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【完結】魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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2-43 世界の理の話

 反射的に横を向くと、ルス団長の視線が重なる。少しだけ考える仕草をする精霊様は、首を上下に動かした。


「貴方達が気になっていた、子供の件ですか」

「さすが精霊様はご存知でしたか」

「私に知らないことはありません」


 キレイで怖い精霊様だ……。本当にこの世界を作ったんだって理解する。

 淡々と話すルス団長も凄い精神力。さすが、わたしと違って国に忠誠を誓っているし、色んな苦難を乗り越えてきたんだ。


「属性の相違。あれは私が書き換えました。人間は繁殖力も高く、数が増える一方。それでいて、精霊の力を行使出来るのです。多少の作為は必要なこと」


 思ったとおり、黒幕は精霊様かもしれない!


 もっと秘密にされるかと思っていたらサラッと話してくれて、まさかの事実も知っちゃった……。これは知らない方が良かったかも。


「まさか、精霊様によって属性魔法の制限をされているとは思っていませんでした……」

「貴方達の言葉で言うのなら、これはまだ良い方です。私が顕現した目的は争いを生む元凶として、全ての人間を消す予定でしたから」


 やっぱり黒幕だったー! しかも、最初の人が間違った行動してたら消されてたー!

 話を深堀すると、顕現した際に精霊様を怖がることなく受け入れて、崇めたらしい。それを見た精霊様はただの戦闘民族じゃないと思ってくれて、様子を見るために教会を作らせて管理することにしたんだって。


 最初の人グッジョブ!


「では、私が5属性全てを扱えるのは……」

「まさか、精霊の儀を行わない者がいるとは思いませんでした。盲点と言うのでしょうか」


 精霊様の言葉がちょっとだけ砕けてきた気がする。こんなに人間と話したことがないみたい。魔力量が多い人間は覚えられる属性も多いみたいで、それを取り除くのは難しかったんだって。


「それで俺も4属性を扱えるわけか……」


 ルス団長には光魔法を覚えさせてあげて欲しかったよ……。


 聞いてはいけない世界の理を知ってしまったわたしたちは、墓まで持っていくことを決めた。こんな話が出回ったら、わたしたち人間は確実に破滅する……。

 なんせ、戦闘民族だからね!


 話が終わったと察した精霊様の姿が薄くなっていく。


「精霊様、有難うございました」

「謝意は不要です。これは貴方達2人への褒美なのですから。これからも、人間達を見定めさせてもらいます」


 完全に消えてしまった精霊様に、肩の力が抜けたわたしは思わずため息を吐いた。

 

 だけど、それだけじゃ終わらなかった。


「ファクティス団長。精霊様は、貴方達(・)と言わなかったか? 俺と貴方が共にいて、精霊様とお会いしたことはないはずだが……」


 あっ……。まずい。そんな些細なことなんて気づかなかったよ。


 当たり前だ。人間の魔法で、世界を作った一柱の精霊様は騙せないよね……。

 一度はバレても良いって覚悟を決めたはずなのに、いざ知られるかもしれないって思ったらまだ誤魔化していたくなる。

 全部、わたしの傲慢(エゴ)だ。


 言い訳が思いつかずに黙ってしまったわたしに、ルス団長は切なそうに笑った。


「生きていたら隠しごとの1つや2つあるものだな。俺も、貴方に言えない恥ずかしい話もある……」


 あっ……。きっと、暗闇が怖い理由だ。あと、なぜかルス団長が口元を押さえて目をそらす。わたしが首を傾げると「すまない」って体を縮ませちゃった。

 わたしが謝ることはあっても、ルス団長が謝ることなんてあったかな?


 わたしたちは少しの間、街の騒音を聞きながら無言でお城の中へ戻った。


 翌日。確実に問題視されるだろうわたしの固有魔法について、なんの沙汰もなかった。黒竜から、オブセス最高責任者のことがあって平穏とはいえないけど……。


 ばったり廊下で出会ったルス団長に呼ばれてそのまま団長室へ足を運ぶ。


「貴方も気づいただろうが、固有魔法のことは誰にも話していない」


 やっぱり。


 基本的に固有魔法は報告義務がない。そのため、わたしのように隠している人や、単に言わないだけの人が多いんだ。

 ルス団長に促されてソファーへ座ると、対面へ腰をおろした紫水晶の瞳が覗き込んでくる。横に垂らした気怠そうな腕。一重で切れ長の瞳なのに長い睫毛。男らしい薄い唇が色っぽいんだよねー。


「それはなぜですか? 固有魔法は国に所属する私達でも報告義務はありませんが、聖女のいない国で浄化は重要です」


 自分でいうのもなんだけど。


「それは分かっている。だが、貴方も分かっていて隠していたのだろう? 俺は、それが悪いと思わない。聖女の大変さは噂程度で聞いているしな」

「有難うございます。これで、穏やかに過ごせます」

「魔法だろう? 王立図書館に良く通っている姿を見るからな」


 見られてた! 感知魔法を使っているはずなのに、全然気づかなかった。さすがルス団長……。急に前で手を組むルス団長が、呼びかけてきたから顔を近づけた。


「……どうかしましたか?」

「――これは、俺達2人だけの秘密だな……」


 団長室は遮断魔法で秘密の話を普通にできる。それなのに、小声で耳打ちしてくるルス団長に、わたしは顔が真っ赤になりそうなのを必死に堪えた。

この世界を創った創造主の精霊様にも臆さないルス団長の精神力は本当に凄いですね。

そして、最後にルス団長の可愛らしい行動が爆発しました。

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