15 エピローグ
本日2話目になります。
これで本編完結となります。
※ミリー視点となります。
私が意識を取り戻したのは、戦闘が終わってから一週間後の事でした。
そこは王宮内にある医務室で、今から一週間後には戦後報償の式が行われるとのことです。
傍に居たお医者様に事情を聞き、私が意識を取り戻したと聞いたハリス様が駆けつけた時には思わず抱き合ってしまいました。
そして、私から『聖女の加護』が失われていることを知った。
それから少しして、王妃様からのお呼び出しがありました。
「王妃様、ご無沙汰しておりました」
「良いのよ。私とあなたの仲だもの。それよりも体調はもう良いの?」
「はい、おかげさまで十分に回復しております。しかし、私から『聖女の加護』が失われておりました・・・」
「そう・・・、実はね、この後の式ではアレクサンドリアの『聖女の加護』が失われ、ミリーに『聖女の加護』が現れた、と公表する予定だったのだけど・・・」
「そうでしたか、申し訳ありません。その件につきましては辞退するしかないようですね」
「・・・ちなみに癒やしの力の分け与えだけど、近くに居るほど効果が高い、ということとかあるのかしら?」
「そうですね、分け与えられる量は一定ですが、近くに居て補充を行いながら治療する場合は『聖女』の加護と直接つながっているためか、効果が高くなっているように思われます」
「そう! ならおとなしく『聖女』の認定を受けなさい。最悪、戦後の後遺症で『聖女』としての活動が殆ど出来なくても問題ないように取り計らうわ」
「・・・過分なお計らいをいただき、ありがとうございます」
「いいのよ。本来はあなたが持っているはずだった称号だもの。偶々あなたに返せる機会が出来たから返すだけよ」
「ありがとうございます」
その後は当たり障りの無い会話を6年ぶりに楽しむことが出来、思わず泣いてしまいました。
そして式典が終わった後、私はハリスと共に一度辺境の開拓地へと戻り、それから『聖女』の巡礼という名目で各地を回ることになりました。
しかし、今の私には水魔法による、強いとは言えない癒やしの力しかありません。
どのように工夫しようか、それとも薬草学を本格的に学んで組み合わせようか、そんなことを考えながら馬車乗り場へと向かっているときでした。
私たちの前に、荷物を持った一人の侍女が立ち塞がりました。
私は驚きのあまりどうして彼女がここに?という疑問から、ハリス様は恐らく心当たりが無いため、二人揃って思わず首をかしげてしまいました。
すると彼女は、
「お初にお目に掛かります、シトラと申します。国王陛下からの命により、聖女ミリー様専属侍女としてお世話させて頂くことになりました。お二方、今後ともどうかよろしくお願い申し上げます」
と言いました。
そう言った彼女の姿は、私の影武者になる前の、シトラ本来の姿でした。
開拓地に向かう途中の町での休憩中、私はシトラに尋ねました。
「でもどうして、あなたが私付きの侍女になったの? いえ、あなたが付くのはとても嬉しいのだけれど・・・」
先の発表では、アレクサンドリアは辺境の修道院で穏やかに養生する、という事でした。
それがどうして私付きの侍女になるのか、どうしても疑問が残るのです。
「お嬢様、そもそも修道院に行くのはアレクサンドリア様であり、私ではございません」
「まぁ、そう言われてみればそうだけど・・・」
「それに、私が居なければお嬢様は『聖女』としての活動が出来ませんよ」
「どういうこと?」
「瀕死というかほぼ死んでいる状態でお嬢様の強力な『聖女の加護』を受けたためでしょうか、それほど強くは無いのですが私にも『聖女の加護』が現れたのでございます」
「それは・・・!」
「ええ。ですので、今後は私が『聖女』のサポートをさせて頂くことが可能となりましたので、王妃様より『聖女』付きの侍女を提案され、国王陛下より任命を頂きました」
「そうなの・・・」
気がつくと私はシトラに抱きついていました。
私の目からは涙が溢れて止まりません。
気がつくとシトラも泣き始めていました。
地位も、名誉も、家族も、友人も、名前も、そして加護さえも、全てを失ってでもハリス様と共にあり続ける。
そう決意していても、大切な友人が戻ってきてくれた事実に涙が止まらなくなりました。
それから少しして、落ち着いたシトラは私に話しかけてきました。
「それとお嬢様、私に押しつけた契約をお忘れですか?」
「契約・・・、覚えてるわ。私の身代わりになる代わりに、私の個人資産全てをあなたとあなたの指名した人にあげる、という契約よね」
「そうです。危険手当込みと言うことで現金は全てこのシトラが頂きましたが、ドレスや宝石などは邪魔で仕方が無いので、本当に仕方が無いので、辺境の開拓地に住むミリーという平民にあげることにしましたの。でもわざわざ平民のために辺境まで運ぶのは手間ですので、ドロア公爵邸に放置したままですわ」
「・・・・・・え?」
それを聞いた私は思わずシトラから離れ、呆けた顔をシトラに向けてしまいました。
それってつまり、またお父様お母様に・・・?
「だからお嬢様。ドロア公爵邸にあるお嬢様の品を引き取りに行かないといけませんが、何分量が多くかさばるため、何度か訪れないといけないのですよ。・・・ふふふ、お嬢様のそのように呆けた顔、シトラ初めて見ました」
そう言ってシトラはいたずらが成功したような笑みを涙溜めながら浮かべ、「ですからお嬢様、近いうちにドロア公爵邸に行き、屋敷の主に挨拶しましょうね」と言いながら私を抱きしめ、再び泣き始めてしまいました。
私も少し遅れて、シトラの言うことが理解出来て泣き始めてしまいました。
買い物から戻ってきたハリス様が泣きじゃくる二人を見てオロオロされているようですが、それでも今しばらくはこのままで居させてくださいね、ハリス様。
その後、無事開拓地まで戻った私達はハリス様と私の式を挙げました。
それから時折この開拓地に戻りつつ各地への巡礼を3人で行いました。
途中でハリス様と喧嘩することもありましたし、シトラの恋物語もありましたが、3人での旅は続きました。
願わくば、いつまでもいつまでも一緒に居られますように。
了
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