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【完結】魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-32 芽吹いた話

「なんで……分身から伝わってくる熱が、全身を駆け巡ってる⁉」


 待って……。


 抱きしめられてるの、わたしじゃないから! 分身から伝わってくるルス団長の体温だから!


 ちょっ……自分で言っていて、体温とか生々しくない⁉


「……絶対、顔も赤くなってるはず……」

『ファクティス団長、さすがだ。やはり力を隠していたな』

『え……いえ、そのようなことはございません。シャルール団長のお陰です』

『いや、先程より硬化していたぞ』


 言い訳をさせてー!


 ハッ! そうだ。


 魔法のが利きやすくなってたとかいうベタな展開で! 人工魔石が体外へ出たことで、肉体も消滅したし……物的証拠はない!


『魔法が利きやすくなっていた手応えもあります』

『そうか……なんであれ、助けられた』

『いえ、私の部下を救って下さり有難うございます』


 ここで一芝居打とう!


 急に後ろへ倒れるアンリを抱きとめるルス団長が焦ってる。ごめんね……気絶の演技だよ。


『シャルール団長、彼女をお願いします。後処理は私がします』

『わ、分かった……後は任せる』


 うはー!


 ルス団長……お姫様抱っこなんて、大胆だよ! なんでか、わたしが照れるんだけど……。


 さっきから口角がおかしいし。これじゃあ、ルス団長がアンクのわたしに向ける感情と同じじゃ――。


 〝同じ〟……? いやいや……まさかね?


「えっ……わたし、もしかしてルス団長のこと――」


 アンクのまま両手で頬を押さえるわたしは戦慄した――。


 数日中に落ち着きを取り戻したお城では、討伐した黒竜と、人工魔石のことで連日会議が開かれている。


 先ずは首謀者であるオブセス最高責任者を探し出して捕らえること。それから、人工魔石を発見するための魔法具が出来て見つけ次第、破壊することに決まった。


「やっと解放された……」


 わたしはアンクのまま自室に戻ってベッドへ倒れ込んだ。魔法オタクなだけが取り柄のわたしにとって、会議は頭から煙が出そうになる。


「複雑なことは分からないんだよー。魔法なら分からないなりに勉強するんだけど……」


 残念ながら、わたしは頭が良いわけじゃない。ただ、純粋に魔法が好きなだけなの!


 それに、問題がもう1つある……。


「……わたし、ルス団長のこと……す、すき……なの?」


 そう!


 一番の問題だ……。クロエにも、ルス団長のことは恋愛対象じゃないとか……今は魔法だけとか言ったくせに。


「この体たらくだよ……」


 いや、恋愛が駄目とかじゃないんだよ。わたしも、恋する乙女な年齢だしね?

 そうじゃなくて……。


 恋敵――いや、違う。


「……アンクとわたしがライバル? なんか、ややこしくなるー!」


 これは三角関係というやつでは?


 えーっと……。

 アンクをルス団長が好きで、わたしはルス団長がすき……。つまり、一方通行!


「……これは、もうクロエの『恋のお悩み相談』で聞いてもらうしかない! 笑われても良い! きっと『予想してた通りね』とか言われるだけだから!」


 わたしは鼻息を荒くして部屋を飛び出した。もちろん、アンクの表情は仮面を貼り付けて。


 アンリに戻ったわたしはそのままお城を抜け出して、クロエのいる魔法具店へ向かった。今日は非番だったから、会議が終わったら外へ行く予定だったんだ。


「はぁ……もしかしたら、ワンチャン勘違いってことも――ないかー」


 自分の気持ちを否定するのは良くない。


 わたしは気合を入れて前を向く。だけど、考えごとをしていたせいで、急に横から出てきた人を避けられずぶつかった。


「あっ……ごめんなさい!」

「――いえ、こちらこそ……」


 小鳥のような声に少しだけ上を向く。


「うわっ……」


 思わず声に出てしまうほど、キレイな人がそこにいた。


 モデルさんみたい……。


 腰まである藍色の髪が太陽の光でキラキラしながら風でなびいていた。目の色はもっと深い青で、戸惑った視線をしている。


「あっ、どこかお怪我とかされていませんか?」

「……はい、大丈夫です。それでは(わたくし)は……」


 走るでもなく優雅に立ち去っていく女性を見送った。


「……本当に、キレイな人だったなー……ああ言う人の方が、ルス団長とお似合いだろうなぁ……」


 白いワンピースなんてわたしには着られない! だけどこの季節だと、ちょっと寒くないかな? って無駄な心配をしたけど……。

 クロエも「女はお洒落に命を懸けてるのよ」って言ってたからね。


「冬の季節とか、寒いのに外套の下は薄着だもんね……」


 主に貴族の女性だけど。


 わたしも一応は貴族だけど……絶対しない。貴族令嬢として一生を終わらせたくなくて、魔導士団に入ったのもあるし!


 まぁ、8割は魔法のためだけど……。


「よし、気を取り直してクロエのお店に行こう!」


 わたしは再びルス団長のことを考えながら顔を熱くした。

はい。アンリも頭は良くないようです。それなのに、団長していて凄いですね。

私だったら頭から湯気が出て卒倒しています。


そして、ついに? アンリもイケメンだと思っていただけのルス団長に…。

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