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魔導士団長アンクの秘めごと  作者: くれは


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10/30

1-9 遅刻した話

「……や、やらかしたー!」


 集合時間は早朝……城門前。寝坊したことで、分身が先に行っちゃった!

 いつもならアンクとして参加してるんだけど……。

 だから、オートモードってやつ? これも前世の記憶から拝借……便利だなー。


「……それにしても紅一点なのに。居ないの分からないとかおかしくない⁉」


 クッ……。チビだからか。

 魔導士隊員でも男性しかいないから平均身長は低くて165センチはある。

 対してわたしは155センチ……。いや、女子の中では小さくないはず!


「はぁ……白馬の王子様でも現れないかなぁ」


 さすがに1人では行けない。いや、行けるんだけど……天才でも新米がねぇ。怪しまれたら終わる。


「……王立図書館が思った以上に大きくて、2年でもまだ半分も読めてないなんて」


 魔導士団員は多くないのに、意外と魔法書は量産されていた……。


 いや、嬉しいことなんだけどね?


 どうしようか悩んでいるわたしの後ろから蹄の鳴る音が聞こえてくる。

 思わず振り返って言葉を失った。


「え……ル――シャルール団長⁉」


 白馬の王子様ではなく、黒馬に乗った騎士団長サマ!


「――大事な日に遅刻とは、弛んでいるんじゃないか」


 今日も素敵な低音イケボ……なんて言っていられない!


「も、申し訳ございませんでしたー‼」


 ここは全身全霊をかけた謝罪しかない!

 そう! この国では平謝りだ! 前世の記憶である『土下座』なんてしたら怪しまれること必須……。


 頭を下げてから一向に声の聞こえないルス団長が怖い……。


 こうなったら仕方ない……顔を上げて確認だ!


「なんの真似だ。早くしろ」


 顔を上げた瞬間、目が合った。


「あっ……スミマセンでした」


 顔を上げるのを待っていたらしいルス団長に急かされる。

 でも、早くとは?


「お前は一々言わないと分からないのか。馬に乗れと言っている」


 えっ? 馬に?


 ルス団長の愛馬。黒馬くんが鼻を鳴らす。


 わたし……馬になんて乗ったことないんですけど?


 大混乱のわたしに伸ばされる手が首根っこを掴んでくる。

 いや、猫じゃないんだから……。


「て、ちょぉぉ⁉」


 軽々と持ち上げられて馬に乗せられた……。

 いや、痛くなかったけどね。これでもわたし女子なんですけど⁉


「行くぞ。しっかり掴まっていろ」

「えっ……」


 ドン引きしているわたしなどお構いなしで黒馬くんが動き出した。


 嘘でしょ⁉

 背中にポイってされて、ルス団長の腰――細いな!


 え、でも……鍛えられた筋肉を感じる。服越しだけど……。


「――いやいや……わたしは何を妄想しているの」

「何を言っているのか聞こえないが、舌を噛むなよ」


 急にスピードを上げる黒馬くんの本気でわたしは悲鳴すら上げられず、精一杯の力で細腰へ抱きついた。


 これ、乙女ゲームなら恋愛フラグなんじゃないの⁉

 本気なんだけどー!


 本当に、ルス団長は男のわたしにしか興味ないのか――。


 なんか悔しい……。


「ふへぇ……」


 身体強化したけど、ルス団長に抱きつくのも限界を迎えた頃……。ルス団長も気づいていたようで、パカパカと歩いている。


「強化魔法を使っても体力はないらしいな」


 わたしこれでも女子なんだけど……。分かってるかな、この(ひと)。しかもまだ18だよ……。


 言いたいことは沢山あるけど……。ルス団長は強化魔法を使って1人で戻ってきてくれたみたい。


 そこは素直に有り難い……けど。絶対、アンクだったら態度が豹変してるはず……くっ。


「そろそろ森に着く。準備をしておけ」

「はぁい……」


 ヨボヨボなわたしだけど、感知魔法と強化魔法をかけ直した。


「あっ、複数の気配を感じます!」

「ああ、先に行った団員たちだろう。ファクティス団長たちも居るはずだ……」


 あ、少しだけ頬が緩んだ。

 堅物剣聖って本当かなー? いや、きっとこれが、ギャップ……。


 前世の記憶って、オタク? 用語が多いんだよね。趣味だったのかなー。


 わたしたちはそのまま黒馬くんに乗って、みんなのいる場所を目指して歩いていく。


「あのー……シャルール団長。今回の任務は穢れの大木だけじゃなく、全部燃やすんですよね?」

「――ああ、その通りだ。1つの木が穢れたら、燃やしてもそこから広がっていくからな」


 本当に感染症みたいだな。


 きっとわたしの力でも穢れを祓えるんだろうけど……。

 そもそも固有魔法は誰もが持っているわけじゃないからね。


 それこそ、魔力量の多さなんていう説もあるし。現に、わたしやルス団長は魔力量が多いと思う。魔力量が多いからって魔導士にならないといけないわけじゃないし。適正もあるからね。


 ルス団長は魔法剣士って感じでカッコいい!


「あっ」

「お疲れ様でした。うちの新人が申し訳ございません」

「……いや、気にする必要はない」


 そうだった……。わたし、どうやってアンクと入れ替わろう。

まさかの、冒頭で寝坊・遅刻・置いていかれたアンリです。ちびは関係ないと思います。

そして白馬の王子様ではないですが、王道展開です。美味しい要素も用意しています。

ルス団長は『細腰』でした。

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