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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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1-10 急展開な話

「準備万端です。いつでも行けます」

「そうか」


 いや、分身よ。準備万端じゃないからね?

 オートモード解除!


「――ああ、その前に遅れてきた新人と話があるので少々場所を移します」

「それもそうだな。まだ時間はある」

「は、はい! ファクティス団長、申し訳ございませんでした!」


 よし! なんとか見えない場所に移動して……。


「――双子魔法(ダブル・チェンジ)


 無属性魔法は精霊様の属性とは違う。主に創作魔法だ。


 ふう……これでよし。


「話は済みました。それでは問題の大木から左右に分かれて始めます」


 広い森だけど、町1つ分くらいの大きさだから問題ない。

 わたしは勿論、同じポジションだ。


 本来なら団長同士は部隊が分かれるはずなんだけど……。


 なんでこっちにルス団長が⁉


「シャルール団長は本当に此方で良いのですか?」

「ああ、問題ない。あちらは王都側だが、此方は奔流湖(ほんりゅうこ)側だからな」


 灰ノ森を抜けた先にある湖。なぜか水の流れが速くて、湖の中心には滝みたいな陥没がある。

 それなのに水が消えないことから、曰く付き扱いされてたり。


 まぁ、あれは魔力水の影響だけどね。


「そうでしたか。あそこでは魔力が乱れて空中を飛ぶこともままならないですからね」


 実はあそこの上空を飛んだとき、危なく落下するところだったんだ。わたしほどの魔導士じゃなかったら危うかったね。


 それもあって、中心が滝みたいな場所になってるのもわたししか知らない。


 この世界にはそうした魔力を乱す場所がある。きっと精霊様関連だ。


「数時間で終わると思います」

「ああ、燃やすことに集中してくれ」


 正直言って、空から一気に燃やしたほうが楽なんだけど……。歴史上でも、そこまでの範囲魔法の使い手はいないんだって。


 だからそんなことをしたら有名人になって、氷の人形から人間兵器って言われちゃう。


 そのあと、わたしたちは焚き火をする感覚で木を燃やしていった。


「これで最後でしょうか?」

「そのようだな。あちらはもう終わって待機中だ」


 念話って便利な魔法を使って連絡を取るルス団長の言葉で任務完了に全員が胸を撫で下ろす。


 よし、あとは帰るだけ……。わたしはチラッと待機中の団員たちへ視線を向ける。


「ここまで来ると、奔流湖が一望出来てゾッとするな……」

「ああ……流れが速いから水中の魔物はいないけど」


 騎士団員たちが背後の奔流湖(ほんりゅうこ)を見て口々に呟いていた。


 分かる! この湖に落ちて助かる気がしない。

 だけど、木を燃やしたことで発生する煙も良くないらしくて迂回する必要があった。


 わたしたちは狭い道を1人ずつ歩いて戻る。先頭は当然ルス団長で、最後尾がアンクだ。


 慎重に湖の横を通り抜けているときだった。

 湖の方から急に激しい音がして、一斉に振り向くと首の長い蛇のようは魔物が現れる。


 ――えっ、嘘でしょ……?


 思わず、アンクの口から出そうになった私は言葉を飲み込んだ。


「ひっ……!」

「う、うわぁぁぁ‼」


 あとから代わりに叫び声を上げてくれたのは魔導士団員だった。さすがに、魔物討伐に慣れた騎士団員は驚いているけど叫ばない。


「落ち着いてください。叫び声は魔物を刺激します」


 よし、冷静なわたしグッジョブ。


 硝子のように透明な鱗が太陽の光を浴びてキラキラ輝いていた。


 急いで魔法を試みるわたしは危険地帯と呼ばれる理由を忘れていた。


「……上手く魔法が操れません」


 杖を掲げてみて分かる。魔力の乱れが思った以上に激しい。


 天才のわたしでも――うん、全然にいけるな。


「大丈夫だ。此処は俺がやる。お前たちは魔導士団員の援護をして退避しろ」

「ハッ!」


 ルス団長の指示によって後退しようとしたとき、それは起きた。

 

「え……?」


 1人の魔導士団員が違和感に声を発した瞬間。強い力で体が傾いてそのまま尻もちをついた団員は湖に引きずられていく。


 ――足だ!


「うわぁぁぁ‼」

「やむを得ませんね――交換魔法(スイッチ)


 本当はもっとまともな攻撃魔法をお見舞いしたかったけど……。

 魔力が乱れているのは事実だから、万一団員に当たったら困る。


 魔導士団員と入れ替わったわたしは細い尻尾で足首を掴まれたまま引きずり込まれた。


 引きずり込まれる直後に思い切り息を吸い込んだけど、激流の水中じゃ1分も保たない……。


 ああ、わたしの馬鹿……水の精霊様の魔法を唱えるんだった。


 それに、思った以上の水流で目も開けられない。

 だけど――。


「シャルール団長!」


 実は双子魔法で、分身の様子は窺えたりする。


 あっ、ルス団長が魔物の首を跳ねた。

 だけど、そろそろわたしが限界かも……。


 魔物の首が水面に落ちて鮮血に染まる。呼吸も限界を迎えて身の危険を感じた直後だった。


 ありえない出来事が繰り広げられて、そのまま水中の中で腰を抱かれる。


『――ファクティス団長……!』


 念話で聞き馴染みのある声がして、現実だと分かった。

 だけど、ぐにゃりと視界がブレて暗くなる。


 ああ……駄目だ。

 

 こんなときまで、変身魔法が解除されないといいな……なんて、思ったわたしは意識を手放した――。

自分の分身に対しても突っ込むアンリです。彼女はツッコミタイプですね。

そしてまさかの、ではなく王道展開再び。王道展開っていいですよね?

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