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【完結】魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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2-48 最後まで鈍感な話

「ふう……今日の仕事終わったー」

「お疲れ様、ユウェール。付与の成功率も上がってきたんじゃないか?」

「そうだと嬉しいです!」


 わたしは先輩たちと他愛ない話をしながら工房(アトリエ)を後にした。腕を真上に伸ばして歩く長い廊下から見える外へ視線を向ける。


「良い天気……。今日は久しぶりに外食しようかなー」


 雲1つない青空に、太陽が眩しく輝いていた。あのデートからもう1週間も経つ。あれからもルス団長とは会ったら挨拶をしたり、会話を弾ませている良い関係が築けていると思う。

 こんな天気に、ご飯を一緒に出来たらなー。


「……アンクもだけど、ルス団長は特に忙しいよね。体壊さないで欲しいな」

「――〝ルス団長〟だと?」

「えっ……? ひゃあああ⁉」

「……急に叫ぶんじゃない」


 名前で呼んでるところ! 口に出てたの聞かれてたー‼


 心の中ではルス団長って、家名で呼んでないのがバレた……。確実に怒られる! 例え、他の団員よりも仲良くしていたとしても……。


 青ざめるわたしを見下ろすルス団長は空気を吐き出すように笑いがこぼれた。思わずハテナが脳内を巡るわたしは、理解できず頭を抱える。


「……お前なら別に構わない。その様子からして、職務は終わったのだろう? 今から少し付き合ってほしい」

「えっ――? あっ、はい! ですが、シャルール団長はお仕事では?」

「小休憩だ。少し前と比べたら最近はそこまで忙しくはないからな」


 わたしの脳内お花畑かな? って言葉が聞こえてきたような……。あと、またお前呼びに戻っちゃった。別にルス団長なら何て呼ばれてもいいんだけど。


 ルス団長のあとを追いかけてたどり着いたのは、以前アンクのときに訪れた温室だ。当然、誰もいない中、春先に咲くキレイな色合いの花を見る。


「うわー……この花、咲いたんですね」

「なんだ、知っている花だったか」

「はい! 春先に咲く『花蜜(ミエル)』ですよね? ピンク色で可愛らしい丸い花弁が特徴的で、根元の部分に甘い蜜も……」


 はっ! 思わず食い意地の張ったことを口走ってしまった。チラッと横目でルス団長を観察して目が合ってしまう。しどろもどろになって視線をさまよわせると、笑い声が聞こえてきた。口元を押さえて笑う姿に薄い唇を見てドキッとする。


 いやいや、違うから! 声を出して笑うルス団長は貴重だからであって、別にいやらしいことなんて考えてないから!


「君は本当に面白い女だな」

「えっ……そ、そうですか?」


 面白い女って、褒め言葉として捉えていいの……? それに、ルス団長がわたしを連れてきたのって、花蜜を見せるためじゃないよね?


「この花は、あの喫茶店で使われていたものだ」

「あっ! なるほど……」


 どこか懐かしい味だって思ったのはそういうことか。


 笑うのをやめたルス団長が一歩ずつ近づいてくる。あのときは、遮断魔法を使っていたけど今日はしていないから、聞かれてまずい話じゃないみたい。


 だけど、どこか真剣な眼差しに見える。


「君に大事な話がある。聞いて欲しい。結果がどうであれ、俺はそれを受け止める覚悟だ」

「えっ……」


 んっ? なんか、急に壮大な話のような気がしてきたぞ?


 ルス団長がわたしに大事な話って想像がつかないんだけど……。わたし、また何かやらかしたっけ。近い距離で立ち止まったルス団長を見上げる。わたしとルス団長は大体25センチくらいの身長差があった。だから至近距離だと首が大変なことになるくらい曲がる。


 そんなわたしの瞳を一身に見つめてくるルス団長の頬は少しだけ赤くなっている気がした。


「アンリシール・ユウェール。君のことが好きだ。急なことで申し訳ないが、俺の想いを伝えたかった」

「えっ――ええぇぇぇ⁉」


 思わず叫んでいた。


 嘘でしょ? だって、ルス団長はずっとアンクが好きだったはず! 女のわたしを好きになる要素なんてこれっぽっちも……いや、自分で言っていて悲しくなるし!


 呆然と立ち尽くすわたしの姿にキレイに整った男らしい眉を寄せるルス団長も良い!

