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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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17/31

1-16 亜種竜の話

 この大きさってまさか……。


「竜だな」


 やっぱり!


 竜っていうのは元々この世界にいる魔物の1つ。

 滅多に遭遇することはないんだけど……。


「この爪の形や足跡の大きさからいって、間違いはないだろう」

「えっ……そんなことも分かるんですか?」

「ああ、竜種は滅多に姿を見ないからな」


 なるほど!


 さすがにわたしは図鑑でしか見たことないけど……ルス団長は竜種と戦った経験もあるのかな。


「……それから、土が黒く染まっているな」

「えっ……? あっ! 本当だ……なんか、ゾワゾワします」

「良いものではないな」


 わたしたちは足跡の形状や、長さなんかを測ってから、ガラス容器で土を採取して一度お城へ戻ることになった。


「良くやった」

「あ、有難うございます! 偶然ですけど……」

「ところで、これとは別に1つ聞きたいことがある。城へ戻って支度を済ませたら団長室へ来てくれ」

「えっ……分かりました……」


 最初に呼び出しを食らったときみたいな、とても嫌な予感がする!


 お城に戻ったわたしは荷物を置いてから、ルス団長のいる団長室へ向かった。


「ううっ……気が重い」


 どうせアンクの話でしょう……。今日、先輩たちにもその話をされたし。

 入団式で呼び出されたのが懐かしいなー。


 団長室の前に来て一度深呼吸してからノックする。

 すぐに中から返事がして扉を開けた。


「失礼します……!」

「そこに掛けてくれ」


 またあの黒いソファーだ。

 わたしが腰を掛けると、厳かな椅子に座っていたルス団長も立ち上がって対面へ座る。


 そして、流れる沈黙――。


 呼び出したんだから、任務のときみたいに喋ってよ!


「――以前も聞いた話だが。今度は明確に仲の良さを聞いた」

「へっ……? あー……ファクティス団長ですか? そうですね。ですが、男女の関係ではありません!」

「そ、そうか……。その、おかしいことを重々承知の上で聞く。ファクティス団長は、どんな人が好みなのか知らないか」


 …………キター‼


 というか、ストレートで打ってきた! そういうところがルス団長の良いところだね!


 だけど、正直言って――可愛すぎるよ。

 わたし、心配……。


「ファクティス団長の好みですか? そうですねー……男女間の話は聞いたことありませんが、女の勘としては――自分の芯を持っている人だと思います! あとは……あ、魔法じゃないですか? わたしも魔法が大好きなので、良く話をしていますし」


 思わず、恋のキューピッド的なことを長々と語ってしまった。


 ルス団長の反応はー……うん! 顎に手を当てて考え込んでいる。


 そういう何気ない仕草すらイケメンがやると違うね!

 それに、やっぱり睫毛長いし……一重だから、キツイ顔に見えるけど。


 拝みたくなる。


「……参考にする」


 素直可愛い! いや、年上に失礼だぞ……。


 そんなやり取りを小一時間したわたしは解放される前に、爆弾を投下された。


「ユウェール団員……。その、また話を聞かせてくれないだろうか」

「へっ……? あっ、ああ! 勿論です! わたし、シャルール団長のこと、応援してます!」

「え……」


 いや、投げられた爆弾を撃ち返したのはわたしだ!

 何かを言いたそうなルス団長を振り切って、わたしは逃げるように寮へ走る。


「ふう……今日は討伐任務だったから、午後は仕事がないんだよね」


 さてさて、ルス団長の想い人。アンク(分身)は今何をしているのかなー?


 この時間なら団長室にいるはず。双子魔法って本当に便利。ただの影魔法だったら、こうはいかないからね。


「ふむふむ。しっかり仕事してるね! それじゃあ、わたしは王立図書館に行きますか!」


 この()()のためだけに魔法以外の勉強も頑張ったからねー。


「あ、そうだった……。王立図書館はお城の関係者に開けた場所だけど……。()()は団長と王族しか読めないんだった」


 つまり、計画とズレた魔導士団長は良かったってことかな?


 休みの日を利用して禁書を読み漁ろう。


 でも、禁書が置かれた場所は王立図書館の地下にあるんだけど……。

 確か、試練なんてものがあったはず。団長になる前から王立図書館へ通っていたお陰で、前団長から聞いたんだった。


「――図書館の精霊様による魔法試練」


 でも……精霊様って、属性持ちだけだよね?

 図書館の精霊って何?


 妖精なら分かるんだけど。精霊様の眷属みたいなもので、色んな姿をしていて、人間のわたしたちよりも強い魔法力を持ってるんだよね。


「確か、妖精は属性とか関係なかったはず……。王立図書館でもう一度調べてみよう」


 わたしは他の人がいないことを感知魔法で確認しながら独り言を呟いている。

 だって、口に出して喋りたいんだもん!


 あー……友達が欲しい。前世の記憶を持つわたしを理解してくれて、魔法が大好きなオタク!


「まぁ、そんな好条件な人はいないよねー。今度またクロエに話を聞いてもらおう!」


 クロエは恋バナが好きだからねー。ルス団長の恋路は邪魔しないし、言い触らしたりもしない。わたしは本当に良い友達を持ったよ。


 このときのわたしは、とても良い物件がすぐ近くにいることを思いつきもしなかった。

アンクと仲が良いと噂を流したので、二度目の呼びだしをされちゃいました。

本当、行動的な団長様です。

しかし、少し口ごもる姿は可愛くないですか? 可愛いですよね? 同志は私と握手。

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