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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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18/30

1-17 妖精の話

 持ち帰った黒い土に関しては未だに不明で、魔法に関わるものじゃないから興味を惹かれなかった。


「魔法は好きだけど、その物質とかは興味ないんだよね」


 きっと近いうちに結果が出て、また会議漬けになるはず……。その前に、やりたいことをやるぞー。


 王立図書館までの廊下で誰とも会わなかったわたしは、静まり返った部屋に足を踏み入れる。

 王立図書館は扉もなく開放されているんだよね。だから、より広く感じられる。


 3メートルを超える巨大な本棚が並んでいて、1番奥に地下の扉がある。魔力認証でしか開けられないから、基本的に壁のオブジェだ。


「……白壁に白い扉だから溶け込んでいるよね」


 思わず独り言を呟いていたことに気づいて口を押さえる。

 キョロキョロ辺りを見回すけど誰もいない。


 わたしは深く息を吐き出してから妖精に関する本を物色する。


 この時間は本当に静かだなー。騎士団員は外で仕事だろうし、魔導士団員は工房(アトリエ)で引きこもってるはず。もちろん、仕事で。


 基本的に魔導士団が外で活動することは少ないからね。

 だから家の両親も魔導士団員になることを許してくれたし!


 まぁ、条件に『討伐に参加しないこと』って言われてたけど……。無理だよ。わたしが貴族令嬢でも、公爵レベルじゃないとね。子爵程度じゃ到底無理。


「……さて、ここに座って読みますか〜」


 寂しくて独り言……。だって、今お喋りしたくて仕方ないんだもん!


 さてと、気を取り直して……。妖精の本だとこれが1番有名なんだよね。


 『妖精伝説』。


 この世界で妖精が起こしただろう数々の事象が書かれた本だ。

 その中で、図書館の妖精がある。有名な本で書かれているのに、精霊様と置き換えられた理由は分からないけど……。


 ページをめくる音だけが響く室内で、妖精伝説を読み始めてから視線を感じる。

 魔法じゃない……存在自体が視覚できないように隠蔽されている感じ。


 図書館の妖精は本好きで、騒がしくする人や本を雑に扱う相手を懲らしめたりする。最初は見えないから幽霊扱いされて、怪奇現象なんて言われたこともあったみたい。

 それから伝説に入った理由は本好きな人へ、とっておきの本を選んでくれるから。


 もちろん、今まで読んだことがなくて見つけられなかった本。これだけ本が大量なら中々ね?


 誰も見たことがない図書館の妖精……。


 ――会ってみたいな。


 わたしが心の中でそう呟いた瞬間。結界へ包まれたときの感覚に、音を立てて立ち上がる。


「――誰かいるの?」


 ()()()()()しかいない室内で見えない誰かへ声を投げた。


 反応があるかは期待していなかったけど、なくても構わないつもりで。


「えっ……?」


 再びシーンと静まり返った中、再び椅子に座って続きを読もうとしたときだった。


 一番上の棚が眩しく光を放ち、思わず目を覆う。

 それは一瞬のことで、気づいたら仄かな光を感じて手をどけた。


「……本が、光ってる?」


 そこでわたしは思い出す。図書館の妖精について。


 とっておきの本を選んでくれる話し。


 白く光る分厚い本を手に取る。普通なら誰もが躊躇して悩むことをわたしはしない。


 なぜなら、それだけの魔法(ちから)は持っていると自分を信じているし、そのための努力もしてきたから。


「あっ……光が消えた。えっと……タイトルは『恋の魔法』――?」


 恋の魔法って……。わたし……だけど、わたしじゃないアンクとルス団長のこと⁉


 うわー! 図書館の妖精凄すぎる。此処から見えるものなら把握してたり?


 だって、ルス団長と王立図書館で会ったのはアンクが団長になってお披露目前だけだったし……。

 本来のわたしは会ってないからね。そもそもルス団長が図書館に来るってイメージも……。


 さすがに頭の中で思ってることは分からないよね……?


 あ、でも。魔法が好きだったよね。うーん……さすがに本で調べるまで好きとは限らないかぁ。


 わたしなんて仕事の合間でも来てたしなー。


「そして、この本はいったい……」


 恋の魔法。親友のクロエなら知ってそうだな。でも、せっかく図書館の妖精さんが選んでくれたとっておきだしね。


「えっと……ありがとう!」


 わたしの反応を良しとしたのか、結界が消えた。

 図書館の本は持ち運び禁止だから、此処で読む以外ない。


 再び椅子に座って1ページ目をめくる。恋の魔法ってだけあって、魔法書自体も中心にハートが描かれていて可愛らしいんだけど、1ページ目を開いた瞬間わたしは目を丸くした。


「……これ。飛び出す絵本式⁉」


 飛び出したのは幻影魔法みたい。表紙のハートが脈打つみたいに浮かび上がっている。


「すごい……」


 こだわり半端ない!


 これを書いた魔導師は恋に振り切ってる人だね!


「あ、文字は次のページからか」


 1ページ目には飛び出したハートと別で概要が書いてあった。


 そして、この時点で1つ分かったことがある。


「――恋の魔法ってタイトルだけど、みんなが期待するだろう恋を魔法でどうにかする本じゃない!」


 人の心を魔法でどうにかするのは犯罪だし、フェアじゃないからね!

 まぁ、そういう犯罪も後を絶たないけど……。


「恋のアドバイス本って感じかなー?」


 ただ、どっちか言うと男性向けかも? 2ページから見ていくと、シチュエーションのために効果的な魔法とかが載ってる。


 女の子は綺麗なものや、派手なものが好きだったりするから。


「氷細工とかも神秘的で、繊細だからいいね……」


 魔法は繊細なものから派手なものまで多岐に渡るからね。

 わたしは派手なものより繊細な方が好きだなー。


 例えるなら、ルス団長の剣術みたいな感じ?


「……水をまとった剣技はカッコ良かったなぁ」

「――水を纏った剣技だと? お前、ファクティス団長から聞いたのか」

「えっ……?」


 静かだった室内で聞こえてきた最近とても良く耳にするイケボ。

 横を向いてすぐ、整ったイケメンの顔へわたしは派手に椅子から転がった。

見えない妖精さんの登場です。会話もしないけど、妖精とかいいですよね。

今回は軽い話なので、深堀などはしていませんが『恋の魔法』とは意味深です。

そして、ヒーロー登場という王道展開は続く。

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