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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-13 暗躍する話

 さて、どうやって眠らせるか……。一瞬だけ眠らせて、やることやって地上に出てすぐ起こす?


 どうやって抜け出したか聞かれるな……。


 魔物の仕業にする作戦。

 魔物は穢れによって生まれたから魔石以外残らないんだよね。


 だから、わたしの前世の記憶にあるような魔物の素材? なんかは魔石以外ないんだ。


 昔からこの世界にいる魔法生物なんて魔物は採取可能。

 竜とか……神話に出てきそうな生き物かな。


「どうしましょうか」

「手応えとしては大分厚い気がする」


 よし、考え込んでいる今がチャンス!

 普段は油断も隙もないルス団長だけど、好きな相手で同じ団長だからね……。


「――睡眠魔法(スリープ)

「何か言った――」


 一瞬で紫水晶のような瞳が上を向き卒倒する体を受け止める。


 ルス団長が実力派の魔法剣士でも、わたしの魔法は気づけない。


「……寝顔なんて見たことなかったけど。睫毛、長っ! えっ……なんか胸がドキドキしてきた」


 イケメンの寝顔……即死級更新!


 て、そんなこと言っている場合じゃなかった。

 ルス団長を丁寧に後ろへ寝かせる。


「それじゃあ、一瞬で終わらせるよー! 水の精霊(アクアミロス)!」


 わたしは杖を前方に向けて水球を放った。人が2人通れるくらいの大きいやつ。


 壁を丸く抉った水球は途中で飛散した。


「うーん……トンネル開通出来た?」


 どこまで続いてるか心配だから、風魔法で空気を作ってと。

 それからルス団長の体に重さ軽減の魔法をかける。


 わたしの魔法はただの変身魔法だからね。体力や身体能力は女のわたしだから。


 ただし、双子魔法は違うんだなー。影魔法だけど、わたしの魔力で作られているからね。


「さてと、行きますか〜」


 ルス団長の細腰と肩に手を回す。しっかりと支えて……お姫様抱っこしないのかって?

 杖を持ってるし、何かあっても対処できないからだよ!


 黙々とトンネルを進んでいく。


「そうだ。此処は地底なんだから、上に出ないと」


 大事なことを思い出して安全な場所にルス団長を寝かせてから、上空へ穴を開けた。

 勿論、感知魔法を使って魔力水のない場所を選んだ。


「よし、今度こそトンネル開通〜大成功!」


 途中で水の弾けた音はしなかったからね。

 再びルス団長を抱えた――もとい、みんな大好きお姫様抱っこ!


「ふへっ……不純じゃないよ。空を飛ぶからね? 致し方なくイケメンを抱っこしてるだけ」


 誰に向けたわけでもない言い訳をしてから浮遊魔法で飛び上がった。

 10分足らずで青い空と光が見えてくる。

 感知魔法は使ったけど、開通したあと水が流れてきたらどうしよー! て思ってたけど、なかったからね。


「やっと出られたー!」


 ああ……太陽ありがとう。

 でも、暗いところにいたから目がー!


「うっ……」

「ハッ! 魔法が自然に解除されそう」


 さすがルス団長……。恐るべし、魔力量と素質だよ。


 わたしは名残惜しいイケメンお姫様抱っこから、地面へ横たわらせる。


 ジャジャーン!


 こんなこともあろうかと、隠蔽の魔石です! 手のひらサイズだから、この穴を作ってもおかしくない!


「あ、ルス団長。気づかれましたか?」

「……俺は一体」

「突然魔物が現れまして、催眠効果を持っていたようで……ルス団長は私を庇って」


 うん……苦しいぞ、わたし。

 お願い信じて、純粋で素直なルス団長さま!


「……そうだったのか。記憶はないが、貴方を守れたのなら良かった」

「はい……2度も助けて頂いて、有難うございます」

「いや、その手を見ると魔物は貴方が倒したのだろう。お互い様だ」


 ルス団長……チョロい! 可愛すぎるよ!

 わたし、年下だけど心配になっちゃうレベルだよ!


 その表情も、少しズレた感覚も好きな人にだけ向けてね!


「それで、此処はどこでしょうか」


 起き上がるルス団長を手助けして、辺りを見回す。

 今更だけど、此処はどこ?


「――奔流湖の地底から進んだのなら、王都と逆側の隣町近くだろう」


 奔流湖の隣だから魔力は不安定だな。

 でも、この穴は塞いだ方がいいよね?


 万一、奔流湖が地盤沈下だったり、崩れて洪水なんてなったら笑えない。


「この穴は全て塞ぎます」

「そんなことが出来るのか?」

「ええ、それくらいなら土魔法のスペシャリストなどは容易いです」


 これは本当。わたしは5属性を持ってる器用貧乏じゃなくて、すべてのスペシャリストだからね!


 土魔法で崩れた部分を補って、派生属性の岩魔法で埋めていく。


 よし! 地底の情報は見えているから、開けた穴は塞げた。

 これも地図を作る際に役立つ無属性魔法なんだよね。


「終わりました」

「……さすが、ファクティス団長だ。――俺の胸を熱くするだけはある」

「え――」


 なんか幻聴が聞こえたような……?


 もう、わたしには堅物剣聖じゃなくて。見た目イケメンの精神可愛い(ひと)にしか見えないんだけど⁉


 わたしの胸もドキドキさせてくれるよ……。

エピソードタイトルと同じく不穏女子代表のアンリです。

しかし、眠り姫状態のイケメンは良いと思いませんか? 思った方は同志です。私と握手。

そして、またまた王道展開と見せかけて――しないのかと皆様を残念がらせてからの、王道展開のお姫様抱っこです。

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