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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-29 秘密の話

 2人を連れてお城に行き身分証を見せたあと、待合室のような場所で待機する。

 小さな小屋みたいなところが入り口すぐにあって、一時的に国民を収容する場所らしい。


 お城についてから一切しゃべらず、縮こまる2人へ笑顔を向ける。


「大丈夫だよー。お城の人は怖くないからね。多分、あなた達の話を聞く人も優しいはずだから!」


 あれ? 白い目を向けられてる……。わたしってそんなに信用ないかな。


 わたし自身も誰が来るか分からない中で、体感10分くらい経過したときだった。外で待機していた騎士団員の様子が代わり、大声で挨拶する。それに子供たちもびくっと肩を揺らした。


「あっ……」


 わたしは、優しい人を撤回しないといけないかもしれない……。


「お前か……」

「あはっ……シャルール団長が自ら事情聴取ですか?」

「重大なことだと聞いたからな。まぁ、良い……それで、問題はその子供たちか?」


 ルス団長が子供たちに視線を向けた瞬間。「ひっ!」という短い声がする。


 うん……。気持ちは分かるよ。イケメンだけど、強面だし一重だからね。

 蛇に睨まれた蛙? なるほど。


 ここはお姉さんが大人力を見せるとき!


「はい。青い服を着た子供が10歳になってすぐ、魔法を発現したらしいのですが、火魔法だったんです。ですが、精霊の儀を行いましたら風魔法だったようでして……」

「なんだと? 属性が違う……」

「はい。それで、赤い服の子供と少し揉めまして、その際に服の袖を炎で燃やしました」

「火魔法を使ったと? そんな話、聞いたことがない……」


 固まった子供たちも辛うじて首を上下させていた。さすがのルス団長でも知らない事象らしい。


 わたし達だけでは解決できず、かと言って教会はマズい気がした。だけど、そんなときに頼る部署はある。


「シャルール団長……子供たちはどうしましょうか?」

「2人ともに安全な処置を施して返す」


 まさか、記憶を消したりしないよね? あれは安全な処置じゃないから。


「ファクティス団長を呼んできてくれ。……記憶の上書きを頼む」

「……は、はい」


 記憶の上書きなら安全だ。記憶を消すのでも失った空間に仮初の記憶を加えるんだけど、一旦消す作業が脳に悪いって言われてる。

 対して記憶の上書きは隠したい記憶をそのままにして、上に別な仮初の記憶を乗せる感じ。これの欠点は何かの拍子で再び記憶が戻るかもってところかな。


 わたしは急いでアンクのいる団長室へ向かう。そして、当然双子魔法で入れ替わり2人して戻った。


「ファクティス団長、急ですまない」

「いえ、話は彼女から伺いました。お二人共、私の目を見てください」


 わたしは子供たちに声をかける。素直な子供たちはアンクのわたしに見惚れているようで、目が合った瞬間、魔法を唱えた。


「――記憶操作(メモワール)


 2人が喧嘩していた理由を属性魔法だけど、属性の相性の悪さに置き換える! それでもって、お城に来たのは迷子だったのをわたしが連れてきたから!


 王都は広いから大丈夫なはず!


「置き換えました。城へ来た理由は迷子にしましたが、問題ないでしょうか」

「大丈夫だと思います!」


 一人二役だけどね!


「感謝する。騎士団員に親への連絡を頼んだから、あとは任せよう」


 子供たちが記憶の上書きでぼんやりしている間に、わたしたちは移動する。もちろん、アンリのわたしは知らないふりをしてついて行く。


「どこへ行くんですか?」

「行けば分かる」


 やっぱり女のわたしには辛辣だ。アンクがいるからかな? だって、相談に乗ってあげてるし……アンク(わたし)の。


 よし。自分で分身へ助け舟を出そう。


「貴方は知らなくても仕方ありません。これから行くところは、教会を管轄している部署です」


 完璧だね!


 精霊様との橋渡しである教会は大事だけど、民営? みたいなものだから。目を光らせる必要から出来た部署が、『王国調査部』!


 そのまんまだけど、主な調査対象が教会だ。精霊様はわたしたちに魔法って奇跡を与えてくれて、道まで示してくれている。だからその存在を悪用されないように管理しているんだ。


「ですが、私達の言葉をお聞き下さり、顕現しているのは〝たった1人の精霊様〟なのですよね?」

「ああ。最初に人間の前へ姿を現した精霊……『プリンシピオ』様を祀って教会が出来たと文献にあった」

「わたしも会ってみたいな……それで、沢山魔法のお話を聞かせてほしいです!」


 オートモードにしているせいで、分身が自由にわたしを演じている。まぁ、指示を出してるのはわたしだけど……。


 それにしても『プリン』て美味しそうな名前……。おっと、不敬罪になっちゃうかも。


 アンクであるわたしと、ルス団長が口をつぐむ。

 そのあと、分身ではないわたしだけが見てしまった。


 ルス団長の笑いを堪えた横顔……。


「話をしている間に着いたようですよ」

「ああ、そうだな」


 普段一階しか歩き回らないわたしは、いつの間にか上っていた二階の端っこで止まる。


 そして、変哲もない扉向こうから賑やかな声が聞こえた。

とても明るいアンリですが、子供たちの信用は勝ち取れませんでした。

ですが、イケメンだけど強面なルス団長が来たことで、アンリの株が上がったようです。

ごめんなさい。ルス団長……。

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