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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-11 助けられた話

「――すまない」


 すまないって、何? 聞き覚えのある声だ……。


 ――どれくらい意識を失っていたのかは分からない。


 けど……なんか、唇に柔らかい何かを感じたような――。


「――ゲホッ、ゲホッ……」

「ファクティス団長……! 気がついたようで良かった……」


 言葉を話そうとしたけど、声にならなかった。

 それに……変身魔法は解除されなかったみたいで良かったー。


 て、こんなときまで正体がバレることを心配してる……。


 あっ! 双子魔法は?


「ふう……」


 思わずため息が漏れる。


 それに対して眉間に皺を寄せているルス団長の顔が近い……。


 あと、体が僅かに震えてるような――。


「あっ……申し訳……ございません」

「いや……良い。貴方が無事なら……」


 なんだ? ちょっとピンクな雰囲気を感じるぞ。


 頭がクラクラして漸く現実に気づいたわたしは目を見張る。


 周りは薄暗く、辛うじて近い距離のルス団長が見えたのは緑ゴケのおかげだった。


「え……此処は、どこですか?」

「ああ……此処は、奔流湖の地底と言うべきか」


 ところどころ壁が緑色に光っている。

 緑ゴケは暗闇で光る便利な生物だ。

 

「……まさか、中心部の滝から流されて」

「知っていたのか?」


 あっ……思わず口が滑ってしまった。


 どうしよう……。いや、これは白状するべきか。

 なんせ、身の危険を顧みず助けてくれたんだから……。


 例え、それが恋愛感情からだとしても!


「申し訳ございません。以前、飛行魔法で移動中に奔流湖の上を飛んだことがあるのです」

「なっ……無事で良かった。危険地帯の魔法使用は極力控えるべきだ」

「はい……今回の件でも思い知りました」


 本当は魔法で一撃だったけど……。団体行動の大変さを身に染みて感じたね。


 それにしても……全身びしょびしょだ。

 今の時期は春だから、風邪は引かないだろうけど……。

 脱いで乾かすべき?


 目が慣れてきて分かったルス団長の震えも、寒いからだよね?


「地底とはいえ、奔流湖の真下だからか此処も魔力が乱れているな」

「ええ、そうですね」

「風邪を引くといけない。脱げるものは脱いだ方が良いだろう」


 えーっと、乾かす道具は……。あ、絞るだけ?


 だけど、どうなの……?

 見た目は男のアンクだけど。変身魔法を使っているだけで、中身は女のわたしだよ……?


 いやいや。これでも恥じらいは持ってる乙女だからね⁉


 ひゃっ! ルス団長が脱ぎだしたー‼


「シャルール団長。乾かす道具などはお持ちですか?」

「そう言われるとないな……絞ることしか出来ないか」

「服を乾かすなどの繊細な魔法はコントロールが難しいですが、火なら起こせます」


 わたしは何を言っているんだ?


 うわー‼ ルス団長の上半身! 鍛えられた筋肉……腰は細いと思っていたのに……脱いだら、ヤバい。


 これが……前世の記憶にもある『細マッチョ』――。

 くびれた腰に、しっかりと浮き出た腹筋……6つに割れてる!


 小麦色の健康的な肌感も最高すぎる‼


 そうだ……今はふたりとも男同士だから! 全然恥ずかしくないからね⁉


 でも、待てよ? ルス団長、アンクのことが好きなんだよね……ちょっ、危ない展開(フラグ)では⁉


「……どうした? 脱がないと風邪を――」


 わたしもルス団長の肉体美を語っている場合じゃないよ!


 って思ったら……ルス団長が固まっちゃった。


「あの……シャルール団長?」

「――いや、その……貴方のような方が服を脱いだままの方が風邪を引くかもしれない。俺は出口がないか少し確認してくるから、服を絞ったらまた着直した方が良いだろう」


 怒涛の長台詞と共に颯爽と奥の方へ消えていくルス団長……。


 ちょっと足取りがおぼつかないけど……大丈夫かな。


 それよりも――。


 まさか、わたし……アンクの一糸纏わぬ姿を想像して照れた⁉


 それとも危険な妄想を……。いやいや、あの堅物剣聖だよ?


 ――あり得る。


 男はムッツリだって誰かが言ってたし! 前世の記憶か!


「えーっと……まぁ、ルス団長が外してくれたわけだし? 水絞ってー……ちょっとバレない程度に乾かそう」


 本当は全身乾かせるけど、天才すぎるのも危ないからね。

 例え、ルス団長の想い人とはいえ……あの人も国に忠誠を誓う騎士(ナイト)だし。


 体感10分くらいして戻ってきたルス団長は濡れていたズボンも絞ってきたみたいで、わたしの横へ座る。


 火の魔法は使えても着火剤がないとなー、なんて思っていたけど。


「地面の一部が石炭でした。土魔法で覆ったので、他に火が移ることはありません」

「失念していた。さすがは最年少の魔導士団長だな」


 そんなに褒めてくれるの⁉

 今、自分がどんな顔しているか分かってますか……?


 とても美しい笑顔がわたしを浄化していく――。


 それに、ルス団長の震えも止まったみたい?


 きっと本人は笑っていることにも気づいていないだろう。

 イケメンの笑顔は即死級だね!


「そんなことはございません。こちらこそ失念しておりました。助けて頂いて有難うございます」

「いや……後衛の魔導士団員を守るのも俺達、騎士団の役目だ。それに、貴方は掛け――替えの利かない方だから……」


 いま、かけがえのない人って言いかけませんでしたか?


 広い空間だからか、結構響くんだよねー。だから、小さい声も拾えちゃう。


 天井までは高いし、隣はジャバジャバ湖の魔力水が川のように流れているし。奥はどうだったんだろう?


 川の先は行き止まりで泳がないと無理だ。


「あの、シャルール団長。奥は道がありましたか?」

「あ、ああ。結構続いていたから一度引き返してきたんだ。服を乾かしたら探索しよう」


 なるほど。まぁ、その先に出口がなかった場合。

 最悪はルス団長を気絶させて、壁に穴を開けて脱出しよう。


 使うのは魔法だけど、これって『脳筋』って言うのかな?

ルス団長の「すまない」とは一体なのことなのか…。勘の良い皆さんなら分かりましたか?

そして、まさかのお色気展開――ルス団長、良い肉体美でした。しかし、乙女のような反応をする(してない)ヒーローはいかがでしょうか?

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