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 3 教皇選挙  エドワード・ベルガー監督


 さて。新年始まって最初の紹介は『教皇選挙』です。たまたま、上映中に本当に教皇選挙が行われたので話題になった去年の春の作品です。実際、客入りが前週対比200%越え。実際にその辺りで映画館へ見に行きましたが、座席は8割ほど埋まってた。観客は50代、60代など。若い世代よりは年配の映画好きって感じでしたね。もう少し早い時期なら、若い世代が多かったかも。

 映画の内容や話題性から絶対に配信作品になるだろうと思いましたが、なりましたねぇ。サブスクで観れますよ。

 監督は『西部戦線異状なし』のエドワード・ベルガー。小説の原作あり、だそうです。にしても、よく実写化出来たなぁと思うばかり。舞台がヴァチカン市国の中枢ですからね。異教徒の日本人からしたら、まさに神秘のベールに包まれた先が舞台の映画ですもん。が、撮影はやっぱりヴァチカン市国では許可されずに数多の映画でよくお目にかかるイタリア南部のカゼルタ宮殿だったそう(同じヴァチカン市国を舞台にした『天使と悪魔』とかも同じ)。あと、その手の映画で使われる映画スタジオがあるそうで。京都の映画村みたいなもんがイタリアにもあるとは……。でも、観てる時は本当にヴァチカン市国かと思ってしまったよ。


 さて。では簡単にあらすじを。タイトルからして『教皇選挙』ですからね。もう、説明いらないかもだけど。


 教皇が亡くなった。そこから物語は始まる。

 駆けつける後ろ姿。枢機卿の赤い衣装を纏った初老の男性は、教皇と親友でもあったローレンス首席枢機卿。前教皇をゆっくりと偲びたいが、そんな時間もなく遺言から「教皇選挙を取り仕切るよう」指名される。ローレンスは無事に次の教皇を決めるべく『教皇選挙』の準備に取り掛かるのだが、対するは世界中から集まった100人の枢機卿達。誰もが腹に何かしらの思惑を赤い衣装に隠して次々と集まる。と、そこにローレンスの知らない枢機卿が急遽参加する知らせがはいる。亡くなる寸前に前教皇が枢機卿に任命した人物。調べると紛争地カブールで活動していたという。誰も知らない枢機卿。戸惑いの中、準備は進められる。

 実直で善き人、首席枢機卿のローレンス。その友人であり穏便なリベラル派のベリーニ。超がつくほど過激な保守派のテデスコ。対するは同じく保守派だが慎重に票集めを進めるトランプレ。初のアフリカ系教皇を目指すアデイエミ。そしてリストに無かった謎多き新人ベニテス。

 新たな教皇が誕生するまで開けられることのない礼拝堂の中で、100人の思惑が渦巻いていく……。

 

 簡単に言えば、密室ミステリーの形の話だ。新教皇誕生までに繰り広げられる人間ドラマ。聖職のエリート達が繰り広げるドロドロの票集め。保守か革新か、原理か、現状維持の穏便か。政治的なドラマのようで、ミステリー要素もあり。そこも面白い。閉じられた礼拝堂の中で、本当に様々な事件やら揉め事が起こる。こんだけ場所も人も限定された中で、これだけの出来事が次から次へとよぉ起こるわ、と思うくらい。

 そこが面白いんだけど、じゃあ、実際はこれだけ揉めるのか?と疑問が湧く。で、ちょいと調べると日本から参加した枢機卿がいるんです。彼の講演会の資料を読むと「参加する前に選挙の流れを知るために映画を観た」「概ね流れはあってる」「けど、あんな雰囲気ではない(笑)。和気あいあいと投票しましたよ」との事。そりゃあ、そうだ。映画ですからね、トラブル起きてナンボですから(笑)。でも、壁の外側から想像すると映画のノリになるんだよぉ! 


 本当に異教徒から見ると、ヴァチカン市国というのは不思議な場所だ。中世の雰囲気やシステムを伝統として保ちながらも、現代というシステムと共存している。信仰を中心とした生活をしつつ、枢機卿を中心として聖職者達で世界を創りつつも、便利なIT機器を駆使している。新教皇選出の為の隔離では、所有するデジタル機器は全て『お預り』になる場面も、ガラス窓の振動はもちろん電波も遮断する処置がとられていく場面に驚くばかり。バリ現代社会やん。

 かと思えば、枢機卿達の食事や寝室を整えたりするのはシスター達。年若い少年がお手伝いをしていたり。その辺の伝統的な体制は守っている。

 変わらずにいる本質の部分と、変化を受け入れつつ恐れずに進化していく部分のバランスがとれて、恐らく神道でいう『常若』な状態。見事です。

 最先端を受け入れつつも、体制や伝統は護る。


 さらに私が観ながら注目したのは、『美』が多いということ。

 凝りに凝った建物の美しさはもちろん、枢機卿達の赤い衣装やロザリオのデザイン! さすがカトリックだわ! 秀麗! さらによく見ると、人物ごとに違いがある。そこがまた良い! 宗教的な『お約束』という制約がある中で洗練されたデザインでまとめ上げてる。神道や仏教だと、全員おんなじ衣装だけど(個性出せれる余地は数珠ぐらい?)、ヒラリ舞う袖や帽子、かざす手の指輪等々に色んなデザインがあってオシャレ! それに枢機卿の衣装が赤くてカワイイ! なんであんなに赤なのか。曰く『信仰の為なら命を捧げるという意味』だそうです。魔除けじゃないのかぁ。とにかくヒラヒラとカワイイのだ。早足で歩くと風を含んで膨らんでヒラヒラなのだよ。禅僧の服みたいでキレイー。

 画面の構図もかなり凝っている。印象的な場面では、人物の配置はもちろん明暗のバランスも宗教画を思い出させる美しさだ。キリスト教文化圏ではない私も思うぐらいだから、普段から宗教画に触れている人なら「アレに似てる!」ともっと判るかも。

 あと、宗教画といえばお約束がありまして。その約束事を知っとくと、さらに話が判ります。『差し込む光』や『鳩』は、全知全能の神を抽象するものだし。ただ、『亀』は分からなかった。是非に観ながら意味を探ってみるのも面白いかも。私、見終わってからググりまして納得しました。

 

 あと、最後に注目して欲しいのは『選出された新教皇が選んだ名前』。洗礼名のように新たに名前を名乗るお約束だけど、その場面に全てが描かれる。「実写化が許されるのは、そういう事かぁ」的な。映画では描かれない『その後』のストーリー、ヴァチカン側の希望、求める未来、そういうのが判ります。是非に見終わってから『名前』を調べてみて下さい。面白いよ。


 日本と同じく2000年以上の歴史と伝統と宗教を背負っている。アジア圏ではあまり実感ないですが、世界中に存在する教会から独自の情報網を持ち、欧米圏はもちろん世界中に実は大きな政治力を持っているヴァチカン市国。そのトップたる教皇。そんな世界を覗く映画です。お試しあれ。

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