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第14話 - ブリーフィング(2回目):後編


「誰が()()()()()()、ですか?」


「そうだよ。ちゃんと情報を整理すれば見えてくるはず」


「情報を整理って言ったって……僕だってまとめたんですよ!」


「うんうん。えらい、えらい。足りてないのはちょっとした気づきだよ」



そう言うとリィエンはクロウが手に持っていた彼の手帳を素早く取り上げた。あっとクロウが声を出すも間もなくパラパラとページをめくると、フムフムと声を上げ白いチョークを手にする。


二人の視線も気にせずにリィエンは手帳を見ながら壁の黒板にチョークですらすらと書いていく。



------------------------------------------------------------------------------------------------


☆レオ君の行動☆


■ 朝

次の作戦に向けての準備と会議


■ 昼

同上


■ 夕方

18時ごろから壮行会

すぐに抜け出す


■ 夜

酒場に戻ってツバキを介抱(でもツバキは酔ってない)

マオを探しに出てローを見つける


(以降は不明)


------------------------------------------------------------------------------------------------



「どう?」


「おぉ~~」



ヘブラスカはリィエンの記載を見て感心しながら拍手をする。実はリィエンは彼女のメンタルケアを優先しており殆ど探偵らしい仕草を見せていなかったので、彼女にとってそれはとても新鮮だった。しかし対称的にクロウは呆れて物も言えないと言いたげな表情をする。


それは少しだけ文言が簡単になっているものの、クロウの手帳の記載から大きくは変わっていなかった。ただ自分の表記を丸写ししただけなのに誇らしげにする師匠の姿に大きくため息をついた。



「感嘆のため息をどうも☆」


「絶望と失望のため息ですよ……」


「まぁまぁ、すぐに感嘆に変わるって」


「はぁ……」



クロウの生返事を無視してリィエンは再びチョークを手に取る。



------------------------------------------------------------------------------------------------


■ 夜

酒場に戻ってツバキを介抱(でもツバキは酔ってない)

マオを探しに出てローを見つける


 → その後に死亡


------------------------------------------------------------------------------------------------



「ほら。これでどう?」



クロウは再びため息をつく。



「どうもこうも言われても、そんなの当り前じゃないですか」


「うんうん。じゃあこうしたらどう?」



------------------------------------------------------------------------------------------------


■ 夜

酒場に戻ってツバキを介抱(でもツバキは酔ってない)

マオを探しに出てローを見つける


 → その後に死亡



■ 深夜

ツバキちゃん:朝まで酒場で潰れちゃう



------------------------------------------------------------------------------------------------



「あっ……!」



クロウは驚嘆の声を上げた。それを見るとリィエンは満足げに頷く。



「そう。ツバキ殿がレオ君を殺害できるタイミングってのは介抱を受けてから再び酒場に戻る間だけなんだ。もし彼女が殺人犯だとするとそのあとのレオ君の記憶があることと矛盾してしまう」


「じゃ、じゃあツバキさんは犯人じゃないって事ですか……!?」


「うーん、結局ツバキちゃんが色々嘘をついてたのは事実なワケで、【ツバキ殿は実行犯ではない】ぐらいが妥当な落としどころかなぁー。たとえば何かしら密室を破るトリックを仕掛けておくとか、間接的に協力した可能性は捨てきれないよね」


「確かに……」



落ち込むクロウをリィエンの両腕が包み込む。師匠の体温をアオザイ越しに感じてクロウの心臓は大きく跳ねた。


クロウの黒い髪の毛に指を通しながら、リィエンは彼の頭を撫でる。



「ここまで分かったのはクロウ君が頑張って調査したからじゃん。えらいえらい」


「でも、結局師匠に頼りっぱなしだし、こんな簡単なことにも気づけなかったなんて……」


「いーのいーの。誰だって皆に嘘つかれたらパニックになるから。クロウ君には私がついてるから、不安な時は可愛い師匠に甘えちゃえばいいんだよ」


「でも、それでも、一人で頑張れるぞってところを見せたくて……っ!」



クロウは涙声で答える。リィエンはその様子を見てもう一段強く彼を抱きしめた。


慣れない土地での調査、ラスター・ホークという世界の希望を担う案件への重圧、一人で頑張らなければという責任感……。リィエンに抱きしめられることでそれらが一気に解放されて、クロウは彼女の胸の中で涙を流しながら声をあげた。




5分ぐらい経って自分の置かれた状況に気づくと、クロウは顔を真っ赤にして彼女から勢いよく身を引き離した。リィエンが困ったように笑いながら自分の胸のあたりを見る。彼女の赤いアオザイの前面に、二人分の涙の跡が残ってしまっていた。



「ま、こういう使い方も出来るなら、防御力を下げた甲斐はあったかな……」


「すみません……」


「お高い衣装ですのに申し訳ありません!!べ、弁償しますから!」


「いーのいーの。私はクロウ君の師匠でもヘブラスカ嬢の依頼人でもある前に、二人のおねーさんなんだから。こんなシミの一つや二つ、私にとっては勲章みたいなもんだって♪」



そう話すリィエンには嘘をついていたり誤魔化している様子はなかった。



「じゃあ可愛い弟子のためにもう一個ヒントをあげようかな。ラスター・ホーク内に犯人が複数いる可能性は考えにくいし、【ツバキ殿が犯人である可能性は低い】んだよ」



クロウはチュニックの袖で目をこすりながら、リィエンの言葉に疑問を呈した。



「なんで、犯人が複数いる可能性は考えにくいんですか?」


「じゃあどうして私達に依頼しに来たのって話~……あれ、前にこの話したような?」


「すみません、確かしてたような気がします。忘れてました」


「はいはーい。じゃあ改めて方針を伝えるけど、犯人が絞られてきた私達にとって次に大事なのは【誰が殺したか(フーダニット)】じゃなく【どうやって殺したか(ハウダニット)】の解明だ。アリバイから逆算したところで方法が分からないんじゃいくらでも逃げ道はあるからネ」



クロウは小さく頷いた。事実としてマオかローか、あてずっぽうやカマをかけたって方法が分からねければ簡単に言い逃れ出来てしまう。



「でも殺害方法に関してはそれこそ完全に情報がないんですよ」


「うん。ちなみに、レオ君を殺せる方法って何があるんだっけ?」


「えとー……絞殺・扼殺・刺殺でしたよね」


「良いね、流石は我が弟子だ。しかし問題はロー殿とマオ殿の二人で考えると、どれもレオ殿相手にこなすのは難しそうだということだ」



クロウは少し考えるも結論は出ない。困ったように師匠の方を見ると、リィエンは頬をわずかに赤らめながら頭をいた。



「もー、しょーがないなぁクロウ君は……。私達がまだ検証してないことがあるでしょ?」


「検証って……まさか」


「そ。次は【瘴気による殺人が可能か】を見定めるべきフェーズだね。それに錬金術師としてはあんな物質調べたくて堪らないじゃんネ☆」

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