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★家族構成の話

今更ですけど、サブタイトルの前に『★』がついている話は、内容がメタすぎておすすめできませんというつもりだったのですけど、今回はそれ以上(悪い意味で)の結果となりました。



「そういえばわしらの親って何してるんじゃろうな?

 見舞いにもこんし」


 絵里紗えりざが唐突に切り出した。


「いや、確か、第一部の『余命-20』あたりで元の絵里紗だった頃の記憶があるとか言ってなかったか?

 それにおそらく作中で描写が無いだけで、さすがに見舞いにはほぼ毎日来てると思うぞ?

 なんて言ったって、俺達は何時死んでもおかしくない病状だからな!」


 薫と絵里紗は何時死んでもおかしくない病状なのである。

 あらためて言うべきことでもないかもしれないが。

 こうして第二部が無事に連載されているのは、逆に言うといつの日かどちらかがくたばるまで話が進んでしまうという可能性を秘めている。デンジャーゾーンまっしぐら。


 それはそれとして、絵里紗の、もとい絵里紗と薫の両親についての話に戻る。


「じゃが……、薫とて両親、あるいは片方にでも見舞いに来られた記憶が残っているか?」


 薫は考え込んだ。

 というのも、作者が、その辺の設定をまったくもって考えていなかったので(今から考えるのデス!)作中人物である薫には、そういう記憶がないのが事実であったりするのであった。


「いや、ほら、そこ花瓶に紫の色のバラが添えられているし……。

 それっておそらくはどちらかの親なり家族なりが持って来たんじゃないか?」


「ほう、紫のバラとな……」


 絵里紗は花瓶に手を伸ばし、薔薇を取ろうとして、手が届かなくて諦めて、せめて匂いを嗅ごうとして、鼻に詰められたチューブに気付いて諦めた。

 ならばせめて、薔薇の美しさを目に焼き付けようとしたが、あいにくの高熱で目がかすみ、やっぱり諦めた。


「今調べてみると紫のバラの花ことばは……」


「誇り、上品、気品、王座、尊敬……」


「知っているのか? 絵里紗?」


「だてに、ガ〇スの仮面をたった数日で読破しておらんわい」


 そうなのである。突拍子もなく紫のバラというアイテムが出てきたのはここ数日でガ〇スの仮面を読破(49巻まで?)して、続きが気になってしかたない状態に陥ってたりするからなのである。誰が?


「ほんとに、マヤと真澄さんの恋はどうなるんだろうな。

 失明寸前のアユミさんのことも気になるし」


「脱線するでない! それにその薔薇は、儂らの親が持って来たものではないというのは儂にはわかっておる……」


「どういうことだ?」


 尋ねられた絵里紗は目をつぶり、空想にふける。


 母親とラーメン屋で住み込みで働いていた日々。

 演劇のチケットが欲しくて、大みそかの晩に年越しそばを100杯ぐらい出前した思い出。

 いざチケットが貰えると思ったら、いじわるなラーメン屋の娘にチケットを海に投げ込まれた、そしてそれを海に飛び込んでなんとか手に入れた思い出。

 月影先生に見出さされて演劇の道へと進んだ日々。


 それらはもちろん、絵里紗の体験ではない。というかガラスの仮面の1巻ぐらいのエピソードだ。


 だが、絵里紗の心は千の仮面を持つ天才女優のそれになっていた。


「その花は、儂のファンである紫のバラの人が贈ってくれたものなのじゃ。

 花言葉に秘められた『王座』こそ、儂の世界征服へと向けたあったかいメッセージなのじゃよ」


 このままでは話があろうところへ行ってしまいそうなので、ガラスの仮面関係のお話は全部忘れてください。

 ガラ〇の仮面がらみでなんかパロディやろうと思ったけど恐れ多くてできないそうです。単にアイデアが沸かなかったともいう。


「まあ、ラノベとかでよくあるのは、両親は転勤とかで居ないとか一緒に住んで居るけど影が薄いとかそういう感じだろうな。

 妹キャラとかなら需要はあるかもしれないが、親を出したところで誰も喜ばないし学園生活には関係ないからな」


「じゃが、儂らは読者ではなく当人なのじゃぞ?

 自分の親を決める権利ぐらいあってもよさそうなもんじゃが?」


「まあ、普通はそういう権利は発生しないが、俺達なら可能かもしれない。

 今ここで自分たちの両親がどんな感じなのかを考えれば、数話先にはそれに絡んだエピソードが……」


「儂の親はな、そう……。儂には親など居ない。

 儂は人工的に生み出された存在……」


「ホムンクルスとか、そっち系ってことか?」


「結構多いじゃろう? 親無しヒロイン。需要はたんまりじゃぞ」


「多過ぎて、ありきたりじゃないか? そして病院という設定を活かしきれていない」


「そこはそれ、病院だから、遺伝子操作で生み出されたとかそういうことも可能じゃろう」


「絵里紗お姉ちゃんに、遺伝子操作コーディネート赤子ベイビーキャラは譲れないね」


 突然会話に入ってきたのは最強の小学生キラくんである。

 キラくんの元ネタは某ロボットアニメの主人公パイロットである。

 遺伝子操作で生み出されたスーパーコーディネーターなのである。

 名前だけ借りただけで全然キャラは違うが。


 そしてキラくんはもちろん、そんな人工的に生み出された人間ではないが。


「むむ、予約済みであったか……」


「じゃあ、俺の親父は(モビル的な)(スーツ)の開発者ということにでもするか」


 薫がぽつりと呟いた。

 だが、キラくんが激昂する。


「ずるい! ずるいよ! お兄ちゃん!

