2-36 自己肯定感の話
わたしたちは速やかに集まって緊急会議を行った。まだ遺体がお城に運ばれていないから、詳しい話は出来ないけど……。
「一報からして、第三者の介入はあると考えている。ただし、人工魔石を作るくらいの男だ。自決なんて真似はしないだろう」
ルス団長……カッコいい!
「私も同意見です。研鑽を重ねてきて漸く成功したのですから、国に追われていたとしても自決はないでしょう」
人工魔石を作り始めたのが、姿を消したあとだとしても――。
自己肯定感が高い人間は自決なんてしない!
そのあとも、これからについて話し合いを重ねて数時間。ようやく解放されたわたしは再びルス団長と一緒にいた。
なぜかはお分かりだろう……。
そう! 嫌がるルス団長をファロス隊長のところへ連れて行くために!
「他の検査結果はいかがでしたか?」
「ああ、異常なしだ」
「やはり、そうですか……。それでは行きましょうか」
あっ、また険しい表情になった。だけど、イケメンはどんな顔でもカッコいい……合掌。
嫌がるルス団長を甘い声で誘い――ただの声かけだけど。恋心には素直なルス団長を連れて、再び王国調査部へ足を運んだ。
「シャルール団長は自己肯定感が高いと思われますか?」
わたしは検査を受けるルス団長に先ほどの話を振る。困惑顔のルス団長は、魔力測定機に手を触れていた。
「いや……なんの話だ?」
まぁ、そうなるよね。
魔力測定機は魔力の流れを調べるものなんだけど、通常は青く光っていて、魔法干渉で赤く色が変わるんだ。
但し、通常の測定機じゃ人間の魔法しか感知できない。つまり、ここにきた理由はただ一つ。
「シャルール団長は堅物剣聖と呼ばれていますが、私は違うと思っています。ですので、もっと貴方のことを知りたいと思いまして」
「な……そ、それはどういう意味で」
あっ、赤く光った。
ルス団長はなんかモジモジしてるけど、わたしと同じくファロス隊長も存在しない獣の耳を立てる。
「ルス! これ、精霊サマと同じ反応だよ!」
興奮するファロス隊長から、犬みたいなモフモフまで見えた!
真剣な話。やっぱりあのセレナさん――精霊様だ!
なんで精霊様が地上でキレイな女性になっていたのかは分からない。だけど、精霊様の魅了魔法なら合点がいく。属性魔法は1つだったとしても、わたし達みたいに無属性を使えてもおかしくないし。
でも、わたしを見ておかしな顔をしていたし……ルス団長の魔法が解除されて驚いていた気もする。
魅了魔法は女性や恋をしている人に効きづらいとか?
「ファロス隊長。魅了魔法の特性で精霊様なら魔力の高い人間を陥落させられるなど可能でしょうか」
精神干渉系の多くは魔力量で勝敗が決まるんだ。
「うーん……分からない! だけど、地上で精神サマに敵う人間はいないと思うけどねー!」
「そうですか……私達は精霊様から恩恵を授かっていますからね」
いや、待てよ?
精霊様の恩恵が教会での〝精霊の儀〟なら、わたしは? 何食わぬ顔で5属性なんて使ってるんだけど?
「――精霊の儀は、精霊様の天啓だと思っていましたが、属性を知る以外で他にありますか?」
「いや、何もない。だが、本当にあれが精霊様なのか……」
わたしだって、ただの貴族令嬢だと思ってたからね。でも、この季節で貴族令嬢なら、あの白いワンピースはないか……。
「ですが、目的はなんでしょうか。シャルール団長を魅了して国の内部調査……」
「一番可能性があるのはオブセス・エルンストだろうな」
精霊様はこの大地も創世されたって言われている。
「人工魔石で新たな生物を作り出したことが要因でしょうか?」
逆鱗に触れた……みたいな?
「可能性は高い」
「オレもそう思う! 精霊サマについては何も分かってないからねー!」
分かってないのに根拠はどこからきてるんだろう……。
そのあと、待ちに待ったオブセス最高責任者の遺体が運び込まれた。
お城の裏手にある遺体安置所へ運ばれて、ルス団長の計らいで調査部代表としてファロス隊長も参加している。
わたしも間近で遺体を見るのは初めてだけど、なんて言うんだろう……。
過去の記憶で言うところの『ミイラ』みたいだった。
「顔が痩けて誰だか分からないくらいだな」
「異常なほどやせ細っていますね。血や肉、臓器などはどうなっているんでしょうか」
「……貴方は死体の内部が気になるのか」
あれ?
もしかして、引かれてる?
でも、死因を解明しないとだし! 必要な情報だと思う。
「いえ、そのような好奇心などはございません。全ては死因究明のためです」
「そうか……なら良いんだが」
少し間があったような……。
死因の特定は難航しているみたい。まさかの体内魔力までごっそり失われているなんて。
最後の頼みの綱で、ファロス隊長が持参した魔力測定機を死体の指に触れさせた。
「あ! 反応あり!」
「つまり……」
「犯人は精霊様ですか……」
その場にいる全員が言葉を失う。
例え王族であっても殺人は見過ごせない。だけど、それがわたしたちの信仰している精霊様だったら……どうしたら良いの?
二人の息もぴったりですね。そして、ルス団長は嫌なことに対しては子供っぽいかもしれません。
そこも私としてはギャップ萌えです(死語?)




