表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
23/46

1-22 恋は盲目の話

「もう少し奥へ行ってみましょう。岩の魔物は岩山とかだし」

「うん、そうだね! 鉱山の魔物はいてもネズミ系か、コウモリかな?」


 実は魔物と動物が混じってる場合もあって厄介なんだよね。

 群れる生き物だからか、全然気づいていないし、魔物が襲わない理由も分からない。


 奥に行くほど狭くなる道幅で、わたしは掘られていない壁を触る。


「ねぇ、クロエ。ここの壁、薄くて壊せるかも」

「え? そうなの?」

「うん。なんとなく壊したら崩れる場所とそうじゃない部分があるんだよね」

「……アンタ、鉱母になれるわね」


 鉱父ならぬ鉱母って……。


「いやいや、ならないし! そもそも、恋人だっていないからね」


 誰かの母へなる前に、結婚しないとだよ。


 冗談を交えながら、わたしは触れた壁の一部を凍結させる。

 万一のため、この方が安全に破壊できるから。


「それじゃあ、アタシに任せて? ちょっとは役に立ちたいしねぇ」

「気をつけてね!」


 一歩離れたわたしと入れ替わってクロエが氷壁の前に立つ。

 そして、身体強化で拳に魔力を纏わせた。


「ふん!」


 一呼吸置いて振り抜かれた拳は氷壁を容易く破壊して、砕けた壁が周囲へ散らばる。


 そして、壁の向こう側が見えた。


「さすが、クロエ! カッコいい」

「そこは美しいって言ってほしいわね?」


 洗練された拳の動きを褒めてほしいみたい。クロエらしくて笑っちゃった。


 背後の魔力も一瞬だけ乱れたけど、まだ声をかけてくるつもりはないみたい。


 気にせず壊れた壁向こうへ一歩踏み出した。


「新しい道じゃなくて、空間だったね」

「そうねぇ。あら? あそこ、何か光ってない?」


 新しい空間の中に入ると薄暗くて目を凝らす。

 クロエが指差す方を見ると赤く光を放って見えた。


「もしかして……」


 怖がることを知らないわたしは光魔法で周囲を明るく照らして平然と近づいた。

 そして、わたしの仮説を証明してくれる()()を見つける。


「……赤い魔石?」

「クロエ、他言無用でお願い――そこに隠れている魔力の人もね?」


 ここまできたら、こちらから話しかける以外ないだろうと振り返った。


 少しの間、沈黙していた魔力の正体も観念した様子で姿を現して2人して目を丸くする。


「えっ……」

「あらぁ。想像してなかったわ」


 黒髪に紫水晶のような透き通った瞳が睨みつけてくる。

 クロエの紫色の瞳より薄く感じる一重。


「――ファクティス隊員、これは一体どういうことだ?」


 なんでルス団長がいるの⁉


 しかも、なんだか普段と様子が違ってソワソワしているような……。


「えっと……」

「それから、ファクティス団長ともう1人の女性はどんな関係なんだ」


 そっち⁉ 思わずクロエを見る。


 クロエは口元を押さえてだらしない笑顔を隠しているのが分かった。さすが恋愛脳!

 この場合、どっちもかな?


「はじめましてルス・シャルール団長サマ。アタシはクロエと申します。王都で魔法具店の看板()をしています」


 表情を隠したクロエが丁寧な挨拶をする。さっきの姿と別人だ。

 少しの沈黙後、ルス団長も再び口を開く。


「魔法具店のクロエか。自己紹介は不要のようだが、名乗っておく。王国騎士団長のルス・シャルールだ。それで、お前達はどうして鉱山に? しかも、その魔石は……」

「あっ……はい。ある方に極秘で頼まれまして……」

「まさか……」


 あえて名前を告げないルス団長を良いことに、わたしも小さくうなづいた。


 極秘として部下や一般国民に頼むことは実際もある。

 本来は魔法の契約書で縛るんだけど、わたし本人だからそんなものはしていない。


「……辻褄も合う。話は分かった。それで、どんな依頼だ」


 辻褄って言うのはルス団長が店でアンクを見失ったことかな?


 極秘は契約書的に例え国王陛下であっても外部へ話せないのが常識なんだけど。

 わたしを試してる?


「すみません。シャルール団長でも詳細は……目で見て判断してもらう他ありません」

「当然アタシも知らないで付いてきてるわ」

「ああ、そうだな。それなら俺も同行させてもらう」


 まさかの強強イケメン団長が仲間になっちゃったよ。


 これが恋? クロエが延々と話してた『恋は盲目』ってやつか。


 ……わたしも恋したら、もっと強くなれるのかな?


 それにしても、薄明かりで見えるルス団長の顔色が悪いような……。


「それで、例の魔石を発見しました」

「ああ……まさか、魔物以外でも……」


 言葉を濁しているルス団長に耳を傾ける。


 見た目は青い魔石のようにキレイだ。魔物の魔石とは違って見える。


「これがねぇ……でも、どうやって調べるの?」

「見つけたら回収するように言われたけど……」


 見つけたら、その場で成長を促す魔法を施して観察する予定だった。


 ルス団長の手前、そんな高度の魔法は使えない。


「きっと彼がやろうとしていたことは分かる。俺が代わりにやるから、お前達は少し離れていろ」


 さすが、愛だね!


 ん? 愛と恋って、何が違うの?


 わたしの頭が別なことで埋まる中、赤い魔石に近づいていくルス団長は剣を抜く。


「うふふっ……。まさか、団長サマの魔法を間近で拝めるなんて、役得ねぇ」


 わたしは数回見てるよ。


「――成長促進(グロース)


 これは土魔法と風魔法の合わせ技。俗に言う『複合魔法』だ。


 ――ドクン。


 そんな音が聞こえた瞬間。


 赤い魔石は強く光だして周囲を覆い尽くした。

鉱夫ならぬ鉱母の才能があると言われてしまうアンリです。恋人すらいなくて『母』になってしまいました。全ては魔法の力ですけどね。

『カッコいい』より『美しい』と言われたいクロエ。彼女っぽい言葉です。

そして、やはり尾行していたのはルス団長でした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