14 幕間 とある公爵家の執務室
本日2話投稿。
1話目になります。
コンコン
「旦那様、シトラが参りました」
「入れ」
そう答えると、アレクサンドリア付きの侍女、シトラが茶色に赤みを帯びた髪をなびかせながら入ってきた。
「ノワール以外の者は退室しろ」
そして執事長のノワール以外を退出させると、本日王城で行われた遣り取りをシトラに伝え始めた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
「なるほど、私がお嬢様として学園で、そして『聖女』として活動すれば良いのですね」
「その通りだ」
「かしこまりました。お嬢様に少しでも恩を返せる機会を頂き、ありがとうございます」
シトラは無表情だった顔を少し崩した。
それは少しはにかんだ様な笑顔だった。
そんな彼女に私は残酷なことを告げなければいけない。
「・・・そして、ここからが本題だ。ここからのことはアレクサンドリアには伝えていない」
そう告げると、彼女の顔が一瞬で引き締まった。
そして私は続きを告げていく。
「アレクサンドリアの案を実行すると、間違いなく大国ガネーシャが進軍してくる」
「ガネーシャが・・・」
「そうだ。周辺諸国の調査の初動が遅れた場合、大国であるガネーシャが他より一、二歩先に情報を確定させることになる」
「それは、厳しいことになりますね」
「そうだ。だから『聖女の加護』を全力で利用することになった」
「『聖女の加護』を全力で利用、ですか?」
「ああ。大国ガネーシャ相手となると、アレクサンドリアの案を用いても大敗は必至だ。そこで、ハリス殿下の『戦神の加護』を利用する」
「しかしそのことがばれたら周辺国から一斉に攻められて」
「そうならないように、『聖女の加護』の護衛強化について、半分正しく半分間違った噂を流す。『聖女の加護』の配下強化は『聖女』が前線近くで鼓舞するほど聖女率いる集団を強化する、とな」
「それで『戦神の加護』をごまかすと・・・、しかし直ぐにばれるのでは?」
「『聖女の加護』の護衛強化については、国王夫妻、アレクサンドリア、およびこの場に居る3人しか真実を知らない。そして念を入れるためにも、その戦闘後には「『聖女』は加護を使いすぎて『聖女の加護』を失った」と公表することになっている」
「・・・」
「しかし、だ。その前に恐らく、囮となる聖女率いる部隊はガネーシャ王国の魔道大砲部隊により集中攻撃を浴びることになる。そうなればお前は・・・」
「なるほど。かしこまりました。ではその前提で今後活動していきたいと思います」
「いいのか? 間違いなく死ぬぞ?」
「良いも悪いも、この命はアレクサンドリア様の癒やしで救って頂いた命です。それをお返しするだけのことです」
「そうか・・・」
「ただ、これは要望では無く、個人のささやかな願いになるのですが・・・、その場で魔道大砲部隊を急襲するのはハリス殿下率いる部隊だと嬉しいですね」
「・・・陛下にはそのように伝えておこう」
「もったいなきお言葉でございます」
「では、その段取りで動くように。ノワール、彼女が動きやすいように万全のサポートを行え」
「かしこまりました。さしあたり、平民ミリーの身分作りと、巡礼ルートおよび内容の策定から始めたいかと存じます」
「頼む」
執事は一礼をした後、退室していった。
私はシトラに対して最後の命を与えることにした。
「シトラよ、公式な命はこれが最後になる。アレクサンドリアを助けてやってくれ」
「全身全霊にて務めさせて頂きます」
シトラも退室し、一人となった執務室。
叶うまいと思っても望んでしまう。
この非常に仲の良い主従が、再び一緒になれる日が来ることを。
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