1-5 初任務での話
あの日から数日後。新米のわたしは忙しい日々を過ごしている……かと思いきや、魔導士団は意外と忙しくない。これは勿論、アンクの経験談だ。
なんせ、こう見えてわたしは新米2週目だからね!
学業をこなしながら2年間。アンクとして魔導士団員の仕事をこなしてきたから!
そんなわけで、わたしは大手を振って入団したわけ。そうしないと、常に双子魔法を使うことになって、魔力量が多いわたしでも使いものにならなくなるからね……。
魔力大事、節約しよう。
「ファクティス団長。準備が整いました」
「……有難うございます。後のことはお願い致します、エルンスト副団長」
まだ太陽が顔を出していない早朝の少し前。
実は今日……大事な任務のため、騎士団が集まっている広場に来ている。この間、わたしたちが入団式をした場所だ。
きっとわたしの分身は今ごろ研究室で魔法石の加工をしているはず。
ふっふっふ……初歩的な知識も双子魔法にかかればお手の物。勿論、通常の分身魔法じゃこうはいかない。
わたしの指揮する魔導士団員は3人という小隊だ。魔導士は多いほど良いわけじゃない。任務の内容にもよるけど、前線で活躍するよりも主に後方支援。そもそもわたし以外攻撃魔法に長けた者が少ないのもある。
ルス団長以外の騎士団員は揃っているようだった。
「……まさか、魔導士団長になってから初任務が彼と一緒だなんて……」
いや、いずれかはその日が訪れる。なんせ、団長同士なのだから……。
でも、ちょっと早すぎないかな? 神様ならぬ精霊様の悪戯かも……。
まぁ、わたしはまだ精霊様にお会いしたことがないんだけどね。
本来なら魔法に目覚めた年で、『精霊の儀』って言うのを受けるはずだったんだけど……。
わたしの魔力量が尋常じゃなくて、たまにそう言った子供が発症する『魔力熱』に侵されて一週間生死をさまよったことでお会いできなかったんだ。
まぁ、身体的な異常もないから忘れられて現在を生きてる感じ。
太陽が顔を出し始めた頃。黒髪を揺らしてルス団長が現れた。彼は規定時間の30分前に現れるらしい。大きな組織をまとめる団長なだけあって準備も大変だろうからね。
それにしても、わたしよりも襟足が短くて寒くないのかな……。
本体のときのわたしは邪魔にならないよう後ろ髪を横にお団子で束ねているんだけど、アンクになると首元がスースーして、雪の降る冬は結構辛かった。
「……ファクティス団長。入団式での挨拶ぶりだな」
「ええ、そうですね。ご活躍は耳にしておりました。この度はどうぞ宜しくお願い致します」
わたしはアンクの姿でも誰に対しても敬語で話している。
なぜか?
墓穴を掘らないように!
ここ、一番大事だから。
敵を欺くにはまず味方からってことわざがあるように……一度始めてしまった人生ゲームは終わらない。
ちなみに、この世界にことわざがあるかは不明だけど。ゲームは『遊戯』って形で存在しているみたい。勿論、前世の記憶みたいなコンピューターゲームは存在していなかった。
ルス団長の姿を見た騎士団員は全員背筋を正して敬礼する。団員たちを鼓舞する軽い挨拶をして騎士団を先頭に歩き出したわたしたちが向かう今回の任務は――難度の高い『穢れ』の調査だった。
「……あの、ファクティス団長……」
たまに起きるアンクと団員の会話イベント。
「どうかしましたか?」
「その……今回は危険な任務だと思うのですが、僕なんかが選ばれた理由はなんでしょうか」
良くいる典型的な不安症。「僕なんか」って自分を否定してほしくはないんだけど……理由はちゃんとあるし、簡単なんだよね。
「勿論、選んだ理由はありますよ。貴方は少し慎重すぎる傾向がありますが、繊細な魔法を得意としていますし……新人を入れた60人の中で、5本の指に入る氷魔法を得意とした逸材だからです」
「え……そんな細部まで、見ていてくれたんですか?」
「無論です。付与魔法は繊細で、通常ですと半分以下の確率で失敗します。それを、貴方は半分の確率で成功させています。団員だけでしたら、一番でしょう」
「あ、ありがとうございます! 嬉しいです」
緊張もほぐれた様子の団員へ表情は崩さず、攻撃魔法についても教える。
わたしたちが向かっている場所は『灰ノ森』と呼ばれる、一度穢れによって火魔法で灰燼にした森だから。
実は、アンクが団長になってから、ルス団長と任務はしたことがありませんでした。
また、アンリはまだ18歳と若いですが、しっかり団長していたりします。