 (モビルっぽい)(スーツ的ななにか)の開発者の息子なんて、初代、二代目と続く最高のポジションじゃないか!」


 突然、病室が激しく振動する。


「どうしたのじゃ?」


「まさか……。奴らに見つかった?」


 呟くキラくん。


「奴らとは誰じゃ?」


「詳しい話は後だよ!

 絵里紗お姉ちゃんも薫お兄ちゃんも早く車椅子に乗って!

 地下のシェルターに避難するんだ!」


 3人は関係者専用(院長とその他ごく一部の人間しか乗れない)エレベーターへと向かう。ちなみに、キラくん一人では車椅子一台しか押せないので、一台に絵里紗と薫の二人乗りである。


「これは、院長とその他ごく一部の人間にしか乗れないエレベーターじゃぞ?」


「確かに、これは院長とその他ごく一部の人間にしか乗れないエレベーターで、生体認証でロックを解除しないと動かないんじゃないか?」


「くやしいけど……、お兄ちゃんには院長とその他ごく一部の人間にしか乗れないエレベーターに乗る資格があるんだ。

 網膜パターンを読み込ませてみて」


 薫は言われたとおり、院長とその他ごく一部の人間にしか乗れないエレベーターの横に設置されたパネルに瞳を近づける。


『網膜パターン一致しました。

 認証完了。ロックを解除します。

 行先は地下一階、格納庫』


 機械音が告げる。


「格納庫じゃと……」


「薫おにいちゃん!

 奴らの目的は絵里紗お姉ちゃんなんだ。

 お姉ちゃんを護れるのは薫兄ちゃんしかいない。

 まかせたよ。地下へと行けばすべてがわかる。

 僕も援護するから……」


 キラは二人をエレベータに押し込むと、そのまま走り去った。

 彼は彼で、別のエレベーターから愛機の元へ向かうのだ。


 キラにとっても初出撃である。だがシミュレーションは十分にこなしている。

 性能に劣るキラの愛機でも、多少の戦力にはなるだろう。


 そうそう、すっかり説明忘れてましたが、病院は機械のような怪物のような巨大な奴らに襲われてます。

 機械なのか、怪物なのかはあんまりよくわかってません。


 院長とその他ごく一部の人間にしか乗れないエレベーターは地階で停止して扉を開く。


「ここが病院の地下?

 それにしてもずいぶんと深くまで下りたような……」


「それよりも、病院は大丈夫じゃろうか?

 院内学級の面々はちゃんと避難できたじゃろうか?」


「そこは看護師さんたちの誘導を信じよう。

 俺達はキラくんから言われたとおり……。

 えっと、なにするんだっけ?」


「鈍いのう、薫よ。

 こういう展開となれば、地下に最新鋭のロボット的なものが置いてあるのじゃろう。

 そしてそれに乗れるのは薫だけという筋書きじゃ。

 なにせ、薫の父親はそのロボット的なものの開発者じゃからの」


「お、俺の……父親が……開発者……。

 まさか、俺の親父はごく普通のサラリーマン的な……」


「息子にも隠しておったのじゃろうな。

 できれば巻き込みたくはない。それは親心じゃ。

 じゃが、敵の狙いはヒロインであるこの儂じゃ。

 退けんことには、儂の命が危ない」


「絵里紗を護る……。この俺が……」


「そうじゃ。何故狙われているのか?

 それは今は言えん。じゃがいずれわかるじゃろう。

 それまでには、何故狙われているかの理由がちゃんと設定されるはずじゃ。

 とにかく、今は儂の命が危ない。

 それだけしか言えん。すまんがの」


「だけど……。

 地下には来たけど、どっちに行けばいいのか……」


「薫にはわかるはずじゃ。

 どちらに進めばいいのか。

 目を閉じて考えてみるのじゃ」


 薫は目を閉じた。だがすぐに開いた。


「そうか! あの廊下で点灯している矢印のランプ!

 あの通りに進めばいいんだな」


「薫はここへ来るのは初めてではないはずなのじゃー。

 記憶は封印されておるが、その体験は奥底に眠っておろう。

 古き日の想い出を呼び覚ませばおのずと行く道は定まるはずじゃ」


「わかる。これっぽっちも古き日の想い出は思い出せないけれど……。

 あの矢印のランプが導いてくれる。

 そう……、まるで初めてラブホテルへ行ったカップルが、エレベーターを降りて部屋がどっちかわからなくなって気まずくならないように光るラブホテルの廊下にある案内のランプのように……」


 注:薫はラブホテルにはもちろん行った事ありません。あとラブホテルはちょっと前にはファッションホテルとかゆってたのが、今はレジャーホテルとか言ったりするようですね。

 

 薫は車椅子のタイヤを転がす。絵里紗がなにやら古き日の想い出が……とかぶつぶつ言ってるが気にしない。


 そして大きな扉の前に辿り着いた。


「この中に……一体何が……」


 薫は扉の横にあるタッチパネルを操作しようと手を伸ばした……。


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