2杯目3口 とりあえずジュリナ・アーバンセーンの話へ
〜登場人物紹介〜
◇マリア……セントルローズ公爵夫人。お茶会主催者。
◇ヴィエラ……先々代セントルローズ公爵夫人。
─本日の招待客─
◆モイラ・ゾルテナ…… リレイア子爵夫人 。51才。夫のリレイア子爵は15才年下。
◆ ジュリナ・アーバンセーン……大富豪の妻で、本人も化粧品の企業を経営している。元侯爵夫人。
◆ケイティ・カトマンド…… ダレス男爵夫人。結婚4年目で24歳。眼鏡をかけている。
モイラの阿鼻叫喚はやがて小さくはなったが、そう簡単に止むものでも無かった。
あまりの惨劇にヴィエラは1人掛けソファから立ち上がって指示した。
「モイラは今は話をさせるのは酷だわ。彼女の話については……私達も深く考えて、慎重に選んだ言葉で意見しなければなりません。────時間が必要だわ。
ここは次のジュリナに話をしてもらいましょう。それでいいかしら? モイラ」
モイラはローテーブルからは身体を起こしていたが顔を覆っていた。それでも うなずいたのは みんなが分かった。
「ではジュリナ、突然のスタートになってしまったけれどお願いします」
マリアがジュリナに声をかける。そして、1人掛けソファに座り直す義祖母に感謝の目配せをした。
「良いわよ。私はいつだって構わない。……だけど……」
そこでジュリナは笑い出したのだ────心から おかしそうに。
マリアやケイティは少し驚いた。
「私の話も全く救いがないから……なんだか申し訳ない。甘い恋の話なんかじゃ全くないもの」
その言葉はマリアは 気にしなかった。今はむしろその方が良い気がした。気が、したのだが────
「私の表向きの両親はデュアクリフ公爵夫妻──だけれど実母は公爵夫人ではない。私は愛人だった高級娼婦の娘よ」
ジュリナ・アーバンセーンもまた爆弾だった。──そしてそれは投下された。
モイラすらも声を殺した。辺りは死滅したかのように呼吸する音も控えられていく。
「父は度量の広い人で、男児3人、女児がもう2人いたけれど──その中に私を認知して入れてくれていた。
私は何も知らず、子供の頃はあの一族の一員だと疑いもせずに暮らしていたわ。
貴族の家庭では隠れてしばしば行われていることなんて話も、大人になってからは耳にした」
ヴィエラが1人掛けソファから言葉を添える。
「爵位継承者男児は、神前での誓いとサインした証明書のある──正式な結婚の各爵位夫妻から産まれた長男であることが重要よ。
正式な結婚をしていない男女から産まれた婚外子には継承権は無い。これは国王様のこの国の決まりごとよ。
女児については直系男性の血統を継いで認知されていれば、不明確でも暗黙の了解のところがあるわ。そもそも継承に関わる存在ではないから。
夫婦で良しとしていれば問題もないでしょう」
「だけれど、デュアクリフ公爵夫人はそんなふうには思ってなかったみたいです」
そう言ってジュリナは 両手はティーカップに添えた。
瞳はどこか遠くを見ている。
「あの人は私を憎んでいた。────しかも、とても」
そうしてジュリナは紅茶に口をつけた。彼女はその唇を離してからも、紅茶から漂う香りを楽しんだ。
マリアに向かって一言告げる。
「素敵なカモミールの風味だわ」
マリアはジュリナの眼差しを受けとめて心から思った──
(カップケーキとカモミールティーにして本当に良かった)
と。




