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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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19/30

1-18 名台詞の話

「いたたっ……」

「お前は何をしているんだ」


 呆れ顔で紫水晶の瞳が向けられる。


 ルス団長のせいですからー!


 と、叫びたいのを我慢して心で叫ぶわたしは伸ばされた手を眺める。

 実は黒い手袋を嵌めているルス団長なんだけど……。


 その手袋が……手首までじゃないんだよ。ハーフ・パーム・グローブって言う、魔法みたいな名前なんだけど。


 手の甲が見えてて……ちょっと、大人の階段登りそうになる!


「あっ……すみません。有難うございます……」


 しかも、僅かに見えてる手の甲が、スベスベしてそうで……。女のわたしより。いや、ルス団長は美形とか女顔じゃない疑いようのないイケメンなんだけどね。


 くわえて、しっかり男らしい大きな手なんだけど。アンクと比べたら全然。


 じっと手を見てしまっていたわたしに気づいたルス団長が怪訝な顔をする。


「俺の手に何かついているか?」

「へっ? い、いえ! とても素敵な手袋だなーと!」


 あー、わたしの馬鹿! ストレートに言っちゃったよ。


 離れていく手を見つめて沈黙しちゃったし!

 男の人って服装とか、装備を褒められるのってどうなの……?


「……そうか。手袋をほめられたのは初めてだ」


 あ……そっちでしたか。


 それより、どうしてルス団長が? わたしと別れてから体感1時間くらい? 仕事中のはずだけど……。


 思わず見つめていた視線に気づいたらしく、腕を組むルス団長は長机を見ていた。


「仕事から戻ってきた際に、図書館へ立ち寄ったんだ」

「そうだったんですねー……ハッ! これは、その……」

「隠すことはない。俺の妹もそう言う本を好んでいた」

「えっ……? シャルール団長、妹さんがいらっしゃるのですか?」


 これは初耳! 初情報!


 とても気になる……あ、なんでか曇り顔になった。


「えっと……」

「ああ、すまない。最近、ファクティス団長の影響で……妹もお前のように魔導士団へ入ると言っているんだ」


 これは、まさか……。


 ――妹さんに嫉妬?


 罪な男アンク……はい、生み出したのはわたしです。ごめんなさい!


「あー……そうなんですね? ちなみに、妹さんのご年齢は?」


 よく、女性に年齢は御法度って言うけど大丈夫だよね? これは世界共通認識。


「15だ」

「あっ……わたしより3つ下」

「そうか。まだ学生だから良いものを、将来が心配でな」


 ルス団長……年の離れた妹さんを心配してなんて素敵なお兄さん。

 堅物剣聖のイメージがボロボロ崩れていくよ。良い意味で。


 わたしがニコニコしていると少しの間を置いてから、視線をそらしたルス団長は咳払いした。


「その……妹も読んでいる本は、実践としてどうなんだ」

「へっ……? あー、この本ですか? 実はわたしも今読み始めたばかりでして……どちらか言うと、男性向けの本でした」

「男性向け?」

「はい。男性が女性にしてあげたい助言を書いてくれています」


 また沈黙するルス団長。この人、可愛すぎないか? やっぱり心配になるレベルだよ……これが、庇護欲?


「やはり、男性から女性が一般的か……」


 あっ……。これは、同性同士は使えないのかって話だ。

 正直、人によるよねー。


 女でも興味ない人もいるわけだし。アンクなら……氷の人形が邪魔をする。


 いや、その前に……。万一良い仲になるってことはだよ。イコールわたしなのでは?


「あー、でも……ファクティス団長なら、氷細工とか喜ぶ気がするなー」


 わたしの馬鹿! パート2。


 アドバイスしてどうするの……。でも、素直にわたしがルス団長の作る氷細工を見てみたい。


 繊細代表の付与を固有魔法で持つくらいだから、絶対細かい作業とか得意そう……。


「……氷細工か。それなら、練習台として付き合ってくれないか?」

「へっ……? えっ⁉ 良いんですか⁉」

「お前は俺の味方だろう」


 いつの間にか味方まで昇格してたー!


 まぁ、一緒に馬も乗った仲だからね! はい。わたしの遅刻です。ごめんなさい。


 さすがルス団長……侮れないよ。正体がバレないよう気を引き締めないと。


「座って見ていろ」


 さっき盛大に転けたのを心配してくれてるみたい。

 だからその優しさは好きな人()()に見せてあげて。


 長机を挟んだ向かい側に立つルス団長が色気の化身である手袋を外した。


 ――()()()()


 ここ、重要だから。


 片手だけでみるみるうちに形作られていく氷細工。これは……。


「あっ! 黒馬くん」

「……黒馬君? もしかしなくても、俺の愛馬のことか」


 ハッ! わたしの馬鹿……パート3。


 思わず心の中で勝手に名付けた名前を!

 見た目だけで呼んでる名前だけど!


「す、すみま」

「フッ……お前は面白い女だな」


 ――面白い女?


 面白い女認定されちゃったよ⁉ 確か、これも前世の記憶……。


 でも、笑い声が――神。


「俺の愛馬はシュヴァルツだ」

「わー! 素敵な名前ですね」


 そのまんまだー。ルス団長も案外わたしと変わらない性質なのでは?


 でも呼びにくいから……心の中では『黒馬くん』で!

手袋を褒める女アンリ。これは私の趣味も含まれているかもしれません。

そして氷細工。お祭りの出店とかで見たガラス細工が、とても綺麗でした。

但し、子供の私には高級すぎておねだりも出来ませんでした。

王道展開パートいくつかの『面白い女』です。え? 王道じゃない? 古い? 知らない子ですね。

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