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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-14 赤い魔石の話

 あれから数日後。わたしたちはまた会議室で話し合いをしている。


 わたしたちが遭遇した奔流湖の新種もそうだけど、他からの情報だ。


「それで、魔石の色が黒から青ではなく()()と言うことか?」

「そのようです。騎士団員からの報告によりますと、討伐した魔物から得たとのこと」

「これがその魔石か……」


 円卓の間で中心に置かれた禍々しい赤色をした拳ほどの魔石。

 魔石の質は黒いほど良い。


 赤なんて見たことも、聞いたことすらなかった。

 みんなが息を呑む中、わたし以外には堅物剣聖のルス団長が淡々と語る。


「穢れとは別で、魔物に異変が起きている可能性も否めない」

「私達の遭遇した新種の魔石を回収出来なかったのは痛手ですか」

「いえ、国の宝であるお二人が無事だっただけで些細なことです」


 さすがラウム副団長! 優しさじゃなくて、本心なんだろうけど。この人も国や国王陛下に忠誠を誓っているから。


 私物化のため魔法士団員になったわたしって場違いかも……。


 でも……仕方ないの。不純だろうと関係ない! 王立図書館はそれだけ魅力的で、謂わば――聖地だった。


 生きるための原動力が人と違うだけ!


「それで、新種の魔物を発見した場所へ調査に向かう」

「はい。編成はどのようにしましょうか」

「今回は俺達騎士団が主体だ。だから、ファクティス団長は城に残ってくれ。代わりに数名の魔導士団員を借りたい」

「かしこまりました。それでは、シャルール団長に一任致します」


 このときのわたしは、まさかルス団長が選ぶ魔導士団員について、軽く考えていた――。



 数日後の早朝。討伐隊を組んだルス団長率いる編成部隊が広場へ集まった。


 そう……なぜか、新人含めて60人はいる魔導士団員から選ばれた3人。


「――どうして、新人のわたしが入ってるの⁉」


「そこ、うるさいぞ」

「す、すみません……」


 思わず叫んでしまった……。

 いやいや、だって新人だよ⁉


 しかも、みんなが扱いにくいって敬遠している女のわたし……。まぁ、使える魔法は2つもある天才魔導士だけど!


 ほら、副団長になれる人で最低2つだから。基本は1つしか使えないんだよね。それをみんな極めていくわけ。


「まぁ、魔力量が少ないとそれも出来ないけど……」


 だから、魔導士団員になれた人は一定水準の魔力量を持っているんだ。


「今回は調査が主体だ。万一新種の魔物が現れた際は無論、討伐する。各自、気を引き締めるように」


 みんなが元気に応える中、わたしは下を向いていた。

 考え込むと下を向くのが癖だったりする。


 それがまさか、ルス団長に目をつけられるなんて――。


「――おい。お前、聞いているのか?」

「へっ? うひゃぁ! ルス団長、すみません!」

「ハァ……お前のような者に気を引き締めろと言っているんだ」

「スミマセンでした‼」


 顔面は身長差的に遠いけど!

 イケメンのアップは心臓に悪いから!


 わたしはまた平謝りすることになって、周囲の目が痛い……。


 それからすぐ出発して、わたしは勿論後方だ。

 今回は灰ノ森の反対方向なんだけど、少し遠いみたいで、ルス団長と副団長候補って言われている団員が馬に乗っている。


 この間、大活躍してくれた黒馬くん。今回も何かあったら宜しくね。


 何もないことを祈るけど……。


「おい、ユウェール。お前、ファクティス団長とどんな関係なんだよ」

「へっ?」

「そうそう。お前ら仲が良いって噂になってるぞ」


 そう。これはプラン通り……。なんせ、女子の加入を国王陛下に進言したのはアンクだからね!


 女子を増やすためのアピール大作戦!

 当初の目的が、王立図書館で魔法書を読みたかったからで、それは達成された。


 でもって、計画とはズレたけど……。アンクが団長になったことで、女子を魔導士団に迎えられた。


 だから、このあとの計画は何か言い訳を考えてアンクを退団させて、双子魔法を終わらせること。


「ああ……アンク団長は女性の立場を上げて下さった方ですから、色々気遣ってくれていますね」

「なるほどなー。男女の関係はないわけか」

「それこそ野暮ですよ?」


 令嬢らしくニッコリと微笑むわたしに青白くなっていく魔導士団員。


「わ、悪かった……失礼を働いたことを謝罪させてくれ」

「ええ、分かって下さったのなら謝罪を受け入れます」


 下衆な輩は魔力量で威圧する。これでも令嬢だからね?


 まぁ、わたしが考えているのはアンリであるわたしと仲良くなったことで、氷の人形じゃなくなる!


 そして、女の子に興味を持ってどこぞの令嬢と婚約!

 魔法士団長なんて危険で大変な仕事は辞めて〜。

 分かったよ……私には君だけだ。


 計画!


 我ながら妙案だと思った。


 そのあとは静かなひと時を過ごして、体感で1時間半くらい経った頃。ようやく現場にたどり着いた。


「身体能力や疲労軽減を使っていても……疲れたぁ」


 男子より体力のないわたしはヘロヘロになってしゃがみ込む。そんなわたしの前方に影ができた。

 徐ろに見上げて息を呑む。


「おい、大丈夫か。見たところ、魔物の姿すら見えないから日陰で休んでいろ」


 ルス団長。アンク(わたし)以外に優しくしちゃ駄目ですって!

赤い魔石は本当の意味で心臓を指してみました。魔石は青が王道なので。

(王道言いたいわけじゃないですよ)

ルス団長とアンリはまだまだ距離が遠いと見せかけての最後です。ルス団長は堅物剣聖と言われていますが、基本的に他部署には優しいので。自分の団員に対してはお察しです。

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