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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-20 黒い土の話

「そうなの! クロエ。わたし、アンクのこと相談されちゃった」

「え? 詳しく聞かせてちょうだい」


 職務上、詳しくは話せないけど、ちょっとしたハプニングが起きたこと、わたしの姿でルス団長の愛馬に乗ったことを話した。


 そして、いつの間にか距離が近くなって……。男女の友情って成立するの? いや、わたしたちは上司と部下みたいな関係だ。所属は違うけど。

 それに……。あれはもう、アンクのことを好きだって宣言しているようなものだった。間違いない!


「そんなわけで、最後に『お前は俺の味方だろう』って言われたの……」

「――それは、もう。好きだって宣言してるわね。キャー! 素敵ぃ!」

「本当にクロエは恋バナ好きだよね」

「当然でしょー! 恋バナほど魅力的な話はないわ」


 断言された……。


 でも、クロエは自分の恋を諦めてるって言ってたからなぁ……。だから全力で他人(ひと)の恋路を応援してるみたい。


 実はここだけの話し……。

 クロエは魔法店が休みの日に此処で『恋のお悩み相談』なんてことをしているんだよね。

 しかも、反響も良くて片思いだった女性の多くが恋を実らせているって言うんだから。


 ――恋のキューピッドだ。


「ただ、ルス団長の恋路は応援出来ないわよねぇ……。全ての初恋が実るわけじゃないけど、切ないわぁ」


 なんかチラッと意味深な視線を感じる……。

 アンクはわたしが作り出したけど、わたしはそう言うのじゃないからね⁉


 翌日の早朝。予想どおり、再び円卓の間に集まって朝から会議をしていた。


 それはもちろん、黒い土の正体が分かったから……。

 まさか、あんな危険なものだったなんて――。


「それで、黒い土について1から説明してもらおうか」


 静かな室内で、ルス団長の低音で落ち着きのあるイケボが響く。


 わたしはアンクの言葉で分かったことを1から説明した。


「つまり、あの黒い土は()()と言うことか」

「はい。成分は他の土と変わりませんでした。ですので、サンプルとして保管していた灰ノ森の枝と分析比較しましたところ、一致しました」

「今も騎士団員に調べさせているが、黒い土が周囲に影響を及ぼしているきらいはない」


 そうなると、黒い土はあの足跡の竜種だよね? でも、そもそも動物が穢れたことで魔物は生まれたわけで……。


 ――穢れって、何?


「もしかしたら、動物が穢れたことで生まれた魔物とは違うのかもしれません」

「ファクティス団長。それは、別な要素で生まれた魔物ということですか?」

「はい。原因は穢れですが、赤い魔石に何かあると思っています」


 そう。赤い魔石と穢れ……。魔石は魔物になって初めて体内で作られる鉱物みたいなもの。心臓の代わりとも言われている。


 実は鉱山とかでも魔石は取れるんだよね。


 ――もしも、魔石が生き物を生み出せるとしたら?


 魔法とは違うけど、ちょっと真相が気になってきたよ。


 そのあとも会議は続いて、わたしは密かにあることを決意した。さすがに、思いつきだけで騎士団は動かせられないからね。


「……確か、アンクの休みは近かったはず。王都から近い鉱山に行こう。アンクのままは危険だからまったくの別人に変身して……」


 アンリとして部屋に戻ったわたしは、お風呂を浴びてから机の前で頭を悩ませていた。


 それから数日経ってアンクの休日が来る。普段は双子魔法で自室に籠もらせてるんだけど、今日はアンリとして動かしていた。


「よし、完璧。付与魔法は基礎じゃないから失敗しかしないだろうから、ひたすら回復薬作りだ」


 純度は低いけど、魔導士なら誰でも使える基礎魔法だからね。

 ちなみに、回復薬って言うけど光の回復魔法じゃないよ。自然治癒力を増幅させてくれる薬草と純水を混ぜたものに魔力を注いで作ってるの。


「そうだ。確か、クロエも休みだったはず!」


 アンクで自室を出るとそのまま城から堂々と外へ出た。

 それをある人が見ていたなんて思いもよらず――。


 アンリは城にいるから変身を解くことが出来ない。そのためわたしはお店に入ったと見せかけて、別人に変身した。


「よしっ。これで完璧だ」


 どこにでも居そうな大人の女性。本当は男性にしようかと思ったんだけど、アンクで疲れてるから……。クロエならわたしだって分かって驚いたりしないはず。

 ちょっと後ろから誰かの魔力を感じるけど……。

 そのままクロエの家へ向かった。


 そこはクロエの勤めている魔法具店。実はその2階に住んでいる。なんせ、この魔法具店はクロエの実家だからね。


「……うーん、魔力は感じるけど微力だし、誰か分からないのがなー」


 感知魔法は周囲の魔力を感じ取れる便利なものなんだけど、それ以外分からないのが難点だ。


 まぁ、城から付けてきてるから多分悪いものじゃないはず。だけど、アンクとわたしが同一人物だってバレるのはまずい。


「クロエー! いるー?」


 しかし、わたしはコソコソ隠れている魔力を後回しにして叫ぶ。

 するとすぐに2階の窓が開いて薫衣草(ラベンダー)のような艶のある髪が現れた。

 心は女子の中の女子なクロエだけど、髪はうなじまでない短髪なんだよね。


 だから、たまーに男前の台詞を言われてドキッとしたことがあったな。


「魔法具店の横から入ってちょうだい」


 クロエは何も聞かずに横の階段を示す。

 魔法具店の中からでも2階へ上がれるけど、店の奥に入らないといけないから外からだ。


 階段を上っていくとクロエが開けてくれたからそのまま中へ入る。

 当然、外の魔力は動かず監視されているみたい。


「いらっしゃい。()()()

「よくこの姿で分かったね? さすがクロエ、わたしの大親友!」


 わたしは監視する魔力のことを忘れて、ルス団長よりも背の高いクロエに抱きついた。

恋バナに目がないクロエです。一番キャラが立っているかもしれないクロエですが、彼女も色々考えているようです。

だけど、ルス団長という前例? もあるので、頑張ってほしいものです。

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