 って、今はそういうことじゃないから!


 どうしよう……何か言わなくちゃ。


「すまない……驚かせるつもりはなかった」

「はっ、はい……。その、失礼ですが……シャルール団長はファクティス団長のことを好きでしたよね? わたしも何度か相談に乗りましたし……どういう心境の変化で?」

「ああ、そのことも話したかった。俺はずっとファクティス団長を好きだった。だが、君と関わるようになって俺の中で変化が起きた……。言葉にするのは難しいが……一緒にいると心が穏やかで、自然と笑うようになっていた」


 そう言われると、いつの日からかアンクと一緒にいるよりも、わたしといる時間の方が表情豊かだったような。恐れ多いけど、友達みたいな感覚だと思ってた。

 それに、ルス団長は浄化で自分を救ってくれたのがアンクだって思っていたし。あのときも、命がけで庇ってくれて……。ちょっと違うな。最初に庇われたのは、アンリ……分身のわたしだった。


「ファクティス団長に抱いていた恋心も嘘じゃない。俺は、同性を好きになってしまったんだと驚いたが……」


 もしかしたら、正直に打ち明けるのは今がチャンスなのでは? よしっ、罪の告白タイムだ!


「あの……実は、シャルール団長の想いへ応える前にわたしも1つ言いたいことがあります」

「なんだ? 神妙な顔をしているが」

「それ、多分わたしのせいです。アンク・ファクティスはわたしが生み出しました」


 ……ついに、言っちゃった。


 あっ、ルス団長の顔が干からびた白魚みたいになっていく。どうしよう……やっぱり、まずかったかな?


「あっ、あの……シャルール団長――ひょわ⁉」


 いきなり肩を掴まれて変な声がでた。

 

「――それは、本当か?」

「はっ、はい……! 今ここで、証明することもできます」


 これ、怒ってる……? えっと、まずは双子魔法のアンクを此処に呼んで……早く来てー!


 数分後。わたしの言うとおり姿を現したアンクに目を見張るルス団長の前で、魔法を解除してみせた。わたしの心臓は黒竜やオブセス最高責任者から生まれた魔物を倒したときなんか比べ物にならないくらいドキドキしている。


「――性別など関係ない。お前が好きだ」

「えっと……一応、わたしが本物です。なので、女です」


 それよりも、ある意味ルス団長はわたしに騙されたってことだけど。良いの⁉

 恋は盲目っていうけど、この人本当に大丈夫⁉ 騙したみたいなわたしが言うことじゃないのは分かってるけど!


「そうか……それで、返事は聞かせてくれるのか?」


 真剣な眼差しにわたしも精一杯応えないとね。


「はいっ! わたしも大好きです。シャルール団長……いえ、ルス団長!」


 満面の笑みで応えた瞬間、今度は肩を掴まれるでもなく勢い良く抱きしめられる。驚きで声が出せなくなるわたしを力強くではなく、優しく包み込んでくれるルス団長に思わず目を閉じていた。


「……今、とても幸せだ。まさか、君が俺を好いていてくれるなんて思っていなかった」

「ですよねー……。実はわたしも意識したのは少し前なんです……だけど、ルス団長はアンクが好きだからって」

「……すまない。しかし、本当に君の魔法だったから俺は好きになったのだろうか……」


 体を離すルス団長は不安そうな表情をしていた。きっとルス団長自身も性別なんて関係ないはず。ただ、何かのきっかけで好きになったのが同性だっただけだ。それを相手に受け入れてもらえるかは別な話だけど……。


「ルス団長は、大丈夫です。ちゃんとわたしを好きですよ? あーでも、BL展開でも私はまったく気にしませんけど!」

「……びーえる展開?」


 これもまた過去の記憶からの請け負いだ。男同士の熱い恋! わたしは嫌いじゃないんだなー。人それぞれだけどね?


 ルス団長は困惑した表情でわたしを見つめていた。これから、ルス団長ともっと楽しい日常を送れる気がする! 2人分、わたしのことを愛して欲しいな――。

アンリは相変わらずでした。そして、世間でもいつかに流行った『面白い女』二回目頂きました。

そしてルス団長も相変わらずの素直…いえ、ここまで来たら天然かもしれません。

騙されていたことは気にしない男の中の男ですね(違う)


これにて、完結となります。最後にエピローグを20時40分に更新します。

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