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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-3 招聘された話

 分身による魔法は当然だけど威力が半減する。また、魔法を使うための魔力を補っているのは双子魔法だ。

 つまり、使いすぎると体を形成していられず飛散してしまう。


 魔法を扱える数は残り2回。放った水流は防護もせず軽く躱されてしまった。


 さすが元魔導士団長のラウム副団長……。王国に所属出来るほどの魔導士は少ないから、団員の中に複数名、元団長や副団長がいるんだよね。


「……新人にしては上々。けれど、この程度じゃないはずだ。本気を出せ」

「……本気、ですか?」


 まずい……とてもまずい。

 試験当時は当然だけど、わたし本体で受けたから中級魔法を使ったんだった。


 なんて指示を出そう。


「その……選ばれると思っておらず、コンディションが悪くて……初級魔法しか」


 すごい、嘘っぽい言い訳!

 

「なるほど。貴殿は首席合格をした身……選ばれる可能性があることを念頭に置くことだ。今後も何が起きてもいいよう準備は怠るな」

「はい!」


 え? 許すの? 思ったよりもチョロい……。


 最後にラウム副団長の初級の風魔法を防いで、わたしの仕事は完全に終わりを迎えた……。


 はずだったのに――。


 時は少し進んで、王国騎士団の宿舎。超絶イケメンを前にしているわたし。

 なぜか団長室に連れ込まれ、ルス・シャルール団長と対峙している……。


「――あ、あの……すみません。どうして、魔導士団所属で新人のわたしが……ル……シャルール団長のお部屋に……」


 あっぶない……勝手に下の名前で呼んでたから、呼びかけた。


 ふんぞり返ることもなく、対面の黒いソファーへ座る顔の整ったイケメン、ルス団長。少しだけ釣り上がった紫水晶(アメジスト)の瞳は一重だからか不機嫌に見える。

 魔導士団長アンクのときは全然気にならなかったのが嘘みたい。


 シーン……。


 お願いだからなんか言って!


 縮こまるわたしは出されたお茶も飲めず青ざめた顔をしていると思う……。


 模擬戦のあと。わたしの指示で魔導士団員は集まって宿舎へ行く予定だったのに……。

 少しだけ親しげに話をしていたら、急に声をかけられて今に至る。


 実際は、自分に自分が話しかけているという不毛さだったのに……。

 さすがに双子魔法で話をするとボロが出そうだったから……お花摘みで、アンクから入れ替わっている。


「――ファクティス団長とはどんな関係だ」

「え……?」


 うわー……。やっぱりアンクの話題かー……避けて通らせて。

 これはまさしく、嫉妬なのでは? 乙女ゲームでいうところのフラグ? ちゃんとやったことないけどね。


 ポカンとしてしまうわたしに気づいたらしいルス団長は真剣な表情のまま話し出す。


「……新人の貴様と親しかったこと。彼が陛下に直訴して、今期から女魔導士を加えたこと。これらについて、貴様は何か聞いていないのか?」

「えーっと……」


 うん? これはやっぱり……嫉妬か。でも、髪と目の色について聞かれなかったな……。意外と似てなかったり?


 つまり、あの告白は本心……。だけど、返事を求めずわたしにこんなことを聞いてくるってことは……。


 独り言で確定。


「聞いていません……。ですが、ファクティス団長のおかげでわたしも入団出来たので、とても感謝しています」


 よし、ここで親しい関係かってことは伏せよう。後々、アンクとして仲良しアピールする予定だったし。


 でも問題はルス団長が許してくれるか……。あー……眉間に皺が寄っていく。だけど、イケメンってどんな表情でも――推せる!


 ただ、残念だけど……わたしはルス団長を好きなわけじゃないんだけどね!

 個人的な会話らしい会話もしたことなかったし……。


「……そうか。急に呼び出してすまなかった。戻ってくれ」

「は、はい……失礼しました」


 やっと解放されたー!

 最初はどうなるかと思ったけど……。案外早めに折れてくれたな。

 でも、これですぐに仲良しアピールしたら……また呼び出されるよね?


 ルス団長が本気だってことは分かったけど……。

 いやー、わたしは同性愛とか理解あるけどね? 寧ろ……おっと、これは秘密の花園だ。


 現実は身近にいなかったから、あくまで創作内の話だけど……。今回みたいに自分が生み出した架空の人物であるアンクも、悩む! 人と深く関わらないように、無愛想キャラを演じていたからなぁ……。


 お陰で、『氷の人形』なんて二つ名を得たよ。


 わたしは一礼してからルス団長の部屋を出て、自問自答する。


「……そもそも、アンクだって仕事以外でルス団長との接点なんてあったかなー……」


 これも良い機会かもしれない。わたしとルス団長の出会いについて。

 一つ一つ思い出してみよう。


「……そうだ。確か、初めてまともに会話したのって……いつものルーティンで、わたしが王立図書館に行ったときだ」


 あれは約数ヶ月前。なぜか、わたしの範疇を超えた大事件が起こった数日後……。

 ばったり鉢合わせたんだった。

この世界のイケメンはチョロい人が多いかもしれません。

それとは別で、嫉妬満載なルス団長です。彼は意外と猪突猛進かもしれません。

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