声を漏らしワームから目を逸らす。しかしクロウがみていた光景は、ローの想像とは全く異なるものだった。


月光を反射して金色に輝く髪の毛、燃える炎のような瞳、そして長いまつ毛の綺麗めな顔立ちにミスマッチなほど隆々とした筋肉。Lv.70到達者ナンバーセブンにして 偉大なる者(アーク)の称号を持つ唯一のパラディン、キルヴィス・レオンハートが片手でロードワームを受け止めている姿だった。


レオンハートがクロウの方を見ながらにぃと笑う。白い歯がキラリと光った。



「君がクロウ・ロックフォール君だね。リィエン殿から話は聞いているよ。危ないところだったね」


「えと……レオンハートさん?」


「ああ、僕さ!」


「レオ!!」



ローが叫び、下着姿の彼に1mほどの細長い木の棒を投げつける。レオンハートはそれを軽々と受け取った。



「さすがローくん、気が利くね」


「というかお前装備はどうした!」


「復活して転移してきたばかりだからね!」



レオンハートが棒を振るとメキメキとその牙にめり込んでいき、そのまま力任せに振り切るとロードワームの口腔が砕け散った。



「た、ただの木の棒で?」


「パラディンの加護の物理攻撃無効は僕の武具にも適応されるからね。ただの棒でもドワーフのロングソード並に硬くなるのさ」


「いいから、お前はこっち!」


「わぁ!」



クロウは遠くから走ってきたローの太い腕に抱えられ酒場まで連れていかれる。離れて小さくなっていくレオンハートの背中が、クロウにはとても大きく見えた。



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