1-2 入団式での話
雲一つない早朝。お城の庭園でも、色とりどりの花が咲いていた。
王城の広場で集まった新人騎士団員は100人以上。対して10人も満たない魔導士団員で、女はわたし1人……。
わたしは知っている。
……これが――紅一点!
心の声で叫ぶ。思わずわたしに反応して、分身が喋りそうだったけど、なんとかセーフ……?
だけど、男のわたしが頑張って門戸を開いたのに、まだまだ道のりは長いみたい。
「おい、出てきたぞ」
「すげー……」
10人と少ない白い軽装の鎧に青いペリース姿で現れた騎士団員の中に問題のルス団長がいる。それから、その後ろを歩く魔導士団長のわたし……。
鴇色の短髪をなびかせている青年。此処にわたし以外の女がいたら、黄色い声が飛んでいそうだ。なんと言ってもルス団長がイケメン……。別にわたしはイケメンが好きなわけじゃない。
そう。魔法が正義! 恋愛は二の次だ。でも……目の保養は悪くないからね!
――もうちょっと、髪の色とか変えるべきだった?
深く考えていなかったわたし……兄弟か親戚に見える。
先ずは王国騎士団の代表であるルス団長の話から始まり、次に魔導士団長のわたしの番。
「――今年は初めて女性団員も入団したようで、私の願いを聞き入れて下さった慈悲深い国王陛下へ感謝致します。この国でも魔法を扱える者は多いですが、中級以上を扱える者は少ないです。それでも、此処に集まって下さった貴方達を歓迎致します。共にセフィド王国を守護して行きましょう。私からの言葉は以上です」
よし……しっかりと言えた!
これで今日の任務は終了したも同然。あとは、私の分身に指示するだけ……。
男のわたしと同じ鴇色の髪をして、前髪の少し伸びた巻き毛を弄っている女の子。それが本来のわたし、アンリシール・ユウェールだ。
女ってだけで白い目を向けられるわたしは、後ろの髪も1つにまとめて左側で団子にしている。まぁ、基本的には後方支援が魔導士だから前線に立つことは少ないけど……。
身だしなみは男女関係なく必要だからね!
そして、わたしの取っておきが今の現状。あそこにいる女のわたしは魔法で作り出した偽物だ。と言うより分身?
このときのためだけに2年間頑張って極めた究極形態!
その名も『双子魔法』……。一般的には『分身魔法』だけど。極めた者の特権ということで命名!
自分の魔力で瓜二つの形を作り出す魔法。本来は弱い魔法で、攻撃を受けると消えるし、距離が離れるほど操るのが困難になる。
そして、一定距離離れると魔法効果が失われて消えるんだけど……。
わたしの場合は膨大な魔力のおかげで24時間なら消えないし、長距離からでも指示出来る優れもの!
ちなみに指示は頭の中でする『念話』みたいなものかな。
「……悪くない」
そのあと、各新人団員の代表2人が挨拶を述べて話は終わる。実は魔導士団員で成績のトップだったわたしが本来やる予定だったんだけど……さすがにそこまでは不安だったから辞退した。
上の人も初めての女で、男を負かして挨拶をするのは気にしていたらしく、ローブの中でガッツポーズしてたのをわたしは見逃していない。
「……あの女の子が首席合格って聞いてたけど」
「マジかよ……。まぁ、女ってだけで扱いがなぁ」
わたしを哀れむヒソヒソ声よ。大丈夫……わたしは堅っ苦しい挨拶とか苦手だから!
そのあと、騎士団員だけは軽く模範試合をするんだけど……なぜか、それが魔導士団へ変更で、新人代表がわたしになってる⁉
あー……女が珍しいからかな? 周りを見ても当然、わたし1人しか居ないからね。
だけど……自分同士で模範試合は無理だよ?
さすがのわたしでも、動きながら指示を出すのは想定外だから!
「――エルンスト副団長。この模範試合は貴方に任せます。女性だからと言って手加減は無用ですが、傷はつけないようにお願いしますね」
「ハッ! かしこまりました。彼女は今年の入団試験で満点以上の成績だったと聞き及んでおります故……全力で行きます」
え……? 全力はやめてもらっても良いですか?
防護魔法を重ね掛けしていると言っても全力は御法度だよ⁉
「……程々にお願いします」
わたしの言葉まったく聞いてないよね? 颯爽と向かっていったよ!
ラウム副団長は元団長ってこともあって実力は勿論、真面目だから……。裏目に出たよ。
とにかく防御に徹するよう指示を出して、あとはお祈りしかない……。
かみさま、仏様〜。
さすがに即興で早着替え~みたいなのは無理だからね?
「僕は魔導士団の副団長……ラウム・エルンスト。お手並み拝見させてもらう」
「……わたしはアンリシール・ユウェールです。副団長の胸をお借りするつもりです。宜しくお願いします」
「それではまず、貴殿の実力を見させてもらおうか」
まさかの魔法を使うなんて思わなかったけど、これも想定内!
防護魔法は勿論。攻撃魔法も初級はいくつか扱えるように準備してきたからね!
「……いきます!」
本当に、ここまで完璧な双子魔法はないでしょ。
言葉を話せて、魔法も詠唱出来る!
ふっふっふ……これが魔法オタクの真髄だ!
分身は懐から小さな枝を取り出した。入団した新人や見習い魔導士は黒いローブに団服姿をしている。
分身が反対の手をかざした瞬間。上部が三日月型をした100センチほどの杖へ変化する。素材は木で出来ていて、ねじり鉢巻きみたいな見た目。でもって、三日月の中心には星形の魔法石がぶら下がっている。
この魔法石は術者の魔力量を減らす役割や、魔法力を底上げしてくれる働きを持っているの。
魔法石によって使い方や役割が違ったりするけど、それは追々で……。
「空気中の雫よ集い、一点に放て――水の精霊!」
杖先に集まった水の塊が水鉄砲のように前方へ飛んでいった。
狙うはラウム副団長の腹部!
この世界で属性魔法の呪文は『精霊の名前』に固定されている。
それが何を意味しているのか、魔法オタクなわたしは完全に見落としていた……。
双子魔法は本当に便利です。属性魔法の呪文はいくつも覚える必要がないのも良いですね。
そして、ルス団長は男らしい美形です。目の保養は大事ですからね。




