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【完結】魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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2-44 人工魔石の話

 あれから議題で決まったのは「精霊様の案件は全て不問にすること」、「オブセス・エルンストに関しては人工魔石以外の問題を解決したことで合意」。そして、問題の『人工魔石』について――。


「脅威に変わりはないとして、騎士団の調査対象でも重要案件になりましたね」

「ええ、そうですね。シャルール団長は大変そうですが、頑張って貰いましょう」


 ラウム副団長と廊下で話しながらわたしは団長室へ向かっている。もちろん、自分のだ。

 ラウム副団長の処罰は当然何もなく、一族の間でもオブセス最高責任者の記録が抹消されたみたい。まぁ、お城の中でもひそひそ噂はされているけどね。


 本当、みんなそういうゴシップ好きだから仕方ない。


 そして、人工魔石のことだけど。精霊様は『取りこぼした』のをオブセス最高責任者のことだと言っていた。つまり、わたしたちが見つけた人工魔石以外は全て精霊様によって葬られているかもしれない。


「それでは、私は職務に戻ります」

「ええ。私が居ない間の指揮をしていただき有難うございました」


 ラウム副団長が居てくれたからこそ、魔導士団員は安全な場所から支援ができていた。わたしの分身も。

 窓から日が差し込んでいる部屋に入ってすぐ、机に積まれた人工魔石の資料を広げる。


 人工魔石がどれだけ作られたのかは分かっていない。当事者がもういないから、詰んでいるとも言える。

 精霊様が全て葬ってくれたかも本人から聞いていないから、必然的に探さない理由にならない。


「終わりのない探し物かな」


 我ながら厨二病的な発想が口からでた。魔法オタクのわたしは存在が厨二病だからね。資料を読み返して、見た目の特徴や危険性などを簡単にまとめる。これは王都から他の町や村に貼り出すチラシみたいなものを考えていた。


「よし、これでいいかな」


 机でペンを走らせて完成したチラシを眺める。こういうのは分かりやすさが重要だからね。完成した1枚を魔法で複製して仕事終了だ。


「それにしても、人工魔石の素材が〝魔力水と魔物の樹液〟だなんて。誰も想像しないよね」


 自然にできる魔石も空気中の魔力が結晶化したものって言われている。きっと、そこから魔力水に結び付いたんだ。だけど、自然の魔力と違って魔力水は放置していても結晶化なんてしない。だから、樹液なんだ。しかも、魔物っていうのが大きい。木や植物の魔物は数も少ないから量産は難しいかも。


「それでも、数が分からないからルス団長は大変そう……。わたしも何か協力できたら良いんだけど」


 騎士団と違って魔導士団は単独行動を禁止している。魔導士が貴重なのもあるけど、原則として騎士団員と2人1組だ。これは魔導士団長でもあるわたしも同じ。

 まぁ、全部職務中だけなんだけどね。


 誰もいない空間で思いきり天井に腕を伸ばしてから立ち上がる。最近忙しかったからね。午後から休暇だー!

 気配を消して部屋を出て、分身と合流したわたしは交換魔法(スイッチ)で外へ出る。今日は夕方にかけて雨予報みたいだけど、魔法の世界に傘はないみたいだから早じまいするんだよね。


「最近は雨も降ってなかったし、作物のためにある程度必要だからね」


 はねっ毛のわたしは雨の前から髪がぼふってなるから大変だけど、それで天気予報を予測していた。今日は、甘いものを食べまくって、大好きな魔法関連のお店に行くぞー!


 意気揚々と歩いていると、わたしの感知魔法がレーダーのようにある人物を捉える。艶のある黒髪に、紫水晶の透明な瞳。太陽の光によって輝いて見えるんだよね……。


「シャルール団長ー!」


 職務中なのは分かっていたけど、軽く挨拶だけでもと声をかける。わたしの声に反応した様子で視線が合った。それなのにすぐそらされて、まるで最初から気づいていないように歩いていってしまう。


「えっ……? 絶対気づいてたよね? なんで?」


 わたし、何かしたっけ。色々しでかしたり、隠しごとばかりだけど……。今まで無視されるなんてことはなかった。

 思考が停止して立ち止まった足が動かない。今日のことは、何かの間違いでありますように……。


 半日休暇を楽しめなかった翌日。わたしは悪夢を見ているかのように悩まされていた。


「なんで……? わたしが一体何をしたって言うのー⁉」


 城内でルス団長と遭遇して声をかける度、ことごとく無視された。目の前で声をかけて気づかないなんてアホなことはない! ルス団長と比べたら身長は30センチくらい低いけど、子供よりは大きいし!

 しかも、ありえないことがもう1つある……。


「まさか、アンクまで無視されるなんて……」


 わたしだけが無視されているのは確実だ。しかも、午後からアンクに変わって職務を全うしていた団長室で、まさかの報告も。


「え? 今なんて言いましたか?」

「は、はい……。シャルール団長から、言伝を預かりまして。『今後は、副団長を介して話をしたい』とのことでした。期間は数日らしいです」


 待って。副団長を介して話すの? しかも、数日って何?


 アンクの姿だったのに、衝撃が大きすぎて放心してしまった。当然、ラウム副団長に心配されたけど、わたしの頭はルス団長でいっぱいになっていた。

 ラウム副団長は人工魔石の件で忙しいからだろうと慰めてくれたけど、別な問題だと思っている。


「……わたしの固有魔法も秘密にしてくれたのに」


 その翌日から、よそよそしさを感じた気がする。部屋でまた1人になったあと、わたしは頭を抱えたのだった。

攻めた感じのルス団長から一変して危うい空気満載です。

一体、ルス団長に何があったのでしょうか? 私はすぐ結果を知りたい人間なので、ズルズルと引きずることなく。次回、判明します。

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