↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/50

2-45 ルス団長の話②

 あの日、ファクティス団長と秘密を共有したあと。少しの時間だけ外出許可を得て、ある場所へ向かった。

 巷で噂になっていた〝恋の相談室〟という、怪しげな場所へ向かうためだ。秘密裏に部下から聞いたところ、恋が叶うと有名なようで、一度話を聞いてみようと思った。


「あの反応は、悪くなかった……」


 ファクティス団長に耳打ちしたときの表情は、必死に感情を隠そうとしていた。

 それなのに、俺は――。


「2人の人間に同じ感情を抱いている……」


 思わず握りしめる拳で、王都にある魔法具店へたどり着く。当然、身分を隠すため普段ほとんど使わない変身魔法を使っていた。髪色はくすんだ灰色に、同色の瞳。見た目は派手じゃない方が目立たなくて、記憶も霞むはず。

 魔法具店が休みの間限定で行われている相談室。普段は開放されている戸の閉まった魔法具店に、軽く握った拳で叩いた。静かな室内から音が聞こえてきて、少しだけ戸が開く。

 その隙間から見えてきたのは暗闇に光る紫色の瞳――。


「な……」

「――あら? イイ男」


 ……魔物ではなかったようだ。


 いや、街中に魔物などいたら大問題だが。大きく戸が開いて、外の光が入ることで見えてきた人物は思わず見上げるものだった。


 デカい……。


 恋の相談室などというものだから、女性だと思っていた。同性を愛している身としては、悪い思考だったと反省する。それに、この人物は面識があった。


「……貴方はあのときの」

「あらら? アタシのことを知っているのかしらぁ? イケメンは一人たりとも忘れないんだけどぉ」


 まずい。今は変身魔法で姿を変えていることを忘れていた。一度咳払いをしたあと、人違いだったと誤魔化して本題に入る。


「その……此処で、恋の相談室を開いていると噂で聞いてきたんだ」


 彼女? の顔が明らかに変わった。まるで獲物を見定めるような狩人の目で俺を品定めしている。そのあとすぐ破顔して口元を隠した。


「ごめんなさ~い! まさか、こんなイケメンでも恋の相談をしにくるなんて思わなかったから。素敵な恋をしているのね! 是非、聞かせてほしいわぁ」


 元気に中へ案内されるまま暗く感じられた魔法具店に入る。思わず強張ってしまう体に気づいた様子の彼女は、魔導灯を点けてくれた。


「ごめんなさいねぇ? ちょっと奥で片付けをしていて、お店側は暗くしていたの。さぁ、こっちよぉ」

「あ……ああ」


 彼女に気づかれたかは分からない。だが、気遣いの出来る女性だ。しかし、ファクティス団長の任務を外から手伝っていた人物の1人……。変身して来て良かった。あまり深くは話さない方がいいな。


 魔法具店内を直進して連れて行かれたのは在庫が置かれた奥だった。中まで入って良いものかと思ったが、気にした様子もなく進んでいくと小部屋が見えてくる。俺よりも身長の高い彼女は腰を曲げて中に入っていった。


「ごめんなさいねぇ。頭、気をつけてぇ」

「有難う」


 勧められるまま女性らしい紫色で柔らかい生地のソファーへ座る。体が沈み込むと思わず腰を浮かせた。


「あらぁ。そういうソファーは初めてかしら? クッションみたいで、女子受けはいいのよねぇ。アタシたちだと体が沈み込んじゃって慌てるかもだけど」


 変身魔法を使っているため、俺の服装は団服で私服よりは重い。それに、相棒の愛剣も腰に添えている。向かいに座った彼女は魔導士団に入れるほどの魔導師ではないようだ。

 ソファーの前にある黒いガラステーブルへ両肘をついて何かを待っている様子に気づき、一度咳払いをする。


「それで、恋の相談だが……」

「うん、うん! なんでも話しちゃってぇ!」

「その、同時に2人を好きになった場合はどうしたらいいだろうか」


 明るい顔をしていた彼女が眉間にしわを寄せた。先程とは違い、腕を組んでブツブツ何かを言ったあと目を細める。


「同時に2人ねぇ……。その2人を好きになった理由は? 共通点とかあるのかしら」


 真剣な表情をする彼女に洗いざらいを話した。すると、急に表情を崩して笑うのを堪えているようだった。やはり、1人が同性なところだろうか……いや、彼女はそれを笑ったりしない方の人間だ。

 涙を拭う仕草をする彼女は息を整えて向き直る。


「大丈夫よ。多分、そのときが来たら相手から告白してくれると思うけど。同時に2人を好きになるのも理由があると思うの。まぁ、たまーに女をはべらす最低男もいるけど……あんたはその類いじゃない」

「……そうか。俺も誠実で有りたいと思っている。だから絞れるものなら1人に想いを告げたい」

「うーん……大丈夫なんだけど。そうねぇー。それなら、どちらとも話さない期間を決めて、先にどっちと話したいか直感で決めるのはどうかしら? 早く話をしたい方が本命よ」


 俺の心を見透かしたような助言で、胸のつかえが取れた。やはり彼女に相談して正解だった。

 思い返されるのは彼の無表情の中にある優しさや、好きなものに対する素直さ。彼女の太陽みたいな笑顔や明るさに幾度も救われた。2人の共通点は、魔法が好きなことだろう。


「あっ! あと、2人とそれぞれデートをするべきだと思うのよねぇ。一緒に居て、ときめくよりも素直になれる。自然体で居られるのが重要よっ」


 デートとは、逢瀬のことか……。2人で出掛けたことはあったが、あれを逢瀬と言うべきじゃないらしい。


 彼らと話せなくなるのは正直辛いが、それも一時のこと。27の堅物男が何を言っているのかと笑われるかもしれない。だが、どう転がったとしても、初恋に終止符を打つためだ。

まさかのルス団長が恋の相談です。

相手はクロエでした。そして、恋のキューピッドであり、女の勘が働く彼女はすぐに気づきましたね。

さすがです。二人の仲を取り持ってくれる協力者は彼女以外にいないでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。